現在SBI証券で取り扱いのある海外REIT ETFのなかで、米国以外を投資対象に含めているETFは先日紹介したSRETと今回紹介するIFGLのふたつです。
IFGLは毎年配当金が大きくぶれるのですが、近年で最も配当の少なかった2018年の配当をベースにしても想定利回りは5.0%超です。
今回はREITの国際分散投資を実現してくれるIFGLについて見ていきたいと思います。
IFGLの基本情報
IFGLの運用会社はブラックロックで「FTSE EPRA Nareit Developed ex-U.S. Index」をベンチマークとし、米国を除く先進国の不動産企業及び上場REITに投資するものです。
- 設定日 2007年11月12日
- 純資産額 261百万ドル(約280億円)
- 構成銘柄 213銘柄
- 経費率 0.48%
IFGLに期待される主な役割としてはカナダや欧州及びアジアの先進国の不動産銘柄・REITを幅広くカバーすることによる分散効果となります。
設定が2007年11月なのでリーマンショックを経験しています。
対ドルで為替リスクを負っており、年度ごとの配当金のぶれが大きいですが、過去の平均値から考えると、現在の株価水準なら中長期的に5%超の配当利回りは期待できるのではないでしょうか。
ネガティブな点としては経費率が0.48%と高いことが挙げられます(同種のバンガードのETF「VNQI」の経費率は0.12%)。
IFGLのセクター・国比率と構成銘柄
2020年4月16日時点での構成比率(国別)は以下のとおりです。
1位・日本と2位・香港で40%以上を占めており、オーストラリアとシンガポールを加えるとAPACで過半(約54%)を占めています。
日本で言えば三菱地所や三井不動産のような実業として不動産事業を営むReal Estate Operating CompaniesやDiversified Real Estate Activitiesが40%近くを占めています。
REITでは商業(Retail REIT)の比率が最も高くなっていますが、商業セクターが直面している構造的変化を考慮すると、今後Retail REITの比率は徐々に低下していくものと思われます(新規銘柄の組み入れがなければですが)。
構成銘柄の上位20位は以下のとおりです。
Ticker | Name | Country | Weight (%) |
---|---|---|---|
VNA | Vonovia SE | Germany | 4.71% |
16 | Sun Hung Kai Properties Ltd | Hong Kong | 3.49% |
823 | Link REIT | Hong Kong | 3.27% |
8802 | Mitsubishi Estate Co Ltd | Japan | 3.22% |
1113 | CK Asset Holdings | Hong Kong | 2.90% |
8801 | Mitsui Fudosan Ltd | Japan | 2.82% |
DWNI | Deutsche Wohnen | Germany | 2.41% |
SGRO | Segro REIT Plc | Untied Kingdom | 1.91% |
8830 | Sumitomo Realty & Development Ltd | Japan | 1.71% |
URW | Unibail Rodamco Westfield Stapled Units | France | 1.40% |
LEG | LEG Immobilien AG | Germany | 1.36% |
8951 | Nippon Building Fund REIT Inc | Japan | 1.30% |
8952 | Japan Real Estate Investment Trust | Japan | 1.29% |
SPSN | Swiss Prime Site AG | Switzerland | 1.24% |
SCG | Scentre Group | Australia | 1.21% |
GFC | Gecina REIT SA | France | 1.17% |
17 | New World Development Ltd | Hong Kong | 1.16% |
DXS | Dexus Stapled Units | Australia | 1.12% |
AT1 | Aroundtown Property Holdings SA | Germany | 1.12% |
3462 | Nomura Real Estate Master Fund REIT | Japan | 1.03% |
上位20位のうち、6銘柄(11.38%)を日本企業及びJ-REITが占めています。
構成銘柄①:Vonovia SE (Germany)
Vonoviaはドイツを中心にスウェーデンとオーストリアを含め、415,000戸超の住宅を所有する欧州レジ業界のリーディングカンパニーのひとつで時価総額は3兆円規模です。
毎年着実に増配してきており、2014年から2019年で配当は2.25倍になっています。
賃貸住宅サービスに係る部門をすべて内製化しています。庭師まで抱えててすごいですね。
ターゲットIRRが9-10%なので、コアな既存ポートフォリオに開発やリノベーションを加える形でコアプラスのリターンを目指しているようです。
構成銘柄②:Sun Hung Kai Properties Ltd (Hong Kong)
Sun Hung Kai Properties Ltdは香港を代表する不動産企業のひとつで1972年に上場しています。
香港及び中国本土で住宅、ショッピングモール、オフィス、ホテルと幅広く不動産事業を行っています。
収益の大半を香港で上げていることが分かります。
ランドマーク的な派手な開発案件を香港でも中国本土でも抱えています。
構成銘柄③:Link REIT (Hong Kong)
Link REITは香港証券取引所に最初に上場したREITで時価総額ではアジア最大のREITとなっています。
香港のショッピングモールに集中投資している商業REITと言えます。
正直、地理的にもセクター的にもCOVID-19の影響を完璧に受ける最悪な組み合わせですので、今年の決算には何一つ期待できないと思いますが、保有資産の質がよければ中長期的には持ち直してくるのでしょう。
上記のとおり、2020-21年度は特段大きな返済予定はなく、追加のキャッシュリザーブと与信枠の設定もしているみたいですので、しばらくは持ちこたえてくれそうです。
今後のターゲットポートフォリオとしては、香港70-75%、中国本土20%まで、その他海外10%までを目安としつつ、オフィスを全体の15-20%程度組み入れていく方針のようです。
IFGLの運用実績と株価推移
過去の最低値はリーマンショック時の約15ドルです。
リーマン後はおよそ25~35ドルで推移していましたが、直近は20ドル近くまで下落しています。
直近の株価下落によって、設定来リターンはマイナスになっていますが、過去10年間で見れば35%ほどプラスを維持しています。
直近の四半期配当および2008~2019年までの各年の配当金額は以下のとおりです。
中長期的に過去の平均値の1.73ドル/年程度の配当が期待できると仮定すると、現在の株価水準であれば7.5%超の配当利回りが期待できることになります。
結論:米国REIT ETFの補完としてポートフォリオに加えたい
不動産については、地理的分散が重要になることは間違いありません。
この点、コアとなりうる米国リートを補完する存在として先進国の不動産セクターをカバーするIFGLはいいオプションになると個人的には思っています。
とはいうものの、(COVID-19次第のため予測は困難ですが)少なくとも目先1年の配当には期待できないでしょう。
しかし、しばらく含み損を抱える可能性を考慮しても、長期的に保有していけば一桁台後半の分配金を出し続けてくれるETFに化ける可能性は高いと思っています。
本来はより経費率の低いETFでカバーしたいところですが、先進国の不動産セクターもなかなか面白いですし、ドル以外の通貨に分散投資する観点からも、IFGLについては今後も注視していきたいと思います。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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