本日は私が実践している4つの投資戦略のうちの1つ、高配当株投資のバイブルである「株式投資の未来」から学んだことと、私の高配当株投資に対する考え方について語ってみたいと思います。
高配当株投資のバイブル「株式投資の未来」
世の中には無数の投資戦略がありますが、高配当株投資では、その名のとおり、株価に対して高い配当金を出す、つまり高配当利回りの銘柄に対して投資を行うことで、インデックス投資や成長株投資では得られないようなメリットを享受しつつ、リターンにおいてもこれらの投資手法をアウトパフォームすることを狙っています。
成長株投資について語った記事のなかで、私が「オニールの成長株発掘法」を成長株投資のバイブルとしていることを述べましたが、高配当株投資においてはジェレミー・シーゲル教授著「株式投資の未来」がわたしのバイブルです。
シーゲル教授の著書から学ぶべき点は数多くありますが、個人的に心に残った点を下記に挙げてみたいと思います。
- 長期投資のリターンは、実際の企業の利益成長ではなく、投資家の期待値と実際の企業の利益成長の差によって決まる。
- 高PER銘柄は投資家の高い期待値を表しており、低PER銘柄の方が実際の利益成長が投資家の期待を上回る可能性が高くなる。
- これは個別銘柄だけでなく、産業(ITセクターよりも生活必需品セクター)やマーケット(中国よりもブラジル)に対しても当てはまることが確認されている。
- 技術革新によって得られる果実は、究極的には株主ではなく、消費者に還元される。
- 期待リターンが高くなる最先端企業への投資で安定的なリターンを上げることは難しい。
- 1957年から2003年までの期間、S&P 500に投資し続けた場合のリターンは年率11.19%。
- 同期間でS&P 500の配当利回りが上位20%の銘柄に投資した場合のリターンは年率14.27%。
- 配当再投資こそがリターンの源泉。
- 1871年~2003年でインフレ調整後のリターンの97%は配当再投資によるもので、株価の上昇によるキャピタルゲインはリターンの3%しか貢献していない。
- 配当再投資は、ベア相場ではプロテクターとして機能し、上昇相場ではリターンを加速させる。
- 同様の効果は、他の高利回り資産(REITやジャンク債)でも期待できる。
- 投資期間を長くとればとるほど、株式投資のリスクは低減し、長期的には債券のリスクを大きく下回る。
同書では、配当金に係る税金、売買手数料や信託報酬は考慮されていないため、実際に我々が同じような投資戦略を実行した場合に、同じだけのリターンを得ることはできないはずですが、同条件で比較した場合に高いリターンが得られる戦略や考え方はどのようなものか、ということを理解するうえでは非常に意味があり、また示唆に富んだ名著だと思います。
高配当株投資のメリット
投資手法としての有効性はジェレミー・シーゲル教授の著書を読めば理解できますが、私のようなファイナンシャルフリーの実現を目指す個人投資家にとってのメリットも簡単にまとめてみました。
ファイナンシャルフリーを目指すうえでの高配当株投資のメリット
- 単純なインデックス投資をアウトパフォームし、資産規模を早期に拡大できる可能性がある
- 配当が生む安定的なCFが一定額に達した段階で働かなくても生活できるようになる
- 値動きが安定してる銘柄が多く、下落局面でも比較的底堅い値動きを見せることが多い
それぞれ簡単に解説してみたいと思います。
1.インデックス投資をアウトパフォームする資産規模の拡大
「株式投資の未来」で語られているとおり、過去を振り返ると、S&P 500のなかで高配当利回りの銘柄に絞って投資を行うことで、インデックス全体をアウトパフォームできたことが確認されています。
個人的には今後も同様の傾向がみられることを期待し、投資を行っていくことに一定以上のメリットはあると考えていますが、毎年、S&P 500の配当利回り上位銘柄を確認し、適切な銘柄入替やウェイト変更を行う作業は、多くの投資家にとって骨が折れる作業です。
しかし、金融大国アメリカを侮ってはいけません。米国市場ではすでにこれを勝手に実行してくれる完璧な金融商品が用意されています。それがステートストリートが提供するETF「SPYD」です。
SPYDは、S&P 500の配当利回り上位16%・80銘柄に均等に投資を行ってくれるETFです。経費率も0.07%と低水準で、半年ごとにリバランスし、銘柄の入れ替えも行ってくれます。
つまり、本質的にシーゲル教授が「株式投資の未来」で語っている内容を実行してくれるETFということです。2015年10月21日に立ち上がった歴史の浅いETFですが、すでに運用資産残高も20億ドル(約2,200億円)を超えており、流動性や運用面での心配は特段ありません。
なお、2019年12月8日時点での直近12か月の配当利回りは4.35%で、S&P 500連動ETFの1.88%と比較すると、かなりの高配当であることが分かると思います。外国税額控除で現地源泉徴収税を取り戻せば、税引後で約3.4%の配当利回りが期待できますので、間違いなくファイナンシャルフリーに貢献してくれるETFと言えます。
2.安定したCFによるファイナンシャルフリーの実現
生活をしていくにはキャッシュフローが必要です。
ファイナンシャルフリーとは、保有資産が生み出すキャッシュフローによって、生活していくことが出来る状態を指しますので、もし保有している金融資産が一切キャッシュフローを生まない場合(無配のAmazonやGoogleみたいな)、どれほど資産を持っていてもファイナンシャルフリーにたどり着くことができません。
この点、高配当株は、潤沢なCFを生んでくれるというファイナンシャルフリーと合致する観点において、優れている銘柄のことですので、アーリーリタイヤやファイナンシャルフリーとの相性が抜群です。
上記にて、優れた金融商品としてSPYDを紹介しましたが、個別株レベルで配当から得られるキャッシュフローを最大化するには、NISAなどの税制優遇制度と「ADR銘柄」を組み合わせることで、全く税金を払わずに、100%配当を受け取ることが可能です。
ADRとは、American Depositary Receiptを略したもので、ざっくり言えば米国以外の市場に上場している外国企業の株式(厳密には株式ではないですが)を米国市場で買えるようなものだとご理解ください。
このADRの何が優れているかというと、その企業が上場している国によって、日米間とは異なる源泉徴収税率が適用されるということです。日本から米国市場に投資する場合であれば、配当に対しては10%が現地(米国)で源泉徴収されてしまいますが、特定の国については源泉徴収税率が0%になります。
したがって、これらの国に上場している企業のADRに投資を行う際に、NISA等の制度を活用し、日本国内での課税もゼロにすることができれば、配当に対する課税を完全にゼロにすることが可能です。
このようにADRは、非常に魅力的な側面もある一方、留意点等もあることから、また別の機会に記事にまとめてみたいと思います。
3.下落相場における底堅い値動きが期待できる
この点については過去のデータからすでに確認されています。
特に長期連続増配銘柄については、今後も現状以上の配当を継続的に出していくことが期待できるため、増配を考慮すると購入時点での配当利回り以上を半永続的に得られることが期待できます。
このことから安定配当銘柄については、暴落局面で株価が下落した際に配当利回りが指標となり、価格下落に歯止めがかかる傾向にあります。
この傾向については、S&P 500と米国増配株式ETF「VIG」を比較するとよくわかります。
VIGの組み入れ銘柄は、超優良連続増配銘柄(Microsoft、P&G、Walmartなど)に限定されるため、S&P 500構成銘柄と重複していますので、株価自体の動きが近くしくなっていますが、S&P 500が最大約60%下落したのに対し、VIGは44.4%の下落で済んでおり、かつ暴落後の回復もS&P 500よりも早いことが分かります。
このように高配当株投資には、資産拡大を加速させるという攻めの側面だけでなく、暴落局面におけるダメージを和らげるという守りの側面があることも分かります。
今回紹介したVIGは、単純なS&P 500連動のETFを積み立てるよりも、ポートフォリオ全体のリスクを低減させる効果が期待できる優良なETFのひとつですので、またの機会にまとめ記事をアップしたいと思います。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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