米国預託証券(ADR)とは?ADR投資のメリットと注意点

初心者向け

本日は米国株と比較し、うまく活用すれば税制面でメリットがある米国預託証券「ADR」について、その魅力とADR投資を行う際の注意点を語ってみたいと思います。

米国預託証券(ADR)とは?

ADRとは、American Depositary Receiptの略称で、日本語では米国預託証券と呼ばれています。

細かい仕組みを理解するのは初心者にはやや難解で分かりづらいのですが、実際に投資を行うには細かな仕組みまで理解する必要はありません。

SBI証券のホームページにて、細かい点を大胆に無視した分かりやすく大雑把な説明を見つけることができましたので、以下に引用させていただきます。

米国以外の企業の株式を、米国株と同じように、ドル建てで米国市場で売買できる、株式と同じ性質を持つものです。株主権利も発生し、配当金等の株主還元も享受できます。(SBI証券HPより引用)

要はADRという仕組みによって、アメリカ以外の国の企業の株を買える、ということです。

つまり、例えばイギリスやオーストラリアなどに上場している魅力的な企業があった場合、通常はこれらの企業の株式を購入することは難しいですが、SBI証券や楽天証券など、米国株を取り扱っている証券会社の口座をもっていれば、ADRを活用することで、米国株への投資と同じ要領でこれらの企業に投資できるということです。

ADR投資の魅力(分散効果、タックスメリット)

さて、分かったような分からないようなADR投資ですが、私はADR投資には主に2つのメリットがあると考えています。

メリット1:米国以外の企業をポートフォリオに加えることによる分散効果

レイダリオ氏の信奉者である私は国際分散投資の有効性を強く信じており、自身のポートフォリオには主要国である米国や中国以外の銘柄も幅広く取り入れていきたいと考えています。

実際にはすでにETFを活用し、グローバルに分散した形でのポートフォリオのベースを作れていますが、 同時に高配当株投資や成長株投資も実践していますので、これらの戦略に合致する魅力的な銘柄があれば、個別株への投資も積極的に行っていきたいと考えています。

例えば私が活用しているSBI証券では、外国株として米国、中国、韓国、ロシアのほか、東南アジアの国々の株式を購入することが可能ですが、ADRを活用することで、これらの国々に加え、イギリス、オーストラリア、インド、南アフリカ、ブラジルなどの企業に直接投資することができます(あくまでSBI証券で取り扱いのあるADRに限られます)。

したがって、ADRによって、個別株投資によるハンドメイドのポートフォリオを構築する際の幅が大きく広がる点は、大きなメリットと考えています。

メリット2:国によっては配当に対する現地源泉徴収税率が0%

こちらのメリットの方が多くの方に認識されているかと思います。

米国株の場合、受取時に現地で配当金の10%が源泉徴収されます。その後、残った90%に対しても日本で20.315%が課税されるため、実際に受け取る配当金は額面の約71.7%(90%×79.685%)になります(※確定申告の外国税額控除は考慮していません)。

なお、仮にNISA口座を活用した場合でも、米国で源泉徴収された10%分を取り戻すことはできませんので、米国株投資は日本株への投資に比べて税金面で不利になっています。

しかしながら、ADR投資では、対象国によっては現地源泉徴収課税をゼロにすることが可能です。

具体的には下記の国々の上場企業のADRは、現地源泉徴収税率がゼロです。

  • イギリス…0%
  • オーストラリア…0%
  • インド…0%
  • ブラジル…0%
  • 香港…0%

国名だけ見てもあまりピンと来ないかもしれませんが、これらの国々にも世界を代表するグローバル企業が多数上場していますし、かつ日本株以上の税金を払わずに配当を受け取ることができますので、特に高配当株についてはADRを活用するメリットは大いにあると考えています。

ADR投資の注意点(為替リスク、手数料、上場廃止)

大きなメリットもあるADR投資ですが、注意点もいくつかありますので、簡単にまとめてみたいと思います。

1.為替リスク(米ドル⇔ポンド、豪ドルなど)

どの企業も米国以外で上場していますので、基本的にはポンドや豪ドルなど、米ドル以外の通貨で決算を行い、配当もこれらの通貨で決められています。

一方、ADR投資については、株価も配当も米ドル建てで決まっていますので、現地通貨ベースでは増配だったとしても、為替変動によって、米ドル建てでは減配になる可能性があることは投資を行う前に理解しておく必要があります。

ただ、個人的には、米国株投資を行う時点で、日本円以外の通貨に対する為替リスクを取っていますので、見かけ上、米ドルでの配当がブレやすくなるものの、あまり気にするほどのことでもないと思っていますし、逆に複数通貨に投資を行うことによる分散効果もあると思っています。

2.手数料(保管費用)がかかる

源泉徴収税がゼロだったとしても、ADRの場合、仕組上、税金とは別に手数料がチャージされる場合があります。

これが曲者で、仮に年1%の手数料がチャージされる場合、ネットの配当利回りがそのまま1%下がってしまいますので、銘柄によっては10%の源泉徴収税を払ってでも、手数料がかからない米国株の方が手取りベースのパフォーマンスがよくなる場合があります。

実際にチャージされる手数料については、個別銘柄ごとに異なってきますので、投資する前に過去の手数料率をよく確認したうえで投資を実行しないと想定していたのと違う結果になってしまう可能性がある点は要注意です。

3.上場廃止リスクがある

ADRについては、本国で上場を継続していても、米国市場でのADRの上場を取りやめる(上場廃止)場合があります。

ここが非常に恐ろしいところで、もし保有しているADRが上場廃止になることに気づかず、そのまま売却せずにもっていた場合、最悪現金化することが出来なくなってしまう可能性があります。

保有銘柄の動向をきちんと定期的にチェックしていれば、こういった事態に陥る可能性は極めて低いとは思いますが、理論上はこのようなリスクもあるということは理解しておいた方がいいと思います。

代表的なADR銘柄(タバコ、エネルギー、銀行など)

では実際にADRを活用し、投資できる銘柄にはどのようなものがあるのか、下記に代表的な銘柄をまとめてみました。

銘柄
ブリティッシュ・アメリカン・タバコイギリス
ユニリーバイギリス
HSBCイギリス
リオティントイギリス
BPイギリス
ノバルティスイギリス
インターコンチネンタルホテルズイギリス
ロイヤルダッチシェルB株 イギリス
HDFC銀行インド
インフォシスインド
ウェストパック銀行オーストラリア
BHPビリトンオーストラリア
ヴァーレブラジル

どうでしょうか。イギリス企業を中心に、かなりグローバルに競争力のある企業が名を連ねています。

個人的には税制面のメリットも踏まえると、リストアップした銘柄はすべて投資を検討するに値すると思っています。詳細な個別銘柄の分析についても追って記事をアップしていきたいと思います。

最後になりましたが、ADR手数料の調べ方等については、ronaldreadさんのブログが非常に参考になりますので、下記にリンクを貼らせていただきます。

この記事のほかにも、ronaldreadさんは独特の投資指標や投資戦略を実行されているので、非常に勉強になる点が多く、私もよく読ませていただいています。

<ADR手数料> https://ronaldread.blogspot.com/2017/03/adr_26.html

本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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