コロナショック以前の私は債券をポートフォリオのベースとする戦略を取っており、米国長期社債ETF「VCLT」がポートフォリオにおける最大の保有銘柄でした。
VCLTは世界最大級の資産運用会社バンガード社が運用するETFで、投資対象は米国企業の長期社債です。
つまり、VCLTを購入すること=多くの米国企業の長期社債に分散投資すること、ということです。
本日はVCLTの過去のパフォーマンスや、ポートフォリオの概要について、語ってみたいと思います。
これまでは米国長期社債だけでも十分なリターンが得られた
結論からいえば、過去の米国長期社債のパフォーマンスは、それだけを保有していたとしても、十分なリターンが得られる魅力的な水準です。
ここからは、実際の過去の長期社債のパフォーマンスについて、以下の3つの点から確認していきたいと思います。
- アセットクラスとしての米国長期社債のパフォーマンス
- VCLTの設定来パフォーマンス(2009年11月~)
- VCLTの分配金推移
過去のパフォーマンスはローリスク・ミドルリターン
過去に当ブログでも紹介したPortfolio Visualizerというサイトを活用し、下記3つの資産クラスのパフォーマンスを比較してみました。
- 米国長期社債(Long-Term Corporate Bonds)
- 米国10年国債(10-year Treasury)
- 米国長期国債(Long Term Treasury)

比較対象期間は1978年1月から2021年12月までの44年分のデータが取れました。
この間に株式市場の暴落も何度もありましたし、金利についても上昇局面も下降局面もあったことから、長期的な資産クラスとしてのパフォーマンスを見るには十分な期間かと思います。

期間が長期に及ぶため、上記のチャート上は10年国債がかなり差をつけられているように見えますが、成長率を見るためログを取ってみる(下図)と、見かけほどは劣後していませんし、長期社債と長期国債はほぼ差がないことが分かります。

この期間の長期社債と長期国債のリターンはほぼ同じものの、リスクは長期社債の方が低いことが分かります。

3つのアセットの主な数字を下記表にまとめました。
長期社債 | 長期国債 | 10年国債 | |
年平均成長率 | 8.44% | 8.33% | 7.18% |
標準偏差(リスク) | 8.44% | 11.12% | 8.28% |
最高年間リターン | 28.68% | 47.10% | 39.57% |
最低年間リターン | ▲6.23% | ▲13.03% | ▲10.17% |
最大下落幅 | ▲16.82% | ▲23.12% | ▲15.76% |
シャープレシオ | 0.49 | 0.39 | 0.36 |
リスクマネジメントの観点から重要な指標(標準偏差・最低リターン・最大下落幅)は、いずれも長期社債が長期国債に勝っており、シャープレシオでも大きく上回っています。
10年国債との比較においても最低リターンでは勝っていますし、標準偏差と最大下落幅もほぼ同水準と言える数字になっています。
したがって、過去44年間、長期社債に投資を続けた場合、10年国債並みのリスクで長期国債を上回るリターンが得られたと言えます。
まさにローリスク・ミドルリターンといえるパフォーマンスですね。
個人的には過去44年間において、最もパフォーマンスが悪かった年がたったの▲6.23%というのが衝撃的でした。
この数字は長期国債(▲13.03%)の半分以下です。
株式なら▲6%なんて誤差みたいなものですから、個人的にはこの程度の下落なら全くストレスになりませんし、いかに社債のパフォーマンスが安定していたかがお分かりいただけると思います。
最後に各年のリターンと、各期間ごとのリターン・標準偏差の表です。


長期社債(青線)については、全体的に爆発的なリターンを生む年はありませんが、その分、大きくマイナスになった年もないことが分かります。
なお、リーマンショックがあった2008年は企業の存続リスクが意識される年となりましたが、長期社債は2.29%とプラスのリターンを記録しています。
また、直近の3年・5年・10年をそれぞれ見ても長期社債のリターンが長期国債を上回りつつ、標準偏差も長期国債より低かったことが分かります。
VCLTのポートフォリオの概要(2021年12月31日時点)
この魅力的なアセットクラスへの分散投資を可能にしてくれたのが、我らがバンガード社のETF『VCLT』です。
VCLTは2009年11月から取引が開始されています。
すでに12年間以上の実績がありますので、長期社債に期待されるようなパフォーマンスをVCLTが実際に出しているのか、のちほど確認したいと思いますが、まずはその前にVCLTのポートフォリオの概要から見ていきましょう。


安定的な高利回りを達成すべく、全体の残存期間を10~25年の間で維持する形で、投資適格社債に投資していく商品です。
直近12か月の分配金利回りは3.06%、構成銘柄が2,571、平均デュレーションが14.9年、すべての組入社債が投資適格(格付BBB)以上となっています。
経費率は2年前でも0.07%とかなり安かったのですが、そこから更にどんどん下がり、現在は0.04%と非の打ち所がない水準になっています。
運用残高は60億ドル(約6,500億円)ほどで、この2年で20%ほど増加しています。

社債の発行体は70%近くがIndustrial(事業会社)で、金融機関(17.1%)と公益企業(11.8%)が続いています。
組入社債の残存期間では、全体の87.1%が15年満期かそれ以上の長期社債となっています。
ポートフォリオ全体のデュレーションが15年ほどあるため、金利変動による値動きはかなり大きくなりますので、金利上昇局面では注意が必要になるかと思います。
VCLTの設定来リターンと分配金推移(2009年11月~)
続いてVCLTの実際の過去のパフォーマンスと分配金の推移について、見ていきましょう。

短中期の社債や国債も含む、総合型債券インデックスのBloomberg US Aggregate Bond Index(黄線)との比較では、VCLTが大きくアウトパフォームし、この10年で2倍近くに成長していることが分かります。
詳細なパフォーマンスについても、下記を見てみましょう(2021年12月末時点)。

設定来(2009年11月19日)のリターンは税引前で7.51%と非常に高い水準になっています。
分配金の再投資効果を税引後で計算した場合でも5.65%と悪くないレベルかと思います。
最後にこれまでの分配金の推移を確認してみましょう。

この1年ほどを見ると毎月1口当たり、0.27ドル程度の分配金を出しています。
過去5年、分配金は減少傾向にありますが、これは現状の低金利下で新規に発行される長期社債の利回りが低下してきていることから、やむを得ない傾向かと思います。
まとめ:VCLTは低リスクで安定したリターンが得られる可能性
最後に本日のまとめです。
過去を振り返ると、VCLTへの投資には下記のメリットがあったことが分かります。
- 低いボラティリティと安定したリターン
- 毎月の分配金による高い複利効果
長期社債の過去40年間のパフォーマンスは非常に安定しており、ダウンサイドにも強いことが確認できました。
VCLTは購入した翌月からすぐ分配金を受け取ることができるため、その資金を再投資に回すことで、四半期や半年ごとに配当を出すETFに比べ、高い複利効果を実現することができます。
また、買えば買うほど、もらえる分配金が翌月にすぐ増えるので、個人的には投資のモチベーションも保ちやすいのではないかと思います。
ポートフォリオに債券を組み入れることについては、賛否両論ありますが、個人的にはこれまで見てきたように、長期社債(や長期国債などの債券)をポートフォリオに組み込むメリットは大きいのではないかと考えています。
ただ、過去40年間、金利は低下傾向にありましたので、コロナショックで底をつけた金利が今後、昨今の高インフレとの兼ね合いのなかでどうなっていくかは注視していきたいと思っています。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
コメント
配当金目的で長期保有する前提で運用をするときには、元本が大きい場合(1億以上)米国長期社債VCLTだけでもそれなりの分配金を毎月得られると思いますがどうですか?
それとも複数の資産クラスに分散するべきですか?
運用目的・期間・リスク許容度など、状況がよく分からないので何とも言えませんが、その金額を金融資産で運用するのであれば、私なら複数の資産クラスに分散したポートフォリオを構築します。
分配金だけを考えると、VCLTの利回りは現状だと3%強だと思いますが、私のポートフォリオも同じくらいの利回りです。
この場合、単一商品への集中投資から得られる3%の利回りよりも、広く分散したポートフォリオから得られる3%の利回りの方が遥かに価値があると思います。
また、債券投資の場合、基本的には元本の成長を半分くらい放棄することになるので、その機会損失も考慮すると私なら株式を多少なり保有したいです。
例えば、米国株ETFのVYMなら、かなり分散されているうえにVCLTと同じくらいの分配金が出て、かつ元本成長も期待できるので、私としてはVCLTよりもVYMの方が魅力的に感じます。