【高配当ADR】BHPは高配当が魅力の世界最大の資源メジャー【2021年度決算】

オール・シーズンズ戦略

私はレイ・ダリオ氏の推奨する「オール・シーズンズ戦略」を実行するにあたり、コモディティ部分を資源銘柄で代替しています。

本日は、三大資源メジャーのなかでも群を抜く時価総額を誇るBHP(Ticker: BHP)について、分析・考察した結果を記事にまとめてみました。

BHPはオーストラリア・メルボルンに本社を置く世界最大の資源メジャー

BHPは、主に鉱物の生産において、ブラジルのヴァーレ(Ticker: VALE)、英豪のリオティント(Ticker: RIO)とともに、世界で圧倒的な地位を築いている三大資源メジャーの1社であり、この3社のなかでも断トツの時価総額を誇ります。

下表が2022年2月11日時点でNYSEに上場している三大資源メジャーの各ADRの情報です。

出典:Yahoo Finance

時価総額は25兆円規模で、2位のリオティントの約2倍、3位のヴァーレの約3倍と、企業価値には圧倒的な差があります。

それもそのはずで2000年代後半までにBHPは何度かリオティントの買収を試みています。

結局は2007年にリオティントがカナダのアルミ大手アルキャンを約4兆円で買収したことをきっかけに、現在の三強体制へ業界が再編されていきましたが、歴史的には両社にそれほどの差がありました。

また、鉱物に限らず、石油や天然ガスまで生産しているプロダクトの幅にも、競合他社とは差があります。

競合のリオティントは選択と集中の結果として、石炭事業を完全に売却して事業ポートフォリオから外していますが、BHPにおいては石炭事業は会社の4本柱のひとつとして健在です。

BHPは世界をリードするグローバル資源会社です。弊社は、鉄鉱石、原料炭、銅を含む成長著しい主要コモディティーの、信頼のできる、競争力のあるグローバルサプライヤーであり続けるという信念を持っています。また、石油、ガス、エネルギー用石炭の事業についても大きな権益を有しています。

我々は二元上場会社であり、2つの親会社(BHP Billiton Limited 、BHP Billiton Plc)が単一の事業体として運営されており、BHPと総称しています。統合された1つの取締役会、経営陣により経営されています。

BHPの目標は、天然資源の発見、取得、開発、マーケティングを通じて長期的な株主利益を生み出すことです。また、弊社の戦略は、商品、地理、市場が多様化した、規模が大きく、寿命が長く、低コストで拡張可能な川上のアセットを所有、運営することです。

本社はオーストラリア・メルボルンにあります。主にオーストラリア、南北アメリカ大陸にある生産拠点で鉱物、石油、ガスを採掘・処理しています。我々の製品は、シンガポール及び米国ヒューストンにあるマーケティングの拠点を通じて世界に販売されています。2017年6月30日時点で、BHPは世界に6万人(社)を超える従業員及びコントラクターを有しています。

BHP Billiton HPより引用

リオティント同様、こちらも二元上場会社ですね。リオティントとは本社の所在が逆です(リオティントはロンドンが本拠)が、運営体制としては実質的に同じ構造の会社と言えるでしょう。

BHPは、最近までBHPビリトンという名前だったのですが、その名のとおり、BHPとビリトンという二つの会社が合併して出来た会社です。

BHPもビリトンもその歴史は非常に古いです。

BHPは元の名をBroken Hill Proprietaryといいます。同社は1885年に設立され、その名のとおりに豪州のBroken Hillという場所で、銀・鉛・亜鉛の生産を行っていました。

その後、事業を鉄鉱石、銅、石油、天然ガス、ダイヤモンドなど、他の天然資源にも拡大していきます。

そんなBHPが大きく飛躍するきっかけとなったのは、1984年のアメリカ・GE(General Electric)からのUtah Internationalの買収です。

この買収により、BHPは豪州に加え、米国、ブラジル、カナダ、チリの事業基盤を手に入れることとなり、グローバル資源会社として飛躍していきます。

今日においても南北アメリカ大陸は、オーストラリアと並んで、BHPビリトンの事業の柱です。

一方のビリトン(Billiton)ですが、こちらの歴史はより起伏に富んでいます。

起源はBHPよりも古く、1851年にインドネシアのビリトン島で錫(すず)の生産を行っていた会社が基になっています。

当時、インドネシアはオランダ領東インドだった時代で、オランダ人がこの島が非常に錫に恵まれていることを発見し、生産を開始し、ビリトンを世界最大の錫の生産量を誇るまでに成長させました。

そんなビリトンに大きな転機が訪れたのは、1970年でした。

この年、あのロイヤルダッチシェルがビリトンを買収し、以後、約24年間に渡り、ビリトンはロイヤルダッチシェルグループの一員として、活動の幅を世界中に広げていくことになります。

1994年、ビリトンの大部分は南アフリカのGencorに買収されますが、Gencorが1997年にビリトンを手放したことに伴い、ロンドン証券取引所に上場を果たします。

その後、2001年にBHPとビリトンの合併が合意に至り、現在のBHPの基が出来上がったという流れです。

BHPの業績推移(売上・利益)

それではBHPの業界での立ち位置や歴史が分かったところで、次は財務情報を見ていきましょう。

まずは業績推移です。ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成しています。

赤字に転落した2015年を除いて、過去10年間以上に渡り、営業利益率は常に30%以上を維持している恐るべき高利益体質です。

直近の2021年6月期(豪州は会計年度が6月末締め)は営業利益率が48.4%と、過去10年間の平均値32.1%から一段と高い水準に上がってきました。

なお、2014年から2015年にかけて著しく売上が減少した理由は、市況の低迷もありますが、South32という別会社を立ち上げ、そちらに非中核事業を移したことによります。

出典:Demerger to Simplify BHP Billiton and Unlock Shareholder Value

上記のとおり、コアアセット19件に加え、ニッケル、石炭、そして石油関連の資産をいくつか加えたポートフォリオをBHPビリトンに残し、それ以外をSouth32として会社分割しています。

これによって、BHP側のオペレーション効率や収益性が高まり、ひいては企業価値も向上する、との説明が当時の株主に対してなされています。

さらに2018年には米国のシェールガス事業を英BPなどに約1.2兆円で売却しており、近年、事業の選択と集中をどんどん進めてきています。

なお、この売却によって得た104億ドル(約1.1兆円)のキャッシュは、同年中に自社株買いと特別配当によって、株主に即座に還元しており、このあたりの経営方針はリオティント同様、非常に好感が持てます。

上記の円グラフは、2021年度のEBITDAの内訳です。

鉄鉱石が最大の収益源である構造はリオティントと同じです。

2019年は鉄鉱石の占める割合が50%以下が、資源価格の高騰に伴い、2020年は64%、2021年は70%と徐々に鉄鉱石の占める割合が高くなってきています。

上表のとおり、2021年度は下半期(2021年1~6月)に大きく利益を積み上げたことが分かります。

下半期の利益額は上半期のほぼ倍で、6ヶ月間で過去の年度決算を上回る利益を叩き出しました。

元々資源メジャーらしく利益率が高いビジネスなのですが、2021年度は全社レベルのEBITDA Marginが64%(前年比+11%)と更なる改善を見せています。

2021年の各セグメント+全社レベルのEBITDA Marginは以下のとおりでした。

利幅が最も低い石炭は14%(前年比▲22%)と前年より悪化していますが、収益源の鉄鉱石は77%(前年比+7%)、銅と石油がそれぞれ62%(前年比+17%)と58%(前年比+3%)と、極めて高い利益率を誇ることが分かります。

もちろん資源価格の変動による業績への影響は甚大ですが、これだけの利幅が確保できているのは安心感があります。

各資源価格の変動がEBITDAに与える影響については、上表のとおりです。

業績に占める割合が最も大きい鉄鉱石を見てみると、鉄鉱石1トン当たりの価格が1ドル上下すると、234百万ドル(約240億円)ほどEBITDAが変動します。

あとは1豪ドルに対して米ドルが1セント変動すると、146百万ドル(約150億円)ほどEBITDAが変動するようです。

このあたりのSensitivityは以前からあまり変わっていません。

上記の地図は現状のBHPグループの事業展開の状況です。

オレンジの点がアセットの位置、青色の点が事業所の所在地です。オーストラリアとアメリカ大陸に集中していることがよく分かりますね。

ちなみに日本にも事業所があり、三菱商事・伊藤忠商事・三井物産が主要JVパートナーとしてホームページで紹介されています。

最後は開発中のプロジェクトです。資源タイプは銅・石油・ニッケルに絞られていますね。

こちらもオーストラリアと南北アメリカに絞って活動していることが分かります。

BHPのEPS(1株当たり利益)と配当の推移

 次にBHPのEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。

2015~2017年にかけて減配していますが、2018年以降は上述のシェールガス事業売却に伴う特別配当を出すなど積極的な株主還元を進めています。

上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向の推移です。

2021年は過去最高の配当を出しており、ホルダーの私にとってもとても良い年となりました。

年度ごとのばらつきがかなり大きいですが、過去5年の平均配当利回りが4.88%、自社株買いを合わせた総還元利回りが5.28%となっていますので、中長期的にも高配当は期待できる銘柄だと思います。

業績は資源価格次第ですし、2021年の配当が今後も安定的に維持できるとは思っていませんが、株主還元の意識は間違いなく高い企業ですので、個人的には非常に好感を持っている銘柄です。

実生活を考えると望ましくない面はありますが、今後もコモディティ価格が高止まりし、高配当を継続してくれることを期待しています。

BHPのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)

 次はBHPのキャッシュフローです。

業種的に変動幅は大きいですが、金額がとても大きいですね。

時期にもよりますが、競合のリオティントの1.5~2.0倍程度の水準で推移しており、市況がよかった2011年度に驚異の300億ドル(約3.3兆円)超えの営業CFを記録しています。

2021年度もそこまでではないですが、272億ドル(約3兆円)の営業CFと、200億ドル(約2.2兆円)を超えるフリーCFを記録しており、心強い限りです。

BHPの株価チャート

1994年10月31日~2022年2月11日のBHPの株価チャートです。

特徴的なのは、2016年1月にリーマンショックよりも低い底値をつけていることです。

過去最高値は2011年4月の98ドルでまだ100ドルを突破したことはありません。

昨年は3月のコロナショック後に急回復を見せ、80ドル台をつけましたが、まだ上場来高値を更新するような動きは見せてきていません。

近い将来上場来高値を更新してくるのか、ホルダーとして今後も興味深く見守っていきたいと思います。

結論:BHPは高水準の株主還元が期待できる最強の資源メジャー

同業のリオティントと比較しつつ、BHPを分析してみましたが、正にキングオブ資源メジャーといった感じの最強銘柄ですね。

  • 他社の追随を許さない圧倒的な事業規模と収益性
  • 一定水準以上の株主還元が期待できる確かなトラックレコード
  • 資産を売却して得たキャッシュはすぐに株主に返す模範的な経営陣の姿勢
  • 鉄鉱石価格に代表されるコモディティ市場との高い相関性(分散効果)

不定期にAnnual Reportやその他の投資家向け資料に目を通しているのですが、BHPは安心して長期保有できる優良会社だと私は思っています。

確かに業績は資源価格次第なので波はありますが、生産物がどう考えても人類の生活上、必要なものなので、私が生きているうちに需要そのものがなくなることはないでしょうし、事業の性質上、新興企業によって駆逐されることを心配する必要もありません。

また、ESG投資の観点から機関投資家からの資金流入が抑えられる業種であることから、バリュエーションが割安に維持される要素もありますし、10年レベルの長期で保有して、資源価格の調子がいい時期にExitすれば、大きなリターンが期待できる銘柄だと思っています。

個人的にもすでにかなりの配当を受け取りつつ、含み益も出ているので、トレーディングという観点からはExitしてもいいのですが、保有目的がオールシーズンズ戦略のコモディティ部分としての保有のため、今後も根本的な投資戦略を変更しない限りは保有を継続したいと思っています。

以上、高配当ADR銘柄・資源メジャーのBHPについての考察でした。

本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

コメント

  1. Mune より:

    事情によりTwitterをやめてしまいましたが、にこまるさんのブログはいつも読んでいます。
    オールシーズン&オールウェザーのポートフォリオ育成に向けて大変勉強になります。
    いつもありがとうございます。

    • にこまる より:

      ありがとうございます。何かしら参考になれば幸いです。
      今後とも宜しくお願い致します。

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