私はレイ・ダリオ氏の推奨する「オール・シーズンズ戦略」を実行するにあたり、コモディティのエクスポージャーを同分野の企業の株式で代替することとしています。
コモディティと言えば、石油やガス、鉄鉱石や銅といった天然資源が思い浮かびますが、農作物である大豆やトウモロコシ、小麦などもコモディティの代表的なものです。
本日は、この穀物分野をカバーし得る銘柄として、穀物メジャーの一角を占めるアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Ticker: ADM)についてまとめてみました。
穀物メジャーとは
穀物メジャー(こくもつメジャー)は、ダイズやトウモロコシ、コムギをはじめとする穀物の国際的な流通に大きな影響を持つ商社群。1990年代には、五大穀物メジャーにより世界の穀物流通の70%が扱われた。
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一般的には下記の4社の頭文字をとり「ABCD」と称されるようです。
- A:アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archer Daniels Midland)
- B:バンジ(Bunge Inc.)
- C:カーギル (Cargill Inc.)
- D:ルイ・ドレフュス(Louis Dreyfus Corporation)
上記4社のうち、カーギルとルイ・ドレフュスは上場していないため、我々個人投資家が投資可能な銘柄はアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドとバンジとなります。
※バンジについても別記事にまとめておりますが、私はADMの方を好んでおり、バンジには投資していません。
ADMの起源は1902年にアメリカで設立された圧搾会社
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archer-Daniels-Midland)は、1902年に米国・ミネアポリスでアーチャーさんとダニエルズさんが設立した圧搾会社が基になっています。
1923年にMidland Linseed Products Companyを買収し、現在の社名であるArcher Daniels Midland Companyに社名変更したのち、翌年の1924年にNYSEに上場を果たしています。
現在では世界で38,100名の従業員を抱え、全世界でビジネスを展開しています。
長期の連続増配銘柄ですが、同社としてはむしろ88年以上に渡って途切れることなく配当を出し続けていることの方を誇りにしているようです。
88年前というと1932年になりますから、確かにすごいですね。
ビジネスモデルとしては、農作物を生産者から買い付け、その後の保管・流通・加工の部分を担うことで利益を出していく商社的なイメージでよろしいかと思います。
2014年以降、毎年M&Aを行い事業の拡大を図るとともに、Divestituresに掲載されているチョコレート、ココア、ブラジル(砂糖)、ボリビア(油糧種子)などを手放しています。
ADMの業績推移(売上・利益)
まずはADMの業績推移です。ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成しています。
ADMの事業領域は主に以下の3つに分けられています。
- Ag Services & Oilseeds(農産物&油糧種子)
- Carbohydrate Solutions(でんぷん食品)
- Nutrition(栄養食品)
稼ぎ頭はAg Services & Oilseeds(農産物&油糧種子)ですが、各年の変動が非常に大きいことが分かります。
<Ag Services & Oilseeds(農業&油用種子)>
古典的な農作物の保管・流通、圧搾、精製に加え、ADMが24.8%を所有するWilmarの事業利益が含まれています。各年の変動が大きいですね。
<Carbohydrate Solutions(でんぷん食品)>
でんぷん、甘味料、小麦粉に加え、バイオ燃料(トウモロコシ)が含まれています。
<Nutrition(栄養食品)>
調味料・着色料、植物性プロテイン、サプリメントなどに加え、ペットや家畜用の食品がここに含まれています。
ADMのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にADMのEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
一株配当は2010年の0.58ドルから2019年には1.40ドルと2.41倍になっており、年平均成長率に換算すると10.3%というナイスな数字です。
配当性向も60%未満に維持されており、しばらくは配当を心配する必要はなさそうです。
上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向の推移を示しています。
過去5年間の平均配当利回りが3.05%なので、現在の2.88%はほぼ過去と同水準と言って差し支えないでしょう。
また、配当と別に自社株買いも毎年行っていますので、過去5年間の平均総還元率は5.76%と高水準になっています。
過去10年間(2010~2019年)の配当実績は以下のとおりです。
平均配当性向:36.9%
年平均増配率:10.3%
累計増配率:2.41倍(2010年: 0.58ドル/株→2019年: 1.44ドル/株)
なお、2021年第1四半期から、四半期配当を0.36ドル→0.37ドルに増配することを発表しており、過去の配当実績をまとめてみると下記のようになっています。
ADMのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)
2018年と2019年の営業CFが大幅にマイナスになっている要因は、売掛金の証券化に係るキャッシュフローの区分(通常の売掛金の回収はプラスの営業CF)が監査の結果、投資CFに区分変更されたことによります。
実際には上記の分のキャッシュは回収できているので、特段問題ないはずですが、その分だけ営業CFが落ち込んでいるように見えており、見かけ上CFが悪化しているように見えています。
ADMの自己資本比率と財務指標(Current/Quick Ratio)
自己資本比率は40%台で維持されており、Current/Quick Ratioともに近年、大きな変化はありません。
ADMの株価チャート
2021年1月29日時点でのADMの株価チャートです。
リーマンショック時に瞬間最大風速で13.5ドルまで下落しましたが、近年はおおむね30~50ドルのレンジで動いています。
現在の株価は50ドルを超えてきており、上場来高値を更新する勢いを見せています。
個人的には今後1~2年でここから突き抜けて大きく上を目指してくれることを期待しています。
結論:ADMにはコモディティ内での分散効果を期待
ここまでいろいろと見てみましたが、個人的には事業と配当の永続性を鑑みるになかなか魅力的な銘柄だと思っています。
コモディティ銘柄として、石油と鉱物資源に加えて、穀物をカバーできるADMは分散効果の観点からも是非ともポートフォリオに加えて長期保有したいと考えています。
基本的に穀物セクターではADMが最も長期保有に適した銘柄だと考えていますので、永久保有を前提に保有しつつ、株価動向によってはタイミングを見て追加購入していきたいと思います。
以上、穀物メジャーのADMについてでした。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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