以前まとめたSBI証券で取り扱いのある米国リートETFについての記事を更新しました。
私自身はIB証券にて、米国リートETFでは最大のVNQに投資をしていますが、残念ながらVNQはSBI証券では取り扱いがありません。
ほとんどの読者の方は日本の証券会社を利用されていると思いますので、本日はSBI証券で取り扱いのある米国リートETFをまとめて分析してみました。
SBI証券で取り扱いのある米国REIT ETFは3つ
現在、SBI証券では、米国のREITを含む不動産セクターをカバーするETFは3つほど取り扱いがあります。
Ticker | 名称 | 運用会社 |
---|---|---|
IYR | iシェアーズ 米国不動産 ETF | BlackRock Fund Advisors |
RWR | SPDR ダウ ジョーンズ REIT ETF | State Street Global Advisors |
XLRE | 不動産セレクト セクターSPDR ファンド | State Street Global Advisors |
いずれも超大手の資産運用会社(ブラックロックとステートストリート)が運用しており、オペレーションリスクは特段気にする必要はないでしょう。
各銘柄の基本情報
各銘柄の基本情報は以下のとおりです。

IYRとRWRのベンチマークの違いは下記のとおりです(XLREの構成銘柄はすべてIYRに含まれるため、ここでは一旦無視)。
IYRはREITだけでなく不動産関連企業をすべて投資対象とするのに対し、RWRはモーゲージREIT、インフラREIT(Cell Tower)、不動産関連企業を投資対象外としています。
各銘柄の特徴を簡潔に言い表すと以下のような感じでしょうか。
【IYR】2000年設定の3つのなかでは最古かつ最大のETF。いまどき経費率が0.41%というのはさすがにちょっと高すぎる印象。
【RWR】2001年設定で2番目に古いが、資産額は伸び悩んでいる印象。経費率0.25%はぎりぎり許容範囲と言える水準。分配金利回りは3つのなかで最高。
【XLRE】2015年設定の新しいETFだが、資産額はRWRをすでに追い抜き、15年先輩のIYRを追いかけている。銘柄数が少なく分散効果は乏しいものの、S&P 500構成銘柄のみを投資対象としており、経費率0.12%も好印象。
各銘柄のセクター比率と構成上位銘柄
2021年12月28日時点の各ETFのセクター別構成比は以下のとおりです。
※XLREとRWRは各銘柄のセクターを自分で確認・分類しましたので、もしかすると正式な分類とは多少違うかもしれませんが、その際はご容赦ください。
【IYR】

37.57%を占めるSpecialized REITというのは主にインフラREITです。
XLREやRWRには含まれないMortgage REITやResearch & Consulting Servicesも含まれているのが特徴と言えますが、セクターの偏りが大きいですね。
【XLRE】

個別銘柄の時価総額が大きいインフラがトップの23.75%を占めています。
そのあとに続くセクターは、物流・住宅・商業・データセンター・Self-storage・ヘルスケアとなっており、インフラに加えて安定感の高そうなセクターがバランスよく組み込まれている印象です。
【RWR】

RWRは伝統的セクターのいわゆる純粋な不動産REITのみで構成されており、個人的には非常に分かりやすいです(インフラと不動産はキャッシュフローの性質は似ていてもやはり別物なので)。
構成上位のセクターもディフェンシブな住宅と今一番伸びている物流(Industrial)が来ていて、いい感じだと思います。
Residential, Industrial, Retail, Self Storageあたりはこの1年間で比率を上げてきています。
一方、Healthcare, Office, Diversified, Data Center, Hotelsは比率を落としています。
新規銘柄の組入などもありますので、一概に比率を落としているセクターのパフォーマンスが悪かったとは言えませんが、全体的な雰囲気は掴めるのではないかと思います。
各ETFの構成銘柄の上位10位は以下のとおりです。

IYRとXLREの上位10銘柄は完全に一致しています。
上述のとおり、RWRはインフラやモーゲージREITは含まず、オフィス・商業・住宅・物流などの伝統的なセクターを投資対象としているため、IYR・XLREとは多少毛色が違いますが、RWRの上位6銘柄(色付きの銘柄)はすべてIYRとXLREに含まれています。
個人的にはこの1年でRealty Income Corporation (Ticker: O)がTop 10に戻ってきたことが嬉しいです。
Realty Incomeは毎月分配型REITで、1994年の上場以来、毎年増配を続けている優良REITなのですが、如何せん投資対象が商業施設のため、コロナで痛手を負っていたところです。
徐々に経済再開の見通しが立ってきたなか、このような伝統的優良銘柄が復活してきてくれたことは喜ばしい限りです。
なお、各ETFのTop 10に名を連ねた14銘柄のセクターは以下のとおりです。

- Infrastructure…インフラ
- Industrial…物流施設
- Data Center…データセンター
- Self Storage…貸倉庫・スペース
- Residential…賃貸住宅
- Office…オフィス
- Healthcare…医療系・高齢者向け施設
- Retail…商業施設・店舗
各銘柄のトラックレコード
まずは、IYR & RWRをS&P 500と比較してみたいと思います。
【2001年4月23日~2021年12月29日】

過去20年ほどを見ると、RWR・IYRともにS&P 500を大きく上回るパフォーマンスを記録しています。
この期間においては、2000年代のS&P 500のリターンがマイナスだったことが大きいですが、それを差し引いても米国不動産(≒米国REIT)が極めて有力な投資対象であることが分かると思います。
次にIYR・RWR・XLREで比較してみましょう。XLREが2015年設定と歴史が浅いため、比較対象期間は2015年10月からと短めになっています。
【2015年10月7日~2021年12月29日】

青がXLRE、オレンジがIYR、緑がRWRで、過去4年ほどのパフォーマンスを見るとXLRE>IYR>>RWRとなっています。
この結果を見るとXLREには少なくともIYRと同等のリターンは期待できそうですね。
ちなみに上記にS&P 500を追加すると下記のようになります。
【2015年10月7日~2021年12月29日】

2001年からの比較だとREITに劣後しているS&P 500も、この5年ほどで見るとREIT ETFを上回る成績を残していることが分かります。
しかし、2020年3月のコロナショックからのリカバリーはS&P 500の方が早かったものの、この半年ほどで徐々にREIT ETFたちが差を詰めてきています。
今後どうなっていくか、非常に気になりますね。
結論:普通に考えるとXLREが有力な投資対象になりそう
これら3つのETFのなかでは、経費率が最も低くS&P 500採用銘柄のみで構成されるXLREを選択するのが一般論としては正解だと思います。
過去5年ほどのパフォーマンスを見てもXLREが最も優れていますし、S&P500の構成銘柄しか投資対象としないことからも、投資対象の質は他のETFと比較するとある程度担保されていると言えると思います。
ただ、XLREは個人投資家に人気のSPYD(S&P 500の配当利回り上位80銘柄で構成されるETF)とのダブりが多くなりがちな点は留意が必要かと思います。
IYRについては単純に経費率が高すぎるのと、銘柄構成もXLREとほぼ同じなので、個人的にはあまり投資する理由はないかなという感じです。
RWRは分かりやすい銘柄構成と高めの配当利回りが魅力的で、機関投資家からは人気がないものの、個人的には結構好きな銘柄です。
RWRについては別途記事にしていますので、興味がある方はこちらもご覧いただくと、米国リートの上位銘柄のイメージが掴めると思います。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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