金価格に連動するETFで世界最大のETFはステートストリートが運用する『GLD』ですが、2018年に同じステートストリートがより経費率を下げた『GLDM』という金ETFの運用を開始しました。
本日はこの『GLDM』について、まとめてみました。
GLDMはGLDの低コスト版と言える金ETF
世界最大の金ETFは2004年11月にNYSEに上場した『GLD』で、現在世界で最も運用残高が大きい金ETFとなっています。
GLDは金地金の裏付けがあるため、実態のある金ETFとして機関投資家からの信頼も厚いのですが、経費率が0.40%と高めな点がネックでした。
また、GLDの運用開始以来、マーケットには類似のETFが多く出現しており、その多くがGLDをベンチマークにこれより安い経費率で運用することで資金を集めてきていました。
このような状況を受け、ついに本家ともいえるステートストリートが2018年6月に経費率を大幅に下げた同種の金ETF『GLDM』の運用を開始しました。
GLDと同じ運用スキームを低ロット・低コストで実現
ステートストリートはGLDMの主な特徴として下記を挙げています。
- 費用控除前ベースにおいて、金現物の値動きに連動する投資成果を追求します。
- GLDMは、容易かつ低コストで金へ投資したいと考える投資家向けの商品です。
- 多くの投資家にとって、金現物の購入、保管および付保にかかる費用と比べ、GLDMの売買にかかる費用および経費率の負担の方が下回ると考えられます。
ざっくり言えば、「低コストで簡単に金に投資できる商品」ということですね。
下記のとおり、GLDもGLDMも金地金の裏付けがあり、『経費控除前』での金地金価格との連動を目標としていますので、期待されるリターンは金地金価格マイナス経費率ということになります。
GLDの運用実績を見てみると、金地金価格に対して2004年の設定来でちょうど0.4%(年換算)ほどのラグが発生しています。
GLDMは設定日が2018年6月24日とまだ日が浅いですが、今のところ、金地金価格に対する設定来のラグは0.2%ほどでGLDに対して劣後するような事態にはなっていません。
なお、GLDMの経費率は当初0.18%でしたが、2022年2月23日より0.10%へと引き下げられました。
これにより下記のとおり、金地金の裏付けのある同種の金ETFで最安水準を堅持するとともに、今後は金地金価格に対するパフォーマンスのラグも軽減されるものと期待されます。
運用開始から4年弱ですが、純資産総額は2022年3月29日時点で50億ドル(約6,000億円)を超えており、順調に成長しています。
ただ、GLDは670億ドル(約8兆円規模)なので大きな差があり、多額の資金を運用する機関投資家の多くは流動性等の観点から、GLDMではなくGLDを選好しているようです。
GLDMの運用実績(価格推移、リターン)
設定来(2018年6月25日から2022年3月30日まで)のGLDMのパフォーマンスを見てみましょう。
設定来で51.4%の値上がりを記録しています。
上記のとおり、これまでのところ、ベンチマークのLBMA金価格と比較し、特段トラッキングエラーは発生していません。
これまでのところ、年換算で0.2%ほどのラグがありますが、これは2022年2月まで経費率が0.18%だったことを考えれば妥当ではないでしょうか。
今後、経費率が0.10%で運用される期間が伸びていくに従い、この差が縮まってくることを期待したいと思います。
いずれにせよ、ステートストリートが運用していますので、投資判断に影響を与えるようなトラッキングエラーは出ないと考えています。
そもそもなぜ金に投資するべきなのか?
上述のとおり、GLDとGLDMが金への有力な投資手段であることは明白ですが、そもそも金への投資にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
レイ・ダリオ率いるブリッジウォーター社で、共同最高投資責任者を務めるボブ・プリンス氏がBloombergとのインタビューで以下のように語っています。
- 金価格は貨幣の価値を逆転させたもの
- 金はインフレ・ヘッジとして有効
- 危機発生時に金価格は上昇する
世界中の中央銀行が貨幣を刷り続けている状況において、貨幣は価値を失っていっており、今後も金価格が上昇していくことは必然であると考えられます。
このことから、金は当然インフレヘッジとしても有効ですし、過去の歴史を見れば「有事の金」と言われるように、経済危機や武力衝突といった事態においても、金を保有していることは有効なリスクヘッジの手段となります。
また、かのJ.P.モルガンが金について有名な言葉を残しています。
Gold is money, everything else is credit.
J.P. Morgan, 1912
金こそがマネーであり、貨幣を含むそれ以外のすべてのものは信用にすぎない、ということです。
少なくとも、金は他のアセットクラスとは性質が異なることから、ポートフォリオのDiversificationを高める観点から有効であると考えられていますし、近年、世界中の中央銀行が金の保有量を増やしています。
皆様もまだ金を保有されていないようであれば、ご自身のポートフォリオを一度ご確認いただき、金の保有についても検討されてみてはいかがでしょうか。
以上、低コストで金への投資を実現してくれる金ETF・GLDMについての考察でした。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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