カーディナル・ヘルス(Ticker: CAH/Cardinal Health Inc)は全米の病院や薬局などに対して医療機器や医薬品を提供しているヘルスケア企業です。
カーディナル・ヘルスは医薬品や医療用品の販売と関連サービスを展開。医薬品事業は、米国とプエルトリコで顧客や病院にブランド・ジェネリック医薬品、市販薬、一般健康製品の卸売を行う。病院や診療所への血漿製剤の販売、病院内薬局管理サービス、小売薬局のフランチャイズを展開する。医療用品事業は手術着、診察用手袋、液体採集製品などを製造する。
Yahoo!ファイナンス (https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/detail/CAH)
詳細は後述しますが、CAHは全米の90%近くの病院をカバーする広範なネットワークを有しており、医療流通大手と称されることもありますので、医療業界の卸業者的な立ち位置にいる会社です。
下記の記事で解説されているとおり、米国の医薬品流通業界はCAHを含む3社による独占が続いており、この状況に変化がない限りは何だかんだ言っても米国の人口増に伴い、今後も成長していくのではと個人的には期待しています。
【バロンズ】米医療業界の一角に投資妙味 https://jp.wsj.com/articles/SB11168026957026933972104585370043663450602
CAHは三大医療卸売業者のひとつ
上記のFact Sheetにある数字を見るだけでも何となくCAHの凄さが垣間見えるかと思います。
- 全米の病院の90%をカバー
- 51,000点の実験機器を6,500以上の研究施設に提供
- 29,000点以上の医薬品を提供
- 46,000点以上の家庭用医療機器を3百万人以上の患者に提供
- 10,000以上の内科医・施設・患者をカバー
- 2019年の売上は1,455億ドル(約1.5兆円)
- 世界で約48,000名の従業員を雇用
一方、オピオイド訴訟の影響で2020年は稀にみる大赤字決算となっています。
オピオイド訴訟とは、簡単に言えば薬局で簡単にもらえる薬が麻薬的な使い方ができて、実際米国民の多くがそのような使い方をしていた結果、多くの中毒患者と死亡者が出た過去について、主に各州や地方自治体が医療関連企業を訴えているものです。
現在はCAHが和解金の約56.3億ドル(約6,000億円)を今後18年間に渡って支払う案をベースに交渉が続けられています。
参考:オピオイド訴訟
私は医療業界も米国の訴訟についても門外漢ですので、残念ながら詳細を語ることは出来ませんが、なんとなく様子が分かる記事を見つけましたので、参考までにリンクを貼っておきます。
【バロンズ】オピオイド訴訟、投資家にどう影響? https://jp.wsj.com/articles/SB11588140412100604850204585567623782953904
また「そもそもオピオイドって何なの?何がどうやばいの?」という方はWikipediaを見れば、なんとなく分かると思いますので、こちらも参考までにリンクを貼っておきます。
オピオイド-Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%89
後半部分のオピオイド危機というところで米国の状況が分かるかと思います。
CAHの業績推移(売上・利益)
ここからはCAHの経営状況について、簡単に見てみたいと思います。
まずは近年の業績推移です。※ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成
決算期が6月なので既に2020年度の決算は出そろっています。
2020年の売上高は1,529億ドル(約16兆円)、営業利益・純利益はそれぞれ17.7億ドル・▲40.0億ドル(約1,850億円・約▲4,200億円)となっています。
売上高がすごいですね。日本企業だと首位・トヨタ自動車の約30兆円の次は本田技研工業と三菱商事の約15兆円ですから、単純な売上規模だけでみると三菱商事よりも大きい商社(卸売業)と言うこともできます。
なお、2011~2019年の営業利益・純利益はそれぞれ16~24億ドル・3~14億ドル(約1,700~2,500億円・約300~1,500億円)程度で推移していましたので、こちらの数字を平常時の期待値として見ておく方が妥当かもしれません。
ここからは大赤字となった2020年の決算について簡単に触れたいと思います。
上表はAnnual Reportに記載されている一時要因を除いた営業利益(Non-GAAP)と会計基準に基づいた営業利益(GAAP)を比較した表です。
会計上の営業利益から訴訟費用(Litigation charges, net)や減損処理(Impairments on disposal of assets)などを除いたNon-GAAPの数字は2019年の23.53億ドルに対して2020年は23.84億ドルで、前年比1%アップとなっています。
次に2020年の部門別業績を見てみましょう。CAHは医薬品部門(Parmaceutical)と医療部門(Medical)の2つに分かれます。
上記は売上の9割を占める医薬品部門(Pharmaceutical segment)ですが、前年比で売上6%増、部門利益4%減、利益率0.14%減という結果になりました。
こちらは売上の1割程度を占める医療部門(Medical segment)ですが、前年比で売上1%減、部門利益15%増、利益率0.61%増となりました。
医薬品部門は減益となりましたが、医療部門はCovid-19の悪影響をコスト削減と家庭用商品の売上増で上回った格好になりました。
なお、Covid-19の感染再拡大・長期化がなければという条件付きですが、2021年はNon-GAAPベースで今年とほぼ同水準が予測されています。
CAHのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
今年のやっちまった感が半端ないですね。
それ以外の年もフリーCF(濃緑)はすべての年で配当額(青色)を上回っていますが、EPS(薄緑)は隔年で結構ブレることもあり(とはいっても2020年以外は全部黒字ですが)、ちょっと掴みづらい印象ですね。
ただ、2014年・2019~2020年を除くと配当性向は29~43%の低水準で推移しており、平常時の配当性向として40%がおよその目安であることが分かります。
上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向(Total Yield %)の推移を示しています。
毎年継続的に自社株買いを行っており、近年の株価低迷と相まって2016~2019年の総還元性向は5.6~11.8%とかなり高い水準になっています。
過去10年間(2011~2020年)の配当実績は以下のとおりです。
平均配当性向:98.1%(2020年を除くと46.0%)
年平均増配率:10.3%
累計増配率:2.41倍(2011年: 0.80ドル/株→2020年: 1.93ドル/株)
配当の伸びがかなりナイスな水準ですし、大赤字の2020年を除けば、配当性向も46.0%と余力を残していることが分かります。
次に参考までに一株益(EPS)でも営業利益同様、Non-GAAPに調整したものを載せておきます。
一株配当を1ドルとか2ドルとかでやってるなかで、訴訟費用で17.84ドルも赤字を出してるのはえぐいですね。軽く配当8~9年分ですからね。。。
CAHのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)
売上高に占めるフリーCFの比率(%)が右軸にありますが、0.5~2.5%と非常に薄利多売スタイルであることが分かります。
年により多少バラつきはありますが、近年の業績から見ると、ざっくり毎年15~25億ドル(約1,650~2,200億円)程度のフリーCFを稼ぐ力はありそうですね。
薄利多売な分、逆にCapexが少なくて済むビジネスモデルなのは強みともいえるでしょう。
CAHの株価チャート
2005年1月1日から2020年10月19日までの株価チャートです。
2015~2016年に91ドル台が過去最高値で、2020年10月19日現在は47.90ドルとなっています。
株価はこの5年ほどは右肩下がり気味ですが、この2年ほどはほぼ横ばい状態に移行していますので、ここから再度上を目指すことができるかどうかを個人的に注目しています。
所感:配当4%超えてる今の水準だったら買いたくなるなぁ
訴訟自体は終結していないとはいえ、大方は今年の特損計上で会計上はカバーしたはずで、本質的な事業内容・業績の安定感、40%台に抑えられている配当性向も考慮すると、現在の株価・利回り水準であれば、投資したくなるなあと個人的には思いました。
この水準でインできれば、過去10年ほどの増配は望めないとしても、大きな規制改革等、事業の根幹に影響を与える出来事が発生しなければ、今後5~10年ほど保有している間にかなりの高配当化が期待できると思います。
ただ、3社独占の医療流通業界にはAmazonなどの新規参入も噂されているようで、この辺りはどうなるのかは私には全く分かりません。
この会社が配当4%超、しかも配当性向40%台っていうなら悪くない賭けじゃない?とは感覚的に思っていますが、もしこの辺りの業界事情に詳しい方がいらっしゃいましたら、アドバイスいただけますと幸いです。よろしくお願いします。
これからも世の中の個人投資家の皆様とともに、ナイスな資産形成に取り組んで参りたいと思います。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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