ジェニュイン・パーツ(Ticker: GPC/Genuine Parts Company)は主に自動車交換部品や産業用交換部品を取り扱う米国の大手流通業者です。
ジェニュイン・パーツは米国大手流通業者。自動車交換部品・付属品、工業交換部品(ベアリング、ホース、バルブなど)、オフィス用品(コンピュータ用品、オフィス機器・家具、事務用品など)、電気材料(電気・磁器ワイヤー、ケーブルなど)を北米で流通、販売。自動車交換部品・付属品の大半は「NAPA」ブランド名で販売される。
Yahoo!ファイナンス (https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/detail/GPC)
事業内容はやや地味ですが、GPCは連続増配64年という驚異的な配当実績を持つ一流企業なのです。
50年以上連続して増配している銘柄は『Dividend King(配当王)』と呼ばれますが、GPCは14年前の2006年にキングの称号を手にした後も、リーマンショック・コロナショックなどあらゆる事象を乗り越えて増配を続けているスーパーな銘柄です。
GPCは1928年創業の業界最大手の老舗企業
GPCは1928年にカーライル・フレイザー(Carlyle Fraser)さんが4万ドルで自動車部品屋を買い取り、ジェニュイン・パーツと改名して事業を始めたことが起源です。
当時の売り上げは年間7万5千ドルほどで従業員もたったの6名でしたが、その後92年の時を経て、現在では世界14か国・3,600拠点に約5万人の従業員を抱える業界最大手に成長しています。
本社はジョージア州アトランタに所在しており、2020年6月末までの12か月間の売上は$16.5bn(約1.8兆円)ほどで、売上の65%は自動車部品、残りの35%が産業用部品です。
売上の地域別内訳は、北米77%・欧州14%・アジア9%となっており、米国メインで頑張っている企業であることが分かります。
なお、同期間の利益率は7.7%、フリーCFは$1.3bn(約1,400億円)です。
GPCが事業を行う自動車部品と産業用部品の市場規模(全世界)は$230bn(約25兆円)・$200bn(約22兆円)規模となっています。
市場規模はすでに十分大きいですが、現在もマーケット自体が年率2~3%で成長しています。
この業界の特徴は大きなシェアを持つプレイヤーがいないことで、特に米国は最大手のGPCですら市場占有率が7%程度となっており、ポジティブな見方をすれば、まだまだ伸びしろがあると言えます。
上記の年表にもまとめられていますが、過去45年ほどは主にM&Aで成長してきています。
なお、創業から現在に至るまでの92年間のうち、87年で売上成長を記録し、75年で利益成長を実現するというアメイジングな実績を有しています。
直近の10年間でみても売上高/EPSが年平均6.8%/8.6%といういい感じの伸びを見せています。
GPCは自社の競争優位性を下記3点にまとめています。
- 世界的なプレゼンスとブランド力
- 運営・流通における最高クラスの効率性
- テクノロジーを駆使したソリューション
世界的なプレゼンスとブランド力
長い歴史に裏付けされた確かなブランド力と、業界のリーディングカンパニーとしての地位があります。自社ブランドである「NAPA」と「Mi」のグローバル展開を進めています。
運営・流通における最高クラスの効率性
事業規模を活かした各拠点の有効活用や、優れたPMI(買収先の統合プロセス)により、業界で最高水準の効率的な事業性を有しています。
テクノロジーを駆使したソリューション
5年前に「Digital Center of Excellence」というものを立ち上げ、データ分析をサプライチェーンの改善や価格設定に活かしていく戦略です。
配当についても前述のとおり、2020年で64年連続増配という驚異的な記録をもっています。
過去40年間の平均増配率7.0%でこれほど長期でこの水準の増配を維持しているのは素晴らしいですね。
2020年も前年から4%の増配を実施しています。
GPCの業績推移(売上・利益)
ここからはGPCの経営状況について、簡単に見てみたいと思います。
まずは近年の業績推移です。※ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成
過去10年ほどを見ると、売上高は右肩上がりですが、営業利益率は逓減していることが分かります。
営業利益率は6~8%ほどで薄利多売型のビジネスですが、その分業績の安定感が感じられますね。
2019年の売上高は193.9億ドル(約2兆円)、営業利益・純利益はそれぞれ10.9億ドル・6.2億ドル(約1,200億円・約650億円)となっています。
2020年の業績も上半期までは出ていますので、簡単に触れたいと思います。
- 売上 ▲10.1%
- 調整後粗利益 ▲12.3%
- 調整後営業費用 ▲12.3%
- 部門利益 ▲ 6.2%
- 調整後EPS ▲10.2%
上記のとおり、コロナの影響から今期の業績は一時的に落ち込むことが予想されています。
とはいうものの、赤字に転落している企業もいるなか、そこまで致命的なダメージではないように見受けられますので、来期以降は徐々に成長基調に戻ってくれるものと個人的には期待しています。
GPCのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
業績の安定感が半端ないですね。
多少バラつきがあるフリーCFもすべての年で配当額を上回っており、配当性向も45~60%で推移しており、心地よい水準ですね。
上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向(Total Yield %)の推移を示しています。
毎年継続的に自社株買いも行っており、2013~2019年の総還元性向は3.0~4.6%で持続可能性の高い安定的な水準と言えるのではないでしょうか。
過去10年間(2010~2019年)の配当実績は以下のとおりです。
平均配当性向:55.0%
年平均増配率:7.1%
累計増配率:1.86倍(2010年: 1.64ドル/株→2019年: 3.05ドル/株)
なお、2013~2019年の配当利回りは2.2~3.0%で推移しており、現在の3.1~3.2%という水準は対配当で見た株価としては旨味があるとみることもできます。
過去3年間(2017~2019年)のキャッシュの使い道としては、下記のとおりとなっています。
- 47% M&A
- 29% 配当
- 16% 事業再投資(Capex)
- 8% 自社株買い
なお、2020年においてはこれまでの主要な資金使途であるM&Aは小規模なものにとどめるとしており、主に配当と事業再投資に回される見込みです。
このご時世なのでどの企業も手元の資金を厚くする動きを取っていますね。
GPCのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)
年により多少バラつきはありますが、ざっくり毎年15~20億ドル(約1,650~2,200億円)程度のフリーCFを稼ぐ力はありそうですね。
大きく伸びてはいないものの、安定している事業であることが分かります。
GPCの株価チャート
1995年1月1日から2020年10月15日までの株価チャートです。
2019年4月に114ドルを超えたのが過去最高値で、現在は101.28ドルとなっています。
この5年ほどは横ばい傾向ですので、近い将来このレンジを超えて上抜けしてくるか、個人的に注目しています。
所感:事業の安定感と配当余力が感じられる
事業内容・業績が安定していて、配当性向も50~60%で維持されていますので、投資先として非常に安心感があるなと個人的には思いました。
過去、配当利回りが3%を下回っていたのも納得です。
とはいうものの、昨今の状況を鑑みると市場の動きに合わせて大きくディスカウントされる可能性も無きにしも非ずと考えており、できれば3%台半ばの利回り水準で買い付けて、中長期的に優秀なキャッシュマシーンとして活躍してほしいと思っております。
二重課税による資金効率の観点からはあまり米国個別株・ETFの比率を上げすぎたくはないのですが、こういう地味に長期的に頑張ってくれそうな銘柄は好きなので、今後もちょこちょこポートフォリオに組み入れていきたいです。
これからも世の中の個人投資家の皆様とともに、ナイスな資産形成に取り組んで参りたいと思います。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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