キンバリー・クラーク(Ticker: KMB/Kimberly-Clark Corporation)は、ティッシュペーパーのクリネックス(Kleenex)やトイレットペーパーのスコット(Scott)で有名な米国の日用品メーカーです。
ご想像のとおり、手堅い事業内容で連続増配48年を誇るS&P 500の構成銘柄です。
50年以上連続して増配している銘柄は『Dividend King(配当王)』と呼ばれますが、KMBは1972年から48年連続増配中ですので2022年にキングに昇格予定の銘柄です。
KMBは1872年創業のティッシュペーパーを世に広めた老舗企業
KMBはその名のとおり、キンバリーさんとクラークさん(とそのお仲間)が1872年に創業した会社です。
途中でP&G的なノリで、Kimberly & Clarkに名前が変更された時期もありましたが、割とすぐに現在の社名であるKimberly-Clark Corporationに戻されています。
KMBといえば何よりもまず1924年に発売されたKleenex(クリネックス/ティッシュペーパー)でしょう。
米国ではこのKleenexがそれまで使われていたハンカチの代用品として大ヒットし、現在でも米国ではティッシュペーパーのことをKleenexと呼ぶくらいです。
クリネックスは日本ではあまりメジャーではないのでピンとこないかもしれませんが、個人的には絆創膏のことをバンドエイド(=ジョンソンエンドジョンソンの商品名)と呼ぶのと同じだと理解しており、いかに人々の生活に根付いているかが分かります。
KMBはクリネックス以外にも多くの紙製品を取り扱っており、トイレットペーパーのScottやオムツのHuggiesなどが有名です。
2019年の売上高は$18bn(約2兆円)です。
世界175か国でKMBの商品が売られており、80か国で市場シェアNo.1もしくはNo.2の地位を確保しています。
また、ここまで名前を挙げた3つの商品を含む、5つの商品(Huggies, Kleenex, Kotex, Cottonelle, Scott)が数千億円規模の打ち上げを誇り、世界人口の1/4がKMBの商品を日々使っています。
世の中はもはやKMBがなくては回らない状況になっているのです(大袈裟)。
上図のとおり、KMBの商品群は3つに分けられます。
- Personal Care(オムツ、生理用品など)
- Consumer Tissue(トイレットペーパー、ティッシュペーパーなど)
- K-C Professional (KCP/業務用商品)
2019年の実績では売上の半分がPersonal Care、3割がConsumer Tissue、残りの2割がKCPといった具合になっており、いずれのセグメントでも20%前後の営業利益率を誇ります。
2019年の地域別売上高は北米が52%、それ以外が48%となっています。
ただ、営業利益率には北米とそれ以外で大きな差(北米25% vs それ以外13%)があり、営業利益では北米が68%、それ以外が32%となっています。
上図のとおり、2016~2019年の業績についても、主要な数字をざっと見ただけでも、下記のような具合で安定した経営状況が感じられます。
- 売上成長率:0~4%
- 営業利益率:17~19%
- 配当性向 :60~62%
- 自社株買い:750~900百万ドル(約800~1,000億円)
- 1株利益 :6.03ドル(2016年)⇒ 6.89ドル(2019年)
正直、業績面での成長感にはやや欠けますが、自社株買いと安定した業績の組合せによって、配当性向を60%に抑えつつ、1株利益を順調に伸ばしていることが見て取れます。
なお、詳細は後述しますが、2020年もコロナ特需のような形で業績は上振れしており、KMBの経営状況は引き続き順調と言えます。
KMBの業績推移(売上・利益)
ここからはKMBの経営状況について、簡単に見てみたいと思います。
まずは近年の業績推移です。※ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成
過去10年ほどを見ると、売上高は横ばいからやや減少傾向ですが、営業利益率は若干上向きつつあることが分かります。
2019年の売上高は184.5億ドル(約2兆円)、営業利益・純利益はそれぞれ29.9億ドル・21.5百万ドル(約3,200億円・約2,300億円)となっています。
2020年の業績も上半期までは出ていますので、簡単に触れたいと思います。
端的に言うとコロナの恩恵を受けており、今期の業績は上振れが見込まれます。
2020年上半期の業績概要です。
- コロナ関連の需要増もあり、前年同期比で売上高は4%増(為替変動と撤退した事業を除いた数字)
- 著しいコスト減により、利益率が大幅に改善され、調整後利益は過去最高
- 営業キャッシュフローも過去最高を記録
一時的要因があるとは言え、業績が好調なようで何よりです。
下記に売上・調整後粗利・営業利益・1株益に関する情報も掲載しておきます。
売上高がほぼ横ばいなか、粗利率(34.6%⇒39.8%)と営業利益率(17.2%⇒21.9%)が著しく改善されたことにより、業績が上向いたことが分かります。
なお、同社の中期経営計画(K-C Strategy 2022)では下記の目標が掲げられています。
まとめると以下のような感じでしょうか。
- 1~2%の市場成長に対し、1~3%の売上増を目指す
- 3~5%の営業利益増と自社株買いにより、1桁台中盤(4~6%程度?)のEPS成長を実現する
- ROIC(投下資本利益率)は少なくとも現状のトップクラスの水準を維持する
- 配当性向を60%程度に維持しつつ、EPSの増加に合わせた増配を実現する
上記に加え、より長期の見通しとして、同社の取り扱う商品カテゴリーや、同社のビジネスそのものに対しては非常に楽観視している旨が付け加えられています。
KMBのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
2015年が異常値になっていますが、全体的に徐々に伸びてきている印象を受けます。
配当性向も2015年と2018年以外は60~70%で推移しており、心地よい水準ですね。
なお、2018年も配当性向は86.4%で、配当性向が100%を超えた年は過去10年間で2015年だけです。
上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向(Total Yield %)の推移を示しています。
毎年継続的に自社株買いを行っており、2013~2019年の総還元性向は4.6~6.3%となっています。
びっくりするような数字ではありませんが、持続可能性に配慮しつつ高水準を維持していると言えるのではないでしょうか。
過去10年間(2010~2019年)の配当実績は以下のとおりです。
平均配当性向:71.5%
年平均増配率:5.1%
累計増配率:1.56倍(2010年: 2.64ドル/株→2019年: 4.12ドル/株)
なお、2013~2019年の配当利回りは2.8~3.5%で推移しており、現在の2.9%という水準は対配当で見た株価としては高値圏にあるとみることもできますが、下記のとおり、今期の業績が絶好調なことにより、直近で株価が上昇したことも一因です。
上図のとおり、2020年上半期は調整後1株益(Adjusted EPS)が$1.67⇒$2.20と前年比31.7%も増加しており、通年の見通しも今年7月には下記のとおり上方修正されています。
KMBのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)
年により多少バラつきはありますが、ざっくり毎年15~20億ドル(約1,650~2,200億円)程度のフリーCFを稼ぐ力はありそうですね。
2020年上半期については下記のような状況になっています。
- 過去最高の16億ドル(約1,700億円)近い営業CFを記録(前年同期は6億ドル)
- コロナによる特殊要因もあり、下半期の数字は上半期よりは落ちる見込み
- それでも通年では昨年を大きく上回る見込み
- 第2四半期は自社株買いを控えていたが、7月24日より自社株買いを再開
といった感じで少なくとも今年の業績は問題なさそうですね。
KMBの株価チャート
1995年1月1日から2020年10月2日までの株価チャートです。
2020年8月に160ドルを超えたのが過去最高値で、現在は147.43ドルとなっています。
2000年前後からはおおむね横ばい傾向でしたが、2013年頃にそれまでの水準を上抜けし、現在に至るまで大きな株価上昇を見せています。
所感:長期的に手堅いパフォーマンスが期待できそう
個人的に事業内容的に好きなタイプの銘柄ですので、今後も株価動向を注視し、いい感じに値を下げてくれれば、買いにいきたいと思います。
特にオムツなんかは先進国の高齢化+今後の世界人口増を考慮すれば成長性が期待できそうですし、今年に入ってからも市場が急成長しているインドネシア企業を買収したりと、成長に向けた投資も行われています。
コロナの影響で短期的には業績が悪化している企業が多いなか、KMBは逆に恩恵を受けており、中長期的にも安定したパフォーマンスが期待できるのではと思っています。
上述のとおり、こういう地味な銘柄(歯磨き粉のColgateとかベッドスプリングのLeggett & Plattなんかもそうです)が好きなので、安定増配銘柄として今後もポートフォリオに組み入れていきたいです。
これからも世の中の個人投資家の皆様とともに、ナイスな資産形成に取り組んで参りたいと思います。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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