先日、SBI証券で取り扱いのある中国株ETFのうち、最も注目しているCXSEについてまとめた記事をアップしました。
CXSEは中国株を対象として後述のスクリーニングをかけるETFですが、XSOEは同様のスクリーニングを新興国株全体に対してかけるETFです。
本日は新興国株投資に際して、興味深いオプションとなり得るXSOEについてまとめてみました。
敢えて新興国株に投資する意味はあるのか?
この疑問をお持ちの方、いらっしゃると思います。
「米国株最強!S&P 500だけで十分!わざわざ分散投資してリターンを下げる必要なし!」的な主張、分かります。
実際に過去10年間は米国株は最強でしたし、100年スパンで見ても米国株は世界トップレベルのリターンを記録しています。
しかし、世の中は移り行くもので将来のことは誰にも分かりません。
そんななか、ブラックロック、JPモルガン、バンガード、モーニングスターなどの大手金融機関や運用会社は、今後10年間、米国株のリターンは新興国株に劣後すると予測しています。
もちろんそうなる保証はありませんが、昨年来、大手の金融機関でこの逆(つまり、米国株が今後10年においても新興国株をアウトパフォームすること)を予測しているレポートは見た記憶がありません。
したがって、私のようにアセットクラスごとに投資するスタイルの運用を心がけている場合、新興国株をポートフォリオに組み入れておくのは悪くない判断だと思っています。
ちなみにBarron’sで面白いチャートを見つけたので記載しておきます。
これは1994年から2019年末までの米国株(S&P 500)と新興国株の相対的なパフォーマンスを示したものです。
チャートが上に向かっている期間(2001~2010年)は新興国株が米国株をアウトパフォームしており、チャートが下に向かっている期間(1994~2000年/2011~2019年)は米国株が新興国株をアウトパフォームしています。
およそ10年のサイクルで米国株と新興国株が互いをアウトパフォームし合っており、直近のチャートを見ると、そろそろ米国株のターンが終わりを迎え、新興国株が輝き始める時期を迎えるようにも見えます。
Barron’sが示唆するとおり、本当にここから新しいサイクルが始まり、長期(7~10年程度)に渡って新興国株が米国株をアウトパフォームするか、興味深いですね。
XSOEの基本情報
経費率は兄弟分の中国株ETF・CXSEと同水準の0.32%に設定されています。
新興国株で最大のETFはバンガードのVWOですが、VWOの経費率は0.10%なので、0.22%の追加経費を払う価値があるかどうかが、ひとつの判断基準になろうかと思います。
設定日は2014年12月10日で、運用期間は兄弟分のCXSEよりも2年ほど短いですが、純資産額は4,000億円規模でCXSEの10倍の規模まで成長しています。
構成銘柄数は521でそれなりに多いですが、このETFの特徴は国有企業(政府の保有比率が20%以上の企業)がポートフォリオから除かれているところです。
CXSEと同じ観点にはなりますが、なぜ国有企業を投資対象から除外することが有益だと考えられるのかをまとめてみました。
1.国有企業(State-Owned Enterprises)の性質
株主価値の最大化に集中している通常の企業と異なり、国有企業には時として株主の利益を最大化することよりも、政府の意向や要請に応えようというインセンティブが働くことがあります。
これ自体も一般投資家や株主との利益相反に当たりますが、同時にこういった企業体制・風土が中長期的には事業の効率性を低下させ、当該企業やその企業の属する市場の成長を鈍化させるというものです。
したがって、このような言説によれば、経済的な観点からは国有企業は好ましい存在ではなく、基本的には民営化を進めるべきだ、ということになります。
2.投資リターンの差異
投資家にとって最も重要な点は、国有企業と非国有企業の投資においてリターンに有意な差があるのか、ということです。
結論としては中国株ほどではないものの、新興国株においてもこの点で明確な差が認められています。
2007年12月末から2020年9月末を見てみると、リーマンショック以降、青線の非国有企業が黒線の国有企業を継続的にアウトパフォームしていることが分かります。
また、各期間のリターンを見ても、非国有企業(Non-SOE)が国有企業(SOE)をアウトパフォームしています。
3.ファンダメンタルズの差異
次に気になることはファンダメンタルズ(もしくは事業の質的な面)で両者に有意な差が見られるかという点です。
直感的には国有企業は非効率な事業運営を行っているため、ROAやROEなどの事業効率性を表す指標で非国有企業に劣後していると考えられますが、下記のチャートから少なくともROAについてはそのような傾向が読み取れます。
これらの指標はセクターによって平均値がだいぶ違う(例えばIT企業と電力会社などは比較にならない)ので、本来はそのあたりを考慮する必要はありますが、少なくとも非国有企業の方が効率的に収益を上げられる事業を行っていることが分かります。
4.セクターの違い
最後に国有企業と非国有企業が属するセクターの違いです。
上述のとおり、業種によって平均的な収益性や事業の特性に違いがありますが、非国有企業と国有企業では、ちょうどOld EconomyとNew Economyの比率が逆転しており、非国有企業はNew Economy銘柄が占める割合が非常に高いことが分かります。
XSOEを活用することで、Information Technology(台湾セミコンダクター、サムスン電子など)や、Consumer Discretionary(アリババなど)などの新興国を代表する優良企業にまとめて投資することができます。
XOSEのセクター比率と上位銘柄
XOSEのセクター別構成比は以下のとおりです。
これだけ見てもあまり参考にならないかと思いますので、各セクターの上位10社を①Information Technology, ②Consumer Discretionary, ③Communication Services, ④Financials, ⑤Materialsの上位5セクターについて掲載しておきます。
1.Information Technology
2.Consumer Discretionary
3.Communication Services
4.Financials
5.Materials
上記5セクターで全体の76.95%を占めています。
XSOEの運用実績
XSOEの設定来のパフォーマンスを新興国株ETF(IEMG)と比較してみました。
※IEMGはVWOと同規模を誇る最大級の新興国株ETFで、XSOE同様、韓国を新興国に含んでいます。VWOは韓国を含みませんので、よりフェアな比較になるよう、VWOではなくIEMGと比較しました。
【2014年12月10日~2021年1月15日】
オレンジがIEMG、青がXSOEです。
コロナ後の中国株の著しい上昇に牽引され、XSOEも新興国株全体を上回っていることが分かります。
これが持続性のあるトレンドなのか、興味深く見守っていきたいと思っています。
なお、過去のパフォーマンスの主な指標は以下のとおりです。
【2014年12月31日~2020年6月30日】
緑がXSOE、青がIEMGです。
上記期間で見ると、XSOEは新興国株全体の倍のリターン(34.6% vs 16.3%)を出しながら、ボラティリティは新興国株全体より低くなっており(21.4% vs 21.9%)、理想的な結果を得られたことが分かります。
ただ、2015年と2018年にはそれぞれ▲13.5%, ▲18.6%となかなか痛みを伴うリターンを出しているあたり、新興国らしさを感じることができます。
なお、XSOEは四半期末に分配金が出ますが、現在の利回りは1.4%前後といったところですので、インカムに関してはあまり期待できないETFとなっています。
結論:新興国ETFに被せる形で少し保有してみようかな…
個人的には経費率に差もありますし、あくまでも新興国株の主力はVWOやIEMGのような王道のETFで十分だと考えています。
ただ、これまで劣後していた国有企業たちが、台湾セミコンダクターやアリババのようなイケイケの非国有企業を凌駕し始める展開は個人的には想像しづらく、新興国ポートフォリオ内での非国有企業の比率を若干高めるために、既存のETFに被せる形でXSOEを少し保有するのはアリかなと感じました。
もし今に至るまで新興国株ETFを保有しておらず、今から新興国株に投資し始める場合には、ある程度広くエクスポージャーを取れることもあり、逆にXSOEを主力にしていたかもしれませんが。
でもこうやって様々な投資アイディアや戦略に思考を巡らせるのは楽しいですね。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
コメント
情報有難うございます。勉強させて頂きました。XSOEとCXSEのコンセプトに賛同したので投資を開始することにしました。両ETFとも現在下げ基調にあるので「連続ナンピン買い」での少額投資になりますが、行く行くは合計でVWOと同額程度に持っていくことも考えています。