ゴールドの業界団体であるWorld Gold Councilは、四半期ごとに金需要の動向についてレポートを出しています。
本日は最新のレポートを参照しながら、2020年(通年および第4四半期)の金市場の動向について、簡単にまとめてみました(元記事は下記リンク)。
Gold Demand Trends Full year and Q4 2020
2020年のハイライト
ドル建ての金価格は25%上昇
金価格は8月に2,000ドルを超え、ほとんどの主要通貨で過去最高を更新しました。
その後、11月末には1,762ドルまで値を落としましたが、年末には1,887ドルまで値を戻しました。
ゴールドETFへの資金流入は過去最高を記録
コロナによってもたらされた不確実性と中央銀行の金融政策から、10月までは継続的な資金流入が見られましたが、第4四半期にはリスクオンの動きと金価格の下落に合わせ、130トンの流出が見られました。
インゴットや金貨の需要は下半期に回復
西側諸国の底堅い需要に加え、下半期に2大需要国である中国とインドの市場が回復したことにより、インゴットと金貨の需要は896.1トン(前年比+3%)での着地となりました。
宝飾品の需要は過去最低を記録
第4四半期に多少持ち直したものの、コロナの影響から宝飾品の需要は過去最低を更新しました。
中央銀行による金買い入れは大きく減速
第3四半期には中央銀行は金を売り越しており、中央銀行の買い入れは通年で見ても前年比▲60%となる273トンに止まりました。
2020年第4四半期の金需要は783.4トン(前年比28%)と大幅減
2020年第4四半期の金需要は783.4トン(前年同期比28%減)となりました。
2020年通年の数字も3,759.6トン(前年比14%減)と、リーマンショックがあった2008年第2四半期以来、最低の数字を記録しました。
上図のとおり、年間の金需要量が4,000トンを下回ったわけですが、これは2009年以来、11年ぶりの出来事です。
個人的には2020年は金価格は大きく上昇したので、この結果はちょっと意外でした。
需要の内訳をみると、コロナ禍において最も大きな実需である宝飾(薄緑:Jewellery)が大きく落ち込む一方、現物の裏付けのあるETF(濃紫:ETFs and similar products)の需要が2019年と比べて著しく伸びたことが分かります。
あとは2019年に大きく金を買い越した中央銀行(ピンク:Central banks and other inst.)も、2020年は買い控えたことも見て取れます。
各セクターの動きは下記のとおりです。
宝飾品の需要は引き続きかなり低調
第4四半期の宝飾品の需要は515.9トン(前年同期比13%減)でした。
通年では1,411.6トン(前年比34%減)で単年での過去最低を更新しています。
コロナの影響(ロックダウン、不景気による収入減)に加え、金価格の高騰が消費者マインドに影を落としました。
インゴットや金貨の需要は堅調
対照的にインゴットや金貨(Gold Bar/Coin)への投資は堅調で、第4四半期は前年同期比10%増、通年では前年比3%増の896.1トンとなりました。
前述のとおり、西側諸国の底堅い需要に加え、中国とインドが年後半に持ち直したことが要因です。
とはいうものの、過去10年間の平均(1,199.5トン)と比べると、かなり弱い水準でした。
ゴールドETFは四半期ベースでは純流出も通年では最高を記録
ゴールドETFは第4四半期では130トンの純流出となりましたが、通年では877.1トンを積み上げ、過去最高を記録しました。
目先では弱含んだ金価格とゴールドETFですが、金利動向次第では来年以降も堅調なパフォーマンスを見せてくれると個人的には期待しており、今後も引き続き保有継続していきたいと考えています。
中央銀行は今四半期は買い越しに戻る
第3四半期は12トンの売り越しとなった中央銀行も、今四半期は44.8トンと若干ですが買い越しに戻りました。
ただ、下半期の鈍い動きにより、通年での買い越しは273トン(前年比59%減)と2019年からは大きく落ち込みました。
ゴールドETFホルダーとしては、2019年ほどではないにしても、来年以降は中央銀行にはもう少し積極的に金を買っていってほしいところです。
工業分野の需要は弱含みも改善の兆しもみられる
次に工業分野の需要ですが、こちらは通年で前年比7%減の301.9トンとなりました。
とはいうものの、第4四半期中には前年同期比で若干ですが需要が伸びていますので、今後コロナの影響が払拭されるに伴い、需要が伸びていくことを期待したいところです。
2020年の金の供給量は4,663トンで前年比4%減
最後に供給サイドの状況ですが、2020年通年での供給量は、年初からのCovid-19の影響もあり、前年比4%減の4,633トンとなりました。
この数字は2013年以来最大の減少幅ですが、主な要因はコロナによる生産活動への影響によるものです。
一方、都市鉱山等からのリサイクルによる金の供給量は前年比で1%増加しており、通年では1,297.4トンの供給がリサイクルで賄われました。
コロナの影響で大きく需要が落ち込んだとは結果、2020年の金需要が3,760トンだったことを考えると、2020年はかなりの供給過多になったわけですが、それでもここまで金価格が上昇したことは興味深いですね。
来年以降、例年のようにより需給関係がタイトになった場合、金価格にどのような影響が出てくるか、注意深く見守ってみたいと思います。
まとめ:金に投資をするならGLDMかGLDがおすすめ
ここまでをご覧になり「私も実際に金に投資してみたい!」という方は米国市場で取引されている金ETFのGLDもしくはGLDMを購入することをお勧めします。
各ETFの特徴は以下のとおりです。
一言で言えば、GLDが世界最大のゴールドETF、GLDMが最安コストのゴールドETFと言ったところでしょうか。
私自身は経費率が低いことと、最低取引金額が小さいことから、GLDMに投資しています。
以上、最近の金市場の動向についての考察でした。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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