【スマートベータ】時価総額加重インデックスを超える運用は可能か?【ランダムウォーカー】

投資戦略・方針

投資業界における必読書のひとつに「ウォール街のランダム・ウォーカー」があります。

同書はS&P 500に代表される時価総額加重インデックスへの投資の有効性を説いた歴史的名著で、インデックス投資家のバイブルと言える良書です。

最新の第12版ではスマートベータ戦略やレイダリオのオールウェザー戦略についても語られており、改めて学ぶべき内容が拡充された印象です。

本日はそんな「ウォール街のランダム・ウォーカー(以下『ランダムウォーカー』)」を参考にしつつ、スマートベータ戦略について考察してみたいと思います。

結論:マルチファクターとモメンタムは試す価値あり

結論としては、マルチファクターのスマートベータは、単純なインデックス並みのシャープレシオを維持しながら、若干の超過リターンを記録しているとランダムウォーカーでは述べられています。

これは同程度のリスクで超過リターンが得られていることを意味し、いくつか留意点はあるものの一般論としてマルチファクターのスマートベータは試す価値があるといって差し支えないかと思います。

また、モメンタムファンドも他の主要なスマートベータや市場平均との相関が低いことから、ポートフォリオに加えることは有効だと考えられます。

そもそもスマートベータとは?

スマートベータには明確な定義はありませんが、パッシブ運用をベースにしたアクティブ運用という理解でよいかと思います。

ランダムウォーカーのなかでは以下のように説明されています。

スマート・ベータ戦略は、アクティブ運用の一種である。

しかし、銘柄選択で勝負する、通常のアクティブ運用とは異なる。

過去に市場平均よりも高いリターンをあげた、いくつかのファクター特性を持つ銘柄群中心に組み入れるタイプのアクティブ運用なのだ。

スマート・ベータ運用は、通常のアクティブ運用に比べて非常に経費率が低いことが強みだ。

バートン・マルキール. ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理 (日本経済新聞出版)

スマートベータは個別銘柄を分析・選択し、運用を行う通常のアクティブ運用とは大きく異なります。

詳細は後述しますが、過去に市場平均を上回る傾向のあったファクターに着目し、それらの比重を通常の時価総額加重よりも高めた(もしくはそれらの特性に合致する銘柄群だけを選別した)運用を行うわけです。

このフィルターと比重のかけ方次第で、ほぼインデックスと同じような特性を持つこともあれば、一般的な時価総額加重とは大きく異なる特性を持つポートフォリオになることもあります。

一例として高配当株ETFで言えば、VYMは比較的インデックス寄りの特性を有しており、前者に分類されると思いますが(したがって機関投資家が投資対象としやすく時価総額も極めて大きい)、SPYDは極めてインデックスから乖離した性格を有しており後者に分類されるかと思います。

スマートベータETFについては過去の市場のパフォーマンスを分析(データマイニング)することで、市場平均を上回ったファクター(もしくはその組み合わせ)を発見し、その傾向が今後も続くという前提のもと、当該戦略に基づいた運用をする商品として組成されることが一般的です。

したがって、バックテストによると株式と債券とゴールドに分散していた人は過去90年近くほぼ無傷だったらしい、という情報を得て、それに基づいて投資をしている私のような人の発想と(バックテストが根拠という意味で)根本的には大差はありません。

スマートベータ戦略を実行するに際しては、それがどの部分で『スマート』であろうとしているか(アセットクラス、国、通貨、バリュー/グロース、モメンタム、小型株/大型株、ボラティリティ、財務健全性など)をよく理解したうえで、自分がどれだけ時価加重インデックスから乖離することを許容できるかを踏まえて判断するべきかと思います。

判断基準はシャープレシオ

次にスマートベータが何を目指しているかですが、基本的にはシャープレシオの改善に主眼が置かれます。

シャープレシオは下記の数式で表され、簡単に言えばリスク・リターンの効率性を表す指標です。

シャープレシオ=(総リターン-無リスク金利)÷リスク(総リターンの標準偏差)

シャープレシオが高いほど、同じリスク量に対して得られるリターンが大きいということになり、投資効率の観点から優れた投資対象と考えることができます。

例えばリターン7.5%・リスク10%のA、リターン10%・リスク20%のBという2つの投資対象について考えてみましょう(無リスク金利は0%と想定)。

投資対象リターンリスクシャープレシオ
A7.5%10.0%0.75
B10.0%20.0%0.50

この場合、Aのシャープレシオは、(7.5%-0%)/10%=0.75となります。

一方、Bのシャープレシオは、(10%-0%)/20%=0.5となります。

したがって、絶対リターンが高いBよりもシャープレシオの高いAの方が優れた投資対象と判断されるわけですが、これはプロの投資家が絶対リターンを諦めているということではありません。

シャープレシオが高いものに関してはレバレッジをかけることで、リスク量を一定にコントロールしつつ、リターンを高めることができるからです。

例えば、上記でAに2倍のレバレッジをかけると、リスクとリターンは倍になります(単純化のため借入コストは無視)。

すると、Aは20%のリスクに対して15%のリターンを生み出すことになり、Bと同じリスク量(20%)でありながら、Bの1.5倍のリターンが期待できる投資対象と考えることができるわけです。

このようにプロの投資家は常に効率のよい投資対象を探し、それにレバレッジを組み合わせることで、リスク量をコントロールしつつ、リターンを高めようと日々努力しているわけです。

しかしながら、我々個人投資家がレバレッジを自在に駆使して運用することは現実的ではないので、この点は留意する必要があろうかと思います(つまり、プロにとって優れたスマートベータ戦略も、レバレッジを使えない我々にとっては最適なオプションとは言えない可能性がある)。

代表的な4つのスマートファクター

話をスマートベータに戻すと、過去に市場平均を上回る傾向が見られたファクターとして代表的なものは以下の4つです。

  1. バリュー
  2. 小型株
  3. モメンタム
  4. 低ボラティリティ

1.バリュー

1967年を起点に、PERが低い順に同じ銘柄数のファンドを10個作り、毎年それを組み替えていくと、PERが最も低いグループが最も高いリターンを記録し、PERが高くなるにつれてリターンが低下する結果になっています。

上記以外でも、PBR、キャッシュフローや売上などの指標が株価に対して割安な銘柄群についても、多くの実証研究にて有効性が確認されています。

ただ、低PERも低PBRも市場がリスクを織り込んでの結果だということを忘れてはいけません。

例えばリーマンショック後のバンカメやシティバンクなどは異常な安値がついていましたが、これは彼らが国有化されるリスクが現実味を帯びていたからで、もしそうなっていれば株券が紙くずになったため、上記のような結果は得られていなかった可能性があります。

2.小型株

長期で見ると小型株は大型株をアウトパフォームしているということもよく知られています。

ただし、小型株は当然ながら大型株よりもリスクが高く、これは市場が非効率であるというよりも、小型株に対して超過的なリスクを取ったことに対するリターンと解釈することもできます

また、長期に亘って生き残ることのできた小型株の「生存者バイアス」による結果と解釈することもでき、これらの点には注意が必要です。

3.モメンタム

これまでの研究の結果、株価の動きは完全なランダムウォークではなく、短期では『モメンタム』が存在し、長期では『平均への回帰』が認められることが分かっています。

モメンタム効果は、通常直近月を除く最近12カ月の平均リターンによって計測される。

直近月を除くのは、相場はしばしば反転するからである。具体的な計測法は、対象期間中に最も高いリターンをあげた上位30%の銘柄群と、最も低いリターンに終わった下位30%銘柄群の、平均リターンの差をとるのだ。

上位30%を買い、下位30%を空売りする戦略の、1927年から2017年にかけての差の長期平均値は9.2%、シャープ・レシオは0.58だった。

どちらの数値でみてもベータ・ファクターを重視した運用よりも高いものになっている。

バートン・マルキール. ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理 (日本経済新聞出版)

つまり、株価が上がっているものを買い、株価が下がっているものを空売りすることで超過リターンを得られるという研究結果があるということです。

ただ、上記の研究では取引コスト(売買手数料や空売りのコスト)、税金などは一切考慮されていない点は注意が必要です。

4.低ボラティリティ

これは前述のシャープレシオのところで説明した概念とほぼ同じです。

本来はリスク量(ベータ)に対応してリターンが高くないと意味がないわけですが、実際には米国を含む主要市場において、ベータと実現リターンの関係は比較的フラットであることが分かっています。

したがって、市場平均と同程度のリターンが期待できる低ベータ(=低ボラティリティ)の銘柄を集めれば、それにレバレッジをかけることで市場と同じリスク量で超過リターンが得られるわけです。

この理屈に則り、低ボラティリティの銘柄を集めた戦略に取り組んでいる投信やETFもあり、後述のとおり、シャープレシオ改善の観点からは効果が確認できているようです。

研究結果と現実の乖離

研究結果としては前述の4つのファクターには優位性があるわけですが、現実的には各単一ファクターのETFでは望むような結果は得られていません。

下記が各ファクターに基づいたファンドのパフォーマンスを市場インデックスファンドと比較したものです。

各ファンドの創設来の数字となっているため、期間にバラつきがあることには注意が必要ですが、上記のとおり、リターンの観点ではバリュー株ファンドだけが市場平均と同等の結果を残しています。

シャープレシオでは低ベータだけが市場平均を上回っていますが、リターンではかなり劣後する結果となっています。

実在するファンドで期待される結果が実現されていない要因はいろいろあるかと思いますが、研究においてショート(空売り)を想定していたり、銘柄入替に伴う売買手数料や税金が考慮されていなかったり、といったことが主な理由ではないかと想像します。

したがって、少なくともこれまでの歴史を振り返ると、単一ファクターに基づくスマートベータは全体として超過リターンは生んでいないというのがランダムウォーカーの結論となっています。

マルチファクターのカギは互いの相関性

単一ファクターではあまり効果が確認できていないスマートベータですが、複数のファクターを組み合わせたマルチファクターのスマートベータでは若干話が変わってきます。

上記は上述の4つの単一ファクターについて、互いの相関係数と、運用シミュレーション結果です(単一ファクターの運用シミュレーションはロング・ショート戦略に基づいているため、前述のとおり注意が必要)。

相関係数について見てみると、モメンタムは市場ベータ・サイズ・バリューのいずれに対しても負の相関があることが分かります。

つまり、モメンタム要素をポートフォリオに取り込むことで分散効果が期待できることが分かります。

実際に市場ベータ・サイズ・バリュー・モメンタムの単一ファクターファンドにそれぞれ25%ずつ分散投資を行う「分散ポートフォリオ」においては、分散効果からシャープレシオが最も高くなっていることが分かります。

個人的にはモメンタムにかなり高い分散効果が期待できそうなので、今後ポートフォリオにモメンタム系のETFを加えることを検討したいと思います。

※相関係数の重要性は以前記事にまとめていますので、興味のある方はこちらもご覧ください。

所感:モメンタム特化のETFの組入を検討したい

私自身のポートフォリオを見ると、配当利回りを気にしていることもあり、基本的にはバリュー寄りの構成になっています。

そして、バリューを志向する投資家の性質として、私自身も多分に漏れず、モメンタムやグロースへの比重が軽くなっている感は否めません。

今回、ランダムウォーカーを久しぶりに読み返してみて、モメンタム投資の秘めたる有効性に気づかされました。

既存のポートフォリオとのバランス上もモメンタム特化のETFを組み入れることは理にかなっていますので、今後、モメンタムETFを組み入れることを視野にリサーチを進めたいと思います。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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