少し前ですが、年初にレイダリオ氏が長尺のインタビューに応じており、その内容がなかなか網羅的で興味深いものでした。
英語のまとめサイト等では、インタビューのキーポイントが『レイダリオ氏:投資家へ8つのアドバイス』的なノリでまとめられていましたので、当ブログでもそれらを参考にまとめてみました。
助言①:資産価値は購買力ベースで判断すべき
一般的に投資家は米ドルや日本円などの自らが基準とする通貨ベースで資産を評価しますが、これは正しくないとレイダリオ氏は述べています。
例えば、見かけ上はドル建の評価額が増えていたとしても、それでよしとするのではなく、購買力ベースで資産価値を判断するようにしなければならないと言います。
そのようにしないと特に現金を保有することのリスクを正しく認識できないため、大きな判断ミスを犯しかねないというわけです。
もし名目上は変動しないという理由から現金はノーリスクというマインドセットのままいると、現在のような高インフレ環境だと大きな不利益を被ることになりかねないので、みんな意識を変えた方がいいよ、とアドバイスしてくれているわけですね。
助言②:現金と債券の保有は避けた方がよい
債券を保有することは実質ベースでマイナスのリターンを確定させることと同義なので好ましくないし、現金は更に悪い投資対象だとレイダリオ氏は言います。
一つ目のアドバイスと重複しますが、我々は名目リターンだけを見て、安全でない投資対象を安全だと誤解することがないようにしないといけません。
コロナショック以降、各国で行われた未曾有の量的緩和によって、世界中の投資家の名目上の資産は膨れ上がりましたが、これは結果として現在の高インフレを招くこととなりました。
賢明な投資家として、インフレが通貨の実質的な価値を逓減させていくことを忘れないようにしたいですね。
助言③:値上がりした市場=優れた投資対象ではない
これはレイダリオ氏からのシンプルなアドバイスです。
投資家は往々にして直近のパフォーマンスがよい(=値上がりしている)ものを優れた投資対象と考えるが、実際にはそれらはより高くなってしまった(=期待リターンが下がってしまった)と考えるべきだというものです。
近年では、中国株やNASDAQのハイパーグロース株などが一時期、目覚ましいパフォーマンスを記録していましたが、このように高リターンを記録した投資対象に後追いで投資することは賢明ではないということですね。
助言④:高くなったものを売り、安くなったものを買うべし
この流れでレイダリオ氏は次のアドバイスをくれています。
『もし何かが大きく値上がりし、一方で何かが大きく値下がりしたならば、値上がりした方を売り、値下がりした方を買い増すことでリバランスすべき』というものです。
パッシブ運用の定石ですが、こうすることでポートフォリオのバランスが整い、適切な分散効果を維持できるというわけですね。
アクティブ運用をしている場合には話は変わってくると思いますが、そうでなければこの点においては常に基本に忠実であるべきということでしょう。
助言⑤:売買タイミングを計るべきではない
市況を見て売買のタイミングを計ることでリターンを押し上げようとしたくなるのが人の常ですが、それはやめておけとレイダリオ氏は明確にアドバイスしてくれています。
単純な話で、個人投資家でそんなことをして長期的に超過利益を出せる人はまずいないからです。
機関投資家の世界を知らない個人投資家は、なかなか実感を持ってこのアドバイスを受け止めることができないかもしれませんが、レイダリオ氏は以下のように述べています。
『マーケットは機関投資家が支配しているが、機関投資家の一例として、ブリッジウォーターをあげよう。我々は1,600人の極めて優秀な従業員を抱え、毎年、何百億円もの資金を投じて、市場平均を上回るリターンを上げようとしているが、それでも超過利益を生み出すことは困難なことだ。』
フルタイムで市場分析をすることもできず、機関投資家が活用するような外部サービスを利用することもできないような個人投資家が、機関投資家が支配する市場に乗り込んでいって、彼らの平均リターンである市場平均を上回ることができると考えるのは、現実を知らなすぎるし、妄想が過ぎるということですね。
助言⑥:ビットコインの非合法化はあり得る
歴史を振り返れば、金や銀は個人の所有が非合法化された時期があります。
レイダリオ氏はビットコインにも同じことが起きる可能性はあると言います。
ただ、レイダリオ氏はビットコインを全面的に否定しているわけではありません。
以前には、一定程度ビットコインのポジションを持っていることは明かしていますし、ビットコインのシステムとビットコインが10年以上の時の試練に耐えて成長してきたことには感銘を受けているとも述べています。
ただ、最悪の場合には各国政府が動いてビットコインが無価値になる可能性は頭の片隅に置いておいた方がよさそうです。
助言⑦:インフレヘッジになる資産を保有すべき
レイダリオ氏は長い目で見れば、インフレヘッジになる資産がよりよいリターンをもたらすだろうと述べています。
恐らくは、70年代のような高インフレ環境下では株式も債券も実質リターンを生み出せない可能性があることを念頭に置いての発言でしょう。
下記のとおり、インフレが高まった1969~1977年を見てみると、株式・債券・現金のいずれの名目リターンもインフレ率(年率6.4%)を下回り、実質リターンはマイナスでした。
以前はゴールドがインフレヘッジの代名詞的な存在でしたが、現在はビットコインや他の暗号資産がゴールドとマーケットシェアを奪い合っている状況です。
ですので、場合によってはゴールドがかつてほどはインフレヘッジとして機能してくれない可能性も頭に入れておいた方がよいかもしれません。
助言⑧:最悪のシナリオで役に立つ資産を保有すべき
調子がいい資産クラスに集中したくなる気持ちは分かるが、常に最悪のシナリオを想定し、そのような状況で助けになるアセットを十分に保有すべきというのがレイダリオさんの最後のアドバイスです。
具体的に何が最悪の状況なのかは言及がありませんが、一般論としては株式と債券が両方ともダメな状況(景気減速時の利上げ局面など)かと思います。
要はスタグフレーションを懸念しているのでしょう。
そのような苦しい状況において、我々を助けてくれる可能性がある資産として、レイダリオ氏は下記を例示しています。
・ゴールド
・ビットコイン
・物価連動債
・海外資産
ゴールドと物価連動債はインフレヘッジの代表格として挙げられているのでしょう。
ビットコインもゴールドの代替資産としての位置づけからの言及だと思います。
最後の海外資産(ここでは米国外の資産という意味)は、今後ドルが価値を失っていくことと、近年好調すぎた米国株式市場のパフォーマンスが今後鈍ることをレイダリオ氏は想定しているからだと個人的には理解しています。
まとめ:債券と現金は避けつつ、複数の資産・国に分散投資すべし
まとめてみると、債券と現金の保有は避けつつ、株式・ゴールド・暗号資産・物価連動債などに広く分散して投資するのが正解ということになるでしょうか。
株式については、米国一極集中は避けて、国際分散投資が推奨されているようです。
リスク回避の姿勢が強まるであろう投資環境において、ビットコインのようなボラティリティの高い資産がヘッジとして機能するのかは私には分かりませんが、レイダリオ氏のコメントからビットコインをはじめとする暗号資産も推奨資産のひとつと言ってよいのでしょう。
物価連動債については、私も投資していますが、2021年後半から高利回り化が止まらず、ある意味お宝ポジション的な存在になってくれています。
今後も高インフレが継続すればするほど、物価連動債からのインカムは増えていくので、どうなるか楽しみにしています。
後はレイダリオ氏の代名詞的な存在、ゴールドも当然ながら一定程度保有することが推奨されていると解釈するべきでしょう。
個人的には上記以外にもインフレヘッジとしての役割も期待でき、過去のリターンもよい不動産(米国REIT)もポートフォリオに組み入れる価値はあるのではないかと思っております。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
コメント