【レイダリオに学ぶ】バブル銘柄の崩壊!米国市場と新興テック株の現状について【年初からの変化】

投資戦略・方針

レイダリオ氏が2022年5月3日付でLinkedInに「The Popping of the Bubble Stocks: An Update」というタイトルの記事を公開しています。

ダリオ氏は以前より株式市場がバブルかどうかを見極める基準として6つの項目を挙げつつ、その時々の米国市場について意見を述べています。

今回は年初から大きく状況が変わった米国市場をレイダリオ氏がどのように見ているのか、下記LinkedInの記事を参考にまとめました。

The Popping of the Bubble Stocks: An Update
The latest readings from the “bubble indicator.” As you know, I like to convert my intuitive thinking into indicators wh...

バブルを見極める6つの基準

レイダリオ氏はバブルかどうかを判断する基準として下記6点を挙げています。

  1. 現在の株価が伝統的な株価指標でどの程度の水準にあるか
  2. 株価は持続不可能な条件を織り込んでいるか
  3. 新規参入者がどの程度市場に入ってきているか
  4. 市場参加者は全体としてどの程度強気か
  5. 高レバレッジでの資金調達が買いを支えているか
  6. 投機目的もしくは価格上昇へのヘッジとしての先物買いがどの程度行われているか

ブリッジウォーターでは検討する投資対象のすべてを上記6項目で評価しており、それらを合計することで市場全体の評価も行っています。

※各項目の詳細については下記記事をご参照ください。

年初から5月までの市場動向

レイダリオ氏が前回市場についての意見を述べたのは2022年1月のことで、その時点では同氏は市場を下記のように認識していました。

  1. 米国株式市場は全体としてバブルに差し掛かっているが、著しいバブル状態とは言えない(1920年代後半及び1990年代後半に記録した過去最高のバブルとの比較では70%程度)
  2. 新興のテック企業(TeslaやRokuなど)は明らかに著しいバブル状態にある
  3. SPAC・IPOブーム・オプション取引の急増など、バブル的な投資行動がコロナ対策によって供給された過剰流動性によって支えられている(そして、これらが市場をよりバブル的な状態にしている)

レイダリオ氏は当時、個別銘柄を分析し、バブル状態にあると評価された銘柄を「Bubble stocks(バブル銘柄)」と名付けて、これらの銘柄をモニターする独自のインデックスを作っています。

※このインデックス自体やどの銘柄がバブル銘柄に特定されたかは開示されていません。

年初から3月末までの市場を見てみると、S&P500がおおむねフラット(▲3~4%程度)だったのに対して、バブル銘柄の多くは30%以上下落しました。

それに伴い、ロビンフッド族などに代表される個人投資家のバブリーな投資行動が抑制されると同時に、市場参加者の心理にも変化が起きており、レイダリオ氏は以前は明らかにバブル状態だったバブル銘柄も、もはやそういった状況にはないように思われると述べています。

しかし、同時にこれらの銘柄が極端に割安になっているとも感じておらず、この点には注意を向けるべきだと述べています。

バブル後は極端な割安水準まで市場が振れることが多い

バブル崩壊後に市場が落ち着くには時間がかかることが多く、典型的なパターンとしては逆側に極端に振れる(=過度に割安な水準まで売り込まれる)ことになります。

過去を振り返ると、1929年のバブル崩壊(大恐慌)では2年を要し、90年代後半のテックバブルでは1年ほどかかりました。

つまり、極端なバブル状態ではないということは、今が安全な投資タイミングであるということや、よい買い場であるということは意味しないのです。

実際、ブリッジウォーターでは独自指標に基づき、米国株式市場は全体としてまだ買われ過ぎの水準にあると判断しています。

バブルが崩壊に向かうと、多くの場合において、価格は適正水準を通り過ぎ、過度に下方修正されることを踏まえると、今が買い場だ!とはまだ強く言えないわけですね。

過去のバブル(大恐慌・テックバブル)との比較

ここから先はブリッジウォーターの独自指標(バブル指標)による市場分析です。

下記のチャートは1900年から現在までの米国市場のバブル指標の推移ですが、1920年代と1990年代のバブル時には100%に到達した指標が、現在は40%程度になっています。

市場全体で見たときには比較的落ち着いた状況になってきているのかな、という印象です。

一方、前述のバブル銘柄はどうでしょうか。

下図は2015年以降のバブル銘柄の指標の推移ですが、すでに通常のレベルまで戻っているようです。

また、下記のとおり、2020年からのS&P500とのトータルリターンの比較でも、2021年末から急激に差が縮まってきていることが分かります(左図)。

直近1年間のリターン(右図)を見てみても、2021年のピークから大きく下落してきており、S&P500がプラス圏にとどまるなか、バブル銘柄は2022年初頃からマイナスリターンに沈んでいます。

次に現在のバブル銘柄を過去のバブル(1920年代・1990年代)と比較したものが下記のチャートです。

左側が金利と株価を組み合わたもの、右側がマージンデット(証拠金債務)とコールオプション取引量を組み合わせたものです。

いずれのケースでも似たような動きになっており、下記のようなメカニズムが見てとれます。

  1. まず金融緩和(金利低下)が株価を押し上げる
  2. レバレッジ(借入・オプション)により価格が更に押し上げられる
  3. 金融引き締め(金利上昇)がバブルを弾けさせる(価格下落が金利上昇に遅れることも多々ある)

これらは金融市場の典型的な動きであり、真新しいものではありませんが、レイダリオ氏はこのクラシックな動きが今回のバブル銘柄にも見られており、今まさにこのセグメントの銘柄たちのバブルが金融引き締めによって崩壊していると述べています。

米国市場・新興テック株ともにバブルからは脱している

レイダリオ氏はブリッジウォーターの独自指標から米国株式市場・新興テック株ともに現在はバブルから脱したことが示唆されていると述べています。

下図は左から、狂騒の20年代・ドットコムバブル・リーマンショック・2022年1月(米国市場)・2022年1月(新興テック株)・現在(米国市場)・現在(新興テック株)の状況を各指標ごとにまとめたものです。

赤字のBubble/Frothyがバブル状態に該当しますが、現在は米国市場・新興テック株ともにほぼすべての指標がDeflatingとなっており、各指標が下落トレンドにあることが分かります。

ブリッジウォーターによる各指標の現状分析は以下のとおりです。

基準①:伝統的な株価指標での評価

ブリッジウォーターでは現在の価格水準は50パーセンタイルのところにあると評価しています。

過去との比較においては、高くはないけど安くもない、といった水準でしょうか。

基準②:株価は持続不可能な条件を織り込んでいないか

この指標は、株式が債券を上回るリターンを出すために必要な利益成長率を計測したものです。

現在の米国市場は60パーセンタイルのところにあると評価されています。

これは他の指標よりも高い水準であり、株価に織り込まれている利益成長については、まだ若干高い水準にあると言えます。

レイダリオ氏はこの傾向は特にソフトウェア企業について顕著であると述べています。

アナリストによる利益成長(EPS)と予想PERは、年初から下がってきてはいるものの、過去との比較においては依然として高い水準にあることが分かります(下図)。

基準③:新規参入者の状況

市場への新規参入を指標化したものですが、2020年にはこの指標は90パーセンタイルを記録しています。

コロナによるロックダウン・現金給付→ロビンフッド族の発生という流れで、当時は個人投資家が市場に大挙して押し寄せていたからです。

一方、現在ではこの指標は40パーセンタイルを下回る水準と落ち着きを見せており、コロナ以前の平均的な水準まで戻っています。

基準④:市場のセンチメント

直近では80パーセンタイルを超えたこの指標も、現在は20パーセンタイルを下回る水準となっており、相当弱気に傾いています。

90年代と過去10年の推移を見ても、現在は過去最低水準であり、個人的にはこの指標からはそろそろ買い場が近づいている雰囲気が感じられます。

基準⑤:レバレッジはどの程度まで高まっているか

この指標は、オプション取引やマージンデットの状況を見ているものですが、現在は50パーセンタイル付近であると評価されています。

過去との比較で低い水準とは言えませんが、逆に特に高いわけでもなく、通常のマーケットの状態と言えるのではないでしょうか。

基準⑥:先物買いがどの程度行われているか

こちらの指標は40パーセンタイルほどで、他の指標と同等と評価されています。

5月に入ってからの更なる株価下落でバブル感はより失われた

レイダリオ氏はまとめとして現在の株式市場について以下のように述べています。

・それなりの株価下落はあったが、市場が織り込んでいる利益成長は過去と比較して依然高い水準

・バブル崩壊時には、株価は適正水準を超えて、過度に売り込まれることが多い

レイダリオ氏が記事を投稿した5月3日から5月13日までにS&P500は更に4%弱下げており、2022年1月に記録した過去最高値からの下落幅はもう少しで20%に届こうかという状況です。

したがって、本記事にて述べられていることを本日時点の株式市場に当てはめると、バブル感はより失われたと考えてもよいのではないでしょうか。

個人的にはこれからもまだまだ資金を投下していくフェーズにあることから、レイダリオ氏の言う通りここから市場が過度に売り込まれてくれると有難いですが、果たしてどうなるでしょうか。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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