本日は、本家ダリオこと、レイ・ダリオ氏が事あるごとに強調している「Diversification(分散投資)」ですが、なぜ分散投資が重要なのか、同氏の過去のインタビューや著書を基に整理してみました。
結論:分散投資によって期待リターンに対するリスク量が低減される
結論としては、適切な分散投資によって同じリターンを低いリスクで実現できるからです。
投資の失敗は大きな値動きによって、多額の含み損を抱えてしまい、それに経済的もしくは精神的に耐えられなくなることで、損失を確定し、マーケットから退場することで起きてしまいます。
つまり、リスク(=値動き)を自分の許容量以下に抑えることができれば、投資に失敗する可能性を著しく下げることができます。
この発想に基づいた投資戦略こそが、レイダリオ氏が推奨する「オール・シーズンズ戦略」であり、この投資戦略の根幹となる考え方が「Diversification(分散投資)」ということになります。
*もし「オール・シーズンズ戦略」をご存じでない方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。私も5年前に知っていたら人生が変わったと思うくらいの、万人が知っておくべき内容です。
相関性が低い投資対象を組み合わせることでリスクが大きく軽減される
「適切な分散投資」とは相関性が低い投資対象を組み合わせることです。やみくもに投資対象の数を増やすことは正しい分散投資とは言えません。
下記グラフをご覧ください。これは、レイダリオ氏が「Holy Grail of Investing(投資の聖杯)」と呼ぶほど、重要な考え方が濃縮されているものです。

上表では、期待リターン・リスクともに10%の投資対象を想定し、それぞれの相関性が60%~0%だった場合に、新たな投資対象を加えることでどの程度リスクが軽減されるかを数値化したものです
ここで重要な点は、期待リターンはすべての投資対象で10%なので、全体として期待できるリターンは10%のままにも関わらず、リスク(=リターンのぶれ幅)が低減されているということです。
相関が低ければ低いほど、そして組み合わせる投資対象の数が多ければ多いほど、リスクが大きく低減されていますが、より重要なのは投資対象の数よりも互いの相関性であることが分かります。
特に強調したいのは相関ゼロの投資対象をポートフォリオに1つ加える方が、相関性60%の投資対象100個に分散投資するよりも、リスクが低減されるという点です。
株式同士は一般に高い相関性を持ちますので、このことは株式以外のアセットをポートフォリオに加えることの有効性を示唆しています。
株式との相関が低い資産クラスは原油・金・国債
分散投資のコンセプトが分かったところで、実際の各資産やセクターの相関性を見てみましょう。
ここではBespoke Investment Group社が出している相関関係一覧表を参照したいと思います。
まず、ちょっと古いデータではあるものの、長期間のデータとして、1990年~2008年までの各セクター・アセットの相関係数を示したテーブルを見てみましょう。

一番左の列を見てみると、S&P 500に対して、Oil・Gold・10年国債あたりがほぼ相関なしといえる結果になっています。あとは、新興国株(Emer. Mkt)の相関係数も0.34と比較的低い水準になっています。
次に近年の傾向として、2017年の単年でのデータを見てみましょう。

Oil、Gold、Long BondはS&P 500に対して相関がほぼゼロもしくは逆相関となっていますので、過去から傾向は変わっていないことが分かります。
最後にリーマンショック時(2007年10月~2009年3月)に株式市場が大きく値を下げた時に、それぞれのセクター・アセットがどのような相関性を示したかを見てみましょう。

ここでもS&P 500との相関性が低い投資対象は、Oil・Gold・長期国債で変わっていませんので、下落相場においてもこれらのアセットに分散投資をすることで、リスクが低減されることが確認できました。
まとめ:株式と債券を超えた投資こそが期待リターンに対するリスクを最小化する
やはりレイダリオ氏が勧めるように、株式に長期国債・金・コモディティを組み合わせたポートフォリオは、互いの相関性が低いことから、リスクを大きく低減してくれることが分かりました。
分散投資における最も重要な点は、投資対象の数を増やすより、いかに相関性が低い投資対象をポートフォリオに加えられるか、が鍵になるということです。
これを実行するには、株式と債券を超えたポートフォリオを構築していく必要があります。
具体的には金とコモディティですね。
本日の記事では「オール・シーズンズ戦略」の有効性がまたひとつ確認されました。
個人的にも、これからも「オール・シーズンズ戦略」をベースとしたポートフォリオを構築することで長期的に安定的な運用を実現していきたいと思います。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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