【レイダリオに学ぶ】投資の聖杯!分散投資の重要性と低相関の資産クラスについて

オール・シーズンズ戦略

本日はレイ・ダリオ氏が事あるごとに強調している「Diversification(分散投資)」について、なぜ分散投資が重要なのか、同氏の著書『Principles 人生と仕事の原則』と、同氏の過去のインタビューを参考に整理してみました。

低相関の投資対象を組み合わせることでリスクが大きく軽減される

分散投資と聞くと、とにかく投資対象の数が多ければ多い方がよいと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、実際には分散投資においては低相関の投資対象を組み合わせることが何よりも重要であり、やみくもに投資対象の数を増やすだけでは期待した分散効果が得られない可能性があります。

下記グラフは前述の『Principles 人生と仕事の原則』に掲載されているものですが、これはレイダリオ氏が「Holy Grail of Investing(投資の聖杯)」と呼ぶほど重要なものです。

この図では単純化のために、期待リターンとリスクがともに10%の投資対象を想定し、それぞれの相関が0~60%だった場合、新たな投資対象をポートフォリオに加えることでどの程度リスクが軽減されるかを数値化しています。

ここで重要な点は、期待リターンはすべての投資対象で10%なので、ポートフォリオ全体の期待リターンは10%のままにも関わらず、リスクが低減されるということです。

つまり、分散投資によって、リターンは下げずに、リスクだけを下げることが可能なのです。

相関が低ければ低いほど、そして投資対象の数が多ければ多いほど、リスクは低減されていますが、より重要なのは投資対象の数よりも相関係数であることが分かります。

一般に同じ資産クラス内の投資対象は高い相関を持ちますから、このことは複数の資産クラスにまたがるポートフォリオを構築することの有効性を示しています

レイダリオ氏『やるべきことは単純』

著書『Principles 人生と仕事の原則』と上記YouTubeでレイダリオ氏が語っている内容を踏まえ、私なりに要点をまとめてみました。

各資産クラス内の投資対象はおおむね60%程度の相関がある

・60%の相関を想定すると5銘柄以上に投資をしても分散効果はほとんど得られない

相関ゼロの投資対象をポートフォリオに1つ加える方が、相関性60%の投資対象100個に分散投資するよりも、リスクが低減される

・したがって、単一の資産クラスへの投資では分散投資の恩恵を十分に受けることは難しい

・具体的には、期待リターンとリスクがともに10%の投資対象1つに投資する場合、リターン・リスクレシオは0.25、単年で損失を被る確率は40%

・ところが個別のリスク・リターンが同じでも、相関が0%の投資対象を15ほど組み合わせれば、リターン・リスクレシオは1.25に上昇(=リスク量あたりのリターンが5倍に増加)し、単年で損失を被る確率も11%まで下がる

・往々にして人々は唯一最高の投資対象を見つけることに熱中するが、現代の効率的な市場において、単一の投資対象が他の投資対象と比較して、5倍ものリスク・リターン比を持つことは考えられない

・したがって、やるべきことは、15~20の低相関で優れた投資対象を見つけ、それらにバランスよく、適切なレバレッジをかけて投資すること

株式との相関が低い資産クラスは原油・金・国債

レイダリオ氏の語る分散投資のコンセプトを踏まえつつ、ここからは実際の各資産やセクターの相関を見てみましょう。

今回はBespoke Investment Group社が出している相関一覧表を参照したいと思います。

まず、やや古めではあるものの、長期間のデータとして、1990年~2008年までの各セクター・アセットの相関係数を示したテーブルを見てみましょう。

出典:Bespoke Investment Group(1990~2008年)

一番左の列を見てみると、S&P 500に対して、Oil・Gold・10年国債・日本円・USドルが▲0.1~+0.1程度の相関となっており、ほぼ相関なしといえる結果になっています。

それ以外では新興国株(Emer. Mkt)の相関係数も0.34と比較的低い水準です。

次に近年の傾向として、2017年の単年でのデータを見てみましょう。

出典:Bespoke Investment Group(2017年)

Oil・Gold・長期国債はS&P 500に対して相関がほぼゼロもしくは逆相関となっていますので、過去から傾向は変わっていないことが分かります。

この年はUtilitiesとBitcoinもそれぞれ0.06と0.04という相関になっており、これらの資産への投資でも分散効果は得られたようです。

最後にリーマンショック時(2007年10月~2009年3月)に株式市場が大きく値を下げるなか、各セクター・アセットがどのような相関を示したかを見てみましょう。

出典:Bespoke Investment Group (2007年10月9日~2009年3月9日)

ここでもS&P 500との相関性が低い投資対象は、Oil・Gold・長期国債で変わっていません。

上記3つの期間におけるデータでは、いずれもOil・Gold・長期国債がS&P 500に対して低相関を示しており、いずれの局面においても株式に加えてこれらのアセットに分散投資をすることで、リスクが低減されたことが確認できました。

まとめ:複数の資産クラスにまたがるポートフォリオで期待リターンに対するリスクを最小化する

投資の失敗は、大きな値動きによって多額の含み損を抱えてしまい、それに経済的もしくは精神的に耐えられなくなることで、損失を確定してマーケットから退場することで起きてしまいます。

逆に言えば、リスク(=値動き)を自分の許容量以下に抑えることができれば、投資に失敗する可能性を著しく下げることが可能です。

この点ではレイダリオ氏が推奨する「オール・シーズンズ戦略」は理想的な投資戦略であり、その根幹となる考え方が「Diversification(分散投資)」です。

過去のデータを見てみても、やはりレイダリオ氏が勧めるように、株式に長期国債・金・コモディティを組み合わせたポートフォリオは、互いの相関が低いことからリスクを低減してくれる可能性が高いことが分かりました。

個人的にも分散投資における最も重要な点は、投資対象の数ではなく、いかに低相関の投資対象をポートフォリオに加えられるかであるということを肝に銘じつつ、今後も「オール・シーズンズ戦略」のコンセプトをベースとしたポートフォリオで長期的かつ安定的な運用を行っていきたいと思います。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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