【レイダリオに学ぶ】マーケットのパラダイムシフトについて

投資戦略・方針

本家ダリオことレイ・ダリオ氏は、Linkedinにて不定期に記事を投稿してくれています。

本日は、1920~2019年の米国市場を基に、長期投資に必要な心構えを学ぶことができる「Paradigm Shifts」というタイトルの記事を取り上げ、マーケットのパラダイムシフトについての考え方をまとめました。

元記事:https://www.linkedin.com/pulse/paradigm-shifts-ray-dalio?trk=portfolio_article-card_title

*元記事の分量が半端ないことから、長めの記事になっていますので、時間がない方は最後のまとめだけでも大丈夫です。

パラダイムシフトはどのようにして起こるか?

Identify the paradigm you’re in, examine if and how it is unsustainable, and visualize how the paradigm shift will transpire when that which is unsustainable stops.

Ray Dalio

投資で成功するためには、現在のマーケットを支配しているパラダイムのなかで、持続不可能な要素を理解し、それが維持できなくなったときに何が起こるかを理解しなければならなりません。

過去を振り返ると、マーケットは10年程度の期間に渡り、一定のメカニズムや投資環境(=パラダイム)に基づいて動き、かつこのパラダイムは常に持続不可能な要素によって支えられている、とレイダリオ氏は述べています。

持続不可能な要素の典型的な例として、中央銀行の借入による金融資産の購入や、長期に渡るマーケットの低いボラティリティが挙げられます。

パラダイムは10年程度と比較的長期に渡って継続するため、そのうち市場参加者は現在のパラダイムに適応し、将来にわたっても同様の環境が継続されることを前提とした投資行動をとり始めるようになります。

この結果、市場は特定の方向に行き過ぎとなり、それが何かのきっかけで正されることで次のパラダイムに移行していく(=パラダイムシフトが起こる)というわけです。

パラダイムとパラダイムシフトを理解することがなぜ重要か?

Navigating markets well requires one to be more accurate about what is going to happen than the consensus view that is built into the price. That’s the game. That’s why understanding these paradigms and paradigm shifts is so important.

Ray Dalio

市場は将来起こるであろうことを予測して価格に織り込んでいますので、市場価格は市場参加者が予想する将来のコンセンサスであると言えます。

そして、市場はその後、実際の結果が事前の期待値に対してどうだったか、ということに反応していきます。

したがって、投資で市場をアウトパフォームするためには、価格に織り込まれているコンセンサスよりも将来起こることを正確に予測し、投資行動に反映させていく必要があります。

この市場のコンセンサスよりも将来を正確に予測することこそが投資の本質であり、マーケットよりも正確な将来予測をするためにはパラダイムとパラダイムシフトを理解することが非常に重要である、とレイダリオ氏は述べています。

一般にマーケットのコンセンサスは、実態よりも過去数年間の出来事による影響を強く受け、現在のパラダイムが今後も継続していくことを想定しているため、いざパラダイムシフトが起こるとうまく対応することが出来ません。

そして、これこそが我々が非常に大きな相場や経済状況の変動を抱える一因となっています。

パラダイムシフトの歴史から学ぶべきこと

過去にほぼ10年周期で繰り返されてきたパラダイムシフトの歴史から、以下のようなことが分かっています。

① 特定の特徴を有する10年のなかで、1~3年程度は市場は全く別の動きをする。

その時期のパラダイムに則った投資行動を取れていたとしても、この1~3年の間は異なる環境に対する対応が求められます。

この時期にうまく対応するには下記いずれかの行動を取る必要があります。

  1. 市場に出入りするタイミング(=いつ買い、いつ売るか)を正確に予測する
  2. マーケットの動きに逆行して売買する(=価格が下がったら多めに買い、価格が上がったら多めに売る)
  3. バランスの取れたポートフォリオを構築することで市況の変動を耐え抜く

なお、一番やってはいけないことは、マーケットに合わせて動く(=価格が下がったら売り、価格が上がったら買う)ことです。

経済は長期的な均衡点を挟んで大きく上下する

レイダリオ氏は下記の3つの要素が長期的な均衡点を挟んで大きく上下することが、マーケットに大きな影響を与えると述べており、これらを観察することの重要性を示唆しています。

  1. 債務残高の伸びが所得成長率とバランスしているか。バランスが取れていない場合(=債務成長率が所得成長率に比べて高すぎる場合)、長期的には債務は返済不能になり、様々な問題が発生します。
  2. 経済活動の水準はどうか。高すぎる場合には、経済に悪影響を及ぼす水準のインフレを招くことになりますし、低すぎる場合には、不況によって政治・経済的に耐えがたい状況を生み出すことはなります。長期的にはいずれの状況も持続不可能であり、適正な水準に戻っていきます。
  3. 各資産の期待リターンに適切なスプレッドがあるか。期待リターンが株式>債券>現金の順番となっていて、それぞれの間に十分なスプレッドがあれば問題はないですが、これらが欠けている場合には経済は停滞することになります。逆にスプレッドが大きい場合には、経済は加速していくことになります。

③大半の投資家は過去10年と同じような10年がこれから来ることを前提に行動する

こうならないことは歴史が証明していますが、それでも多くの人々は直近の出来事に強く影響を受け、行動してしまいます。

④どの資産にも最高の時期と最悪の時期がある

下記のとおり、10年単位で見れば、どのアセットクラスにも損失を計上する最悪の時期があります。

したがって、残念ながら特定の資産に全力投資している投資家は、長期的にはどこかの段階で致命傷を負うことになります。

出典:Paradigm Shifts, Ray Dalio

⑤世間では過去数年の実績に基づいた投資戦略が流行る

直近に優れた成績を残している投資方法が最ももてはやされるのは、必然的にその時期を支えてきたパラダイムが終わる直前になりますが、これが過去に基づいた投資戦略を取るには最悪のタイミングになります。

レイダリオ氏は、特にパラダイムシフトが近い(=現在のパラダイムの終わりに近い)時期における最悪の投資行動は、過去10年間を振り返り、そこで上手くいった投資戦略に基づいてポートフォリオを構築することだと述べています。

*今から米国株に全力投球しようとしている人は考え直した方がいいかもしれません。

2009年から現在に至るまでのパラダイム

リーマンショック後から現在至るまでのパラダイムは、主に4つの持続不可能な要素によって、支えられてきました。

①中央銀行による利下げと量的緩和

2009年以降、中央銀行は政策金利を引き下げ、持続不可能な規模の量的緩和によって貨幣を増刷し、金融資産を購入してきました。しかし、現在ではいずれの政策も効果を失ってきています。

出典:Paradigm Shifts, Ray Dalio

②低コストの借入による投資活動

量的緩和によって市場に溢れたマネーと、低コストの借入によって、相当規模の自社株買い、M&A、非上場株やベンチャー投資が行われてきましたが、今後もこれらを同水準で継続していくことは不可能です。

③急激な利益率の改善

FAやグローバル化によって、人件費を押し下げることで企業は急激に利益率を改善してきましたが、過去10年間と同程度の利益率の伸びをこれからの10年に期待することは非現実的です。

出典:Paradigm Shifts, Ray Dalio(1920~2019)

④法人税の引き下げ

トランプ政権による大胆な法人税の引き下げは、企業の期待利益を引き上げることで、株価を押し上げましたが、これも一時的なものです。

出典:Paradigm Shifts, Ray Dalio(1920~2019)

今後数年以内に起こるパラダイムシフト

レイダリオ氏は、いつどのようにパラダイムシフトが起こるかを予測することはできないが、今後数年以内にパラダイムシフトが起こる可能性は極めて高い、と述べています。

次のパラダイムを考えるにあたって重要な前提条件は以下です。

  • 中央銀行は不況に陥った時に経済を浮上させる有効な手段をもはや持っていない
  • 政府は手持ちの資産では賄えない、年金・社会保険を含む多大な負債を抱えている
  • 中央銀行は債券価格を維持し、自らの利払いを抑えるため、金利を低水準で維持する

これらの結果、政府・中央銀行は負債の支払期限が到来した際には、下記の3つを組み合わせて対応することになります。

  1. 財政出動による支払い(≒財政赤字の拡大・貨幣の増刷)
  2. 実質債務圧縮のための通貨切下げ(≒インフレや貨幣の増刷)
  3. 債務に見合う収入を確保するための大幅な増税

いずれにせよ過去のように経済成長によって自然に債務を解消することが難しくなるため、このように痛みを伴う対応を迫られることになります。

(なんだが昨今、日本で起きていることそのもののような気がします…)

レイダリオ氏は上記を前提に、下記のタイミングでパラダイムシフトが起こる可能性が高いとみています。

  • 実質金利が著しく下がることで、投資家が債券や現金からより適切と考える投資対象に資金を移し始める
  • 上述の通貨引下げや増税などの経済を痛める政策が発現し始める

これらの結果、貨幣の価値は下落していくことになり、特に貨幣価値の下落がそのまま実質リターンの欠損になる債券のリターンが著しく低くなることが予想されています。

逆にこのような環境で最もリターンが期待できる資産は、インフレヘッジとして機能する資産となり、レイダリオ氏は次のパラダイムでは特に金に優れたパフォーマンスが期待できると述べています。

いつパラダイムシフトが来てもいいように準備をしておこう

最後にここまでの内容を基にレイダリオ氏の主張をまとめてみました。

  • マーケットのトレンドは約10年ごとに変わっていくよ
  • 過去10年間でうまくいった投資方法を基づいて行動すると失敗するよ
  • 単一の資産に全力投球する投資家はそのうちやられるよ
  • 金利が下がりすぎてみんなが債券を手放し始めたらパラダイムシフトが来るよ
  • 次のサイクルでは債券投資はやめといた方がいいよ
  • 貨幣の価値はどんどん下がっていくから金とかでインフレヘッジしとくといいよ

どうでしょうか。参考になりましたでしょうか。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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