【バンガードに学ぶ】株式・債券の相関とインフレについて

投資戦略・方針

本日は株式と債券の相関性がインフレによってどのように影響されるかについて、下記のバンガードのレポートを参考にまとめました。

【参考文献】The stock/bond correlation: Increasing amid inflation, but not a regime change – Vanguard Research | September 2021

https://personal.vanguard.com/pdf/GMMSTOC.pdf

株式・債券の相関(1950~2020年)

今回のバンガードのレポートの背景には、昨今のコロナショックや金利上昇局面において、かつてのような株式と債券の相関性(負の相関)が失われているのではないかという批判があります。

しかしながら、歴史的に見れば、短期的に株式・債券が正の相関を持つことは珍しくありません。

濃い青線は直近6カ月、薄い青線の直近24ヶ月の相関係数の変化を表しています。

短期であればあるほど、プラスの領域に入ることがあることが分かりますし、2020年に入ってからも株式・債券の相関はプラスに転じています。

もうひとつ注目に値するのは、2000年以前とそれ以降では、株式と債券の相関に大きな変化がみられる点です。

2000年以前(1950~1999年)の株式・債券の相関係数は0.42とプラスでしたが、2000年以降は▲0.32と大きくマイナスに転じています。

株式と債券が2000年以前のような正の相関に戻ることはあり得るか、というのも今回のレポートのメインテーマのひとつです。

株式・債券の相関を左右する主要因はインフレ

そもそも株式・債券の相関は何によって影響されるのでしょうか。

バンガードのレポートを参考に、株式・債券の相関を左右する主な要因を以下のとおりまとめてみました。

上記のとおり、様々な要因がありますが、バンガードは株式・債券の相関が何によってどの程度影響を受けるか、下記のとおり分析してくれています。

結論としては、80%はインフレ率とインフレの不確実性(インフレ率のボラティリティ)で株式・債券の相関が決まるということです。

やはりインフレ率は投資において重要な要素であることが分かります。

実際に1950~2020年のインフレ率と直近24ヶ月の株式・債券の相関係数をプロットすると以下のようになります。

2000年以降(紫色)とそれ以前で全く違う風景が見えます。

2000年以降の負の相関については、政策の変化など様々な要因が考えられますが、おおむねインフレ率と株式・債券の相関係数には相関がみられる(=インフレが高まると株式・債券の相関も高まる)と言えるのではないでしょうか。

直近10年で均したインフレ率が3.5%を超えてくると株式・債券の相関がプラスに転じているように見受けられますね。

どの程度のインフレで将来の株式・債券の相関がプラスになるか?

今後、10年平均のインフレ率が3%を超えてくる場合(上記の灰色)、5年以内に株式・債券の相関がプラスに転じるとバンガードは試算しています。

ちなみに10年平均で3%を超えるためには、今後5年間、年平均でコアCPIのインフレ率が5.7%以上という高い水準で維持され続ける必要がありますが、バンガードは2021年9月時点の当レポートでは、これは起きそうにないと述べています。

ちなみに直近のコアCPIは、2022年2月に6.4%まで上がってきており、今のところ、数字は毎月上がってきている状況です(下図の赤線がコアCPI)。

個人的には、5.7%のインフレが今後5年続くことが絶対にないとは言えない気がしますが、これ以上を想定するのもやや極端な気がしております。

インフレが高止まりしてもリターンに与える影響は軽微

ここまでを見て、「じゃあインフレが高止まりして株式・債券の相関がプラスになったらやばいのか?」と心配になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はご心配には及びません。

バンガードが、今後の10年平均のインフレ率が3%(=相関係数0.25)の場合と、2%(=相関係数▲0.27)の場合をそれぞれシミュレーションした結果、リターンやボラティリティにはほとんど差がないことが分かっています(下図:株式60%・債券40%のポートフォリオを想定)。

それよりも同じ環境下で株式・債券の比率を60:40→80:20に変更したほうが、リターンやボラティリティ、最大下落幅に与える影響は遥かに大きいのです(下図)。

ですので、バンガードとしては「今後、株式・債券の逆相関が失われることを過度に心配するより、しっかりと自分に合った資産配分でポートフォリオを構築・維持することに注力しようね。」とアドバイスしてくれています

私もその方がいい気がします。

なぜならば、仮に株式・債券の相関が高まっていくとしても、我々にできることはあまりありませんからね。

バンガードの助言に従い、長期・分散・低コストを心がけたい

上記の検証結果を踏まえたバンガードの結論を要約すると以下のような感じでしょうか。

・高インフレで株式・債券の相関は若干高まりそう

・しかし、今後5年で正の相関になることはなさそう

・相関係数がマイナスにとどまれば、分散効果は十分期待できる

特に長期投資家には影響はほぼないし、資産配分の方が大事だからそっちに頭使え

いつも「長期・分散・低コストが正しいんだ!下手にポートフォリオをいじったりして、道を踏み外すな!」とアドバイスをくれるバンガードには感謝ですね。

ありがとう、バンガード。

私も今後しばらくは何もせずに資産配分を維持していきたいと思います。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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