名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』では、主要な金融資産のリターン・リスクの関係や投資期間とリスクの関係なども取り上げられています。
今回は投資戦略を組み立てるにあたってベースとなるこれらの要素について、簡単にまとめてみました。
※ランダムウォーカーから着想を得た記事は過去にもいくつかまとめていますので、興味のある方はこちらもご覧ください。
結論:15年以上の運用は株式のみでもOK
結論としては15年以上の運用期間が確保できるならば、100%株式で運用するのがよりよい結果が得られる可能性が高いです。
これはインデックス投資の大前提となるもので、周知の事実かと思います。
今回はこの周知の事実に対して、今一度ランダムウォーカーの内容を参考に、頭を整理してみたいと思います。
追加リターンの獲得にはそれ以上のリスクが伴う
『より高いリターンを得るためには、より高いリスクを取らなければならない』というのは投資の常識とされていますが、その事実をデータで示したものが下記の表です。
1926~2017年という超長期の平均リターンで株式は債券の2倍近い数字を記録しています。
しかし、それは投資家が高いリスクを受け入れた対価だということも分かります。
上表で一番右の数字は年平均リターンをリスク指標で除したもので、これを見ると高い絶対リターンを得るためには、それ以上のリスクを受け入れる必要があることが分かります。
対象期間では、短期国債の場合、リスク指標1%に対して1.10%のリターンが得られましたが、最も高い絶対リターンを記録した小型株の場合、リスク指標1%に対して0.38%のリターンしか得られていません。
大型株と長期債を見ても同様の傾向が見て取れ、追加リターンの獲得にはそれ以上のリスクが伴うことが分かります。
また、株式は対象期間の約30%の年において、ネガティブ・リターンを記録していますので、実際に投資家が高いリターンを享受するためにはこうした局面を耐え、乗り越えていく必要があります。
この問題(高い絶対リターンを求めるとリスク・リターンのバランスが劣後しがち、かつリターンがマイナスになる可能性も高まる)への解決策としては、レイダリオのオールウェザーファンドのような手法もありますが、今回は長期運用によってリスクを低減するという考え方に触れたいと思います。
インデックス投資なら長期運用でリスクを減らせる
過去を振り返ると株式の高いリスクも時間が解決してくれています。
下記グラフはS&P 500の1950~2017年の各運用期間における年平均リターンの最高・平均・最低を示したものです(棒グラフのなかの●が平均値)。
S&P 500の場合、1950年以降のどの15年間を取ってもリターンはプラスでした。
最もパフォーマンスがよかった15年間の場合、年平均リターンは18.9%に達し、最もパフォーマンスが優れなかった15年間の場合でも年平均リターンは4.2%とまずますの数字を残しています。
運用期間を20年、25年と伸ばすと最低ラインがもう少し上がり、ワーストケースでも年平均6%程度のリターンは期待できそうです(各期間の平均値はいずれも10%強)。
つまり、15年以上の運用の場合、S&P 500に投資をしておけば過去70年ほどは損をすることはなかったということですね。
また上記グラフでもうひとつ特筆すべきことは運用期間が長くなるほど、得られるリターンの幅が小さくなっていることです。
一般にリスクとはリターンの振れ幅のことを指しますから、長期運用によってリスクが逓減されるということが過去の傾向から見て取れます。
長期投資における株式と債券
株式のリターンが長期保有によって平準化される傾向を踏まえ、過去の株式と債券のパフォーマンスを運用期間ごとに比較した表がランダムウォーカーには記載されています。
上表は株式と債券を同期間保有した場合、株式が債券のリターンを上回った割合を示しています。
過去の傾向としては、運用期間が長期になればなるほど、株式のリターンが債券を上回る確率が大きくなることが明確に見て取れます。
株式を10年運用すれば80%の確率で債券をアウトパフォームしてきたわけです。
この割合は運用期間が長期になればなるほど高まっていきますので、長期運用に際してはなるべく多く株式のアロケーションをとった方が期待リターンが高まることが分かります。
まとめ:長期のインデックス投資は本当に強い
今回は原点回帰的な内容でしたが、改めて長期インデックス投資(S&P 500)の強さを感じることができました。
15年の運用で年平均リターンが4-19%(平均10%超)は複利ベースで考えるとかなりいいですね。
私は今後もポートフォリオの大半を株式に振り向けつつ、趣味的な感じで適度にインデックスからずらした運用をして楽しんでいきたいと思っています。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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