私はレイ・ダリオ氏の推奨する「オール・シーズンズ戦略」を実行するにあたり、コモディティのエクスポージャーを資源銘柄で代替することとしています。
本日は、3大資源メジャーの一角であるリオ・ティント(Ticker: RIO)について、分析・考察した結果を、過去最高に力を入れて記事にまとめてみました。
リオ・ティントはスペインの銅山を起源とする世界的な資源メジャー
リオティントは、主に鉱物の生産において、ブラジルのヴァーレ(Ticker: VALE)と豪英のBHPビリトン(Ticker: BHP)とともに、世界の市場で圧倒的な地位を築いている三大資源メジャーの1社です。
リオティントは、世界有数の資源会社です。
英国を本拠に、リオ ティント グループは、ロンドンおよびニューヨーク証券取引所に上場している Rio Tinto Plcと、オーストラリア証券取引所に上場している Rio Tinto Limitedで構成される二元上場会社です。
二元上場会社とは、法人格を有する二つの会社が、異なる国で上場し、それぞれ別の株主を持ちつつ、所有権を共有し一体となった事業を経営している会社であり、リオ ティント グループの連結財務諸表はRio Tinto plcとRio Tinto Limitedの経済的所有権が合算されています。
リオ ティントは、鉱物資源の探鉱、採掘、加工、マーケティングに注力し、持続可能で、株主への還元を力強く実現しながら、世界の発展に寄与する金属や鉱物を供給しています。当社の主要生産品は、アルミニウム、銅、ダイヤモンド、金、産業用鉱産物(ホウ素、二酸化チタン、工業用塩)、鉄鉱石、ウランです。
35を超える国々で働く約5万人の社員は、ベストな事業運営を目指す力強いチームとして団結しています。
Rio Tinto HPより引用
英文を直訳した感じの文章で読みづらいですが、言いたいことは分かります。
Rio Tintoとは、スペイン語でRed Riverを意味し、古くはギリシャ帝国やローマ帝国にも銅を供給したスペインにあるRio Tinto鉱山に由来します。
もともとは、1873年にスペイン政府がRio Tinto鉱山をスコットランド人ヒュー・マセソン率いるイギリスおよびヨーロッパ諸国の投資家団に売却したことが始まりです。
投資家団が設立したこの“Rio Tinto Company”が、現在のRIOの源流であり、同社は革新的な技術を導入することで事業を立て直し、Rio Tinto鉱山は1877年から1891年まで世界一の銅の生産量を誇りました。
そんなスペインの銅山を所有していた会社が国際的に展開するようになったきっかけは、1954年のRio Tinto鉱山の部分売却です。同社は80年間の稼働を経て、生産量が落ち込んでいたRio Tinto鉱山の2/3を売却し、その資金をアフリカ、オーストラリア、カナダでの探鉱活動に振り向けていきます。
ここからグローバル資源メジャーとしてのRIOの歩みが本格的に始まり、その後、紆余曲折を経て、現在に至るというわけです。
RIOの業績推移(売上・利益)
それではRIOの財務情報を見ていきましょう。
まずは業績推移です。ここからのグラフはRIOのAnnual Reportを基に作成しています。
売上・利益ともに、かなりブレの大きい業種であることが分かります。
直近では、2015年に損失を計上して以降、2016-2018年にかけての業績の改善ぶりが凄まじいですね。2018年には営業利益率でリーマンショック後の最高を更新しています。
なお、RIOの主要事業は、4つの部門に分かれています。
- 鉄鉱石部門
- アルミニウム部門
- 銅・ダイヤモンド部門
- エネルギー・ミネラル部門
それぞれの状況を簡単にまとめました。
鉄鉱石部門
鉄の主原料となる鉄鉱石ですが、RIOは16の鉱山、4つの港湾、1,700kmの鉄道網からなるポートフォリオを保有しており、10,500名の従業員が鉄鉱石事業に従事しています。
オーストラリア西部・Pilbara地方の鉱山が特に良質な鉄鉱石を産出しており、同社の鉄鉱石の旗艦ブランドも「Pilbara Blend」と名付けられています。
今後、鉄鉱石市場の成長鈍化が見込まれるなか、量より質の方針のもと、すでに保有している高品質なポートフォリオの運営を最適化する方向性を打ち出しています。
なお、RIOの所有する鉱山はすべてオーストラリア西部に所在しており、主要な販売先は中国、日本、韓国、台湾及びその他のアジア諸国です。
アルミニウム部門
アルミニウムは最も需要が伸びている主要な鉱物資源のうちのひとつです。
軽量で加工しやすいことからジェットエンジン、電気自動車からスマートフォンまで幅広く様々な産業で活用されています。
今後は中国での需要拡大が減速することにより、市場の成長速度は過去10年に比較して落ち着いてくると見込まれています。
なお、RIOは2007年にカナダのアルミ大手アルキャン(Alcan)を約4兆円で買収し、この分野を大幅に強化しています。
銅・ダイヤモンド部門
銅は主に発電を含む電力関係で重要な役割を果たしており、再生可能エネルギーや、電気自動車等の分野での需要が高いです。
RIOはモンゴルや米国で複数の銅山を運営していますが、マーケットに寡占的なプレイヤーがいないこと、今後の需要拡大が見込まれていることから、この分野においては開発プロジェクト等を通じて、成長を加速させていく方向です。
なお、ダイヤモンドについても、オーストラリアとカナダにひとつずつ鉱山を所有しており、世界最大級のダイヤモンド生産者の地位を占めています。
エネルギー・ミネラル部門
この分野には基本的にこれまで見てきた鉱物以外がすべて含まれます。
具体的には、チタン(Titanium Dioxide)、ボレイト(Borates)、高品質ペレット(High-grade Iron Ore Pellet)、ウラン(Uranium)、塩(Salt)などが含まれています。
RIOでは、この分野の高い成長性を見込んでいることから、積極的に成長機会を開発していくこととしていますが、同時に鉄鉱石同様、量より質の方針も掲げていることから、個人的には規模の拡大を求めて収益性を損なうような開発を行うリスクは低いと考えています。
上記の円グラフは、2018年の売上とEBITDAの内訳です。
売上の4割強を占める鉄鉱石で利益の6割近くを稼いでいます。他部門の収益性も含めて、この傾向はここ数年変わっていません。
収益構造から分かるとおり、鉄鉱石の価格変動が業績に与える影響は非常に大きいです。
鉄鉱石価格が10%変動すると、EBITDAがおよそ18.6億ドル(約2,000億円)変動します。鉄鉱石以外でもアルミや銅の価格変動の影響も大きい点は、投資に際して理解しておく必要があります。
価格変動リスクは大きいものの、長期的なマクロ環境は決して悪くありません。
特に人口の多いインドやASEAN諸国が今後成長していくにつれ、一人当たりの鉱物資源の消費量が大きく伸びていくことが予想されています。
これらの国と日本や中国の一人当たり消費量の違いを見ると、明るい未来を感じることができるのではないでしょうか。
最後に商品カテゴリーをまたいだRIOグループとしての販売先ですが、中国が圧倒的ですね。
中国は過剰生産によって、世界の鉄鋼市場を狂わせるほど、圧倒的な粗鋼生産量を誇ります(2018年の粗鋼生産量は中国だけで世界の過半を占める)ので、特に鉄鉱石の販売先として大きなウエイトを占めていることは容易に想像できます。
RIOのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にRIOのEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
EPSの振れ幅が非常に大きいですが、配当の方は2009年以降、概ね増配傾向であり、2018年には過去最高の配当額を記録しています。
また、損失を計上した2012年と2015年を除き、配当性向が100%を超えた年は過去10年間ではありませんので、持続可能性も意識した株主還元を心がけていることが分かります。
配当には多少ブレがあるものの、自社株買いも考慮すると、非常に高い水準の株主還元を継続してきていることが分かります。
過去5年の平均値が7.91%ですので、この点では文句のつけようはないのではないでしょうか。
なお、配当性向については、概ね利益の40-60%とすることが目安として示されています。
また、資産の売却等によって追加的な資金を得た場合には、それを通常の配当に上乗せして株主に還元しており、この株主目線の経営が行われている点は非常に好感が持てます。
RIOのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)
次はRIOのキャッシュフローです。
お世辞にも安定感があるとは言えないキャッシュフローですが、営業CFの額がすごいですね。2011年には約200億ドルと、2兆円超えを記録しています。
ブレ幅はありますが、これだけ安定的にキャッシュを生み出せる事業をもっているのは強いなあと感じてしまいます。ただ、同時に鉱山の維持や開発には多額の投資が必要になりますので、2011~2013年あたりのCapexも半端ないですね。
このあたりはもろに経営力といいますが、現場レベルでどうこうできるレベルの話ではないので、やはり経営陣の力量が問われてきます。
その点、この数年は新規プロジェクトへの投資を抑えつつ、既存のアセットの競争力を高める方向性で会社を運営してきたことがこのチャートからも読み取れます。
RIOの株価チャート
では、ここまでの情報を踏まえて、2019年12月28日時点でのRIOの株価チャートを見てみましょう。
2000年からの株価推移はなかなかインパクトがありますね。これぞ資源バブルといった感じで激しいです。また、鉄鉱石価格との相関性も確認できます。
鉄鉱石や銅の価格が、2011年頃の水準を回復してくるようであれば、企業側の収益性が向上していることから、株価も当時の高値を超えてくるものと思われます。
ただ、やはり本質は「オール・シーズンズ戦略」に則った資産配分として、コモディティへの適切なエクスポージャーを確保することですので、個人的にはポートフォリオ全体に対してポジティブな分散投資効果をもたらしてくれるか、という目線で投資判断を行いたいと考えています。
結論:RIOはコモディティ市場と連動しながら、高水準の株主還元を実行し、絶対なくならない市場を押さえているナイスな銘柄
ここ数年の市況回復に伴い、大きく業績を改善してきているRIOですが、個人的にはいい銘柄だと思います。
- コモディティという人類の生活において不可欠なものを商品にしている(=絶対になくならない市場でグローバルに確固たる地位を築いている)
- 高配当に加え、高水準の自社株買いも実行し、かつ資産を売却して得たキャッシュはすぐに株主に返すという資本主義のお手本のような経営方針
- 気持ち良いほどのコモディティ市場との連動性(=コモディティの代替として活用できる)
ボラティリティが大きいため、敬遠されがちな資源銘柄ですが、シーゲル教授の著書にもあるとおり、こういった銘柄こそ割安に放置されやすく、配当再投資によって大きなリターンをもたらしてくれる可能性があります。
そもそも何の欠点もないような超優良銘柄がこれほどの高配当になることはありませんので、高配当株である以上は、何かしらのリスクを受け入れる必要があります。
私のなかでは上記のメリットも考慮すると、RIOは既存のポートフォリオの改善に資する、優良な投資先であると判断しています。
また、投資家向け資料やAnnual Reportが、特に業界の予備知識もない私でも非常に分かりやすかった点も高評価です。経営陣がきちんと株主の方を向いていることも感じられました。
以上、高配当ADR銘柄・資源メジャーのRIOについての考察でした。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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