私はポートフォリオの過半を占める債券が金利上昇に弱いことから、リスクヘッジとして金利上昇によって恩恵を受けるであろう金融株を一定程度保有することとしています。
本日はそのなかでも私が特に魅力的だと考えているHSBCホールディングス(Ticker: HSBC)について、熱く語ってみたいと思います。
HSBCはロンドンに本社を置く世界的な金融機関
HSBCは、65の国と地域でビジネスを展開している世界最大級の金融機関のひとつです。
顧客数は4,000万以上、従業員数は23.8万人ですので、まぎれもないグローバル企業ということができるでしょう。
もともとHSBCは、1865年3月にアヘン戦争後に英国の植民地となった香港において、欧州とアジアの金融取引の円滑化を目的とし、The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limitedとして設立されました。そして、この1か月後には上海でも開業しています。
なお、1991年に香港上海銀行グループの持株会社としてHSBC Holdings plcがロンドンで設立され、本社もロンドンに移しています。
こちらは、1997年の英国から中国への香港返還を念頭に置いた動きですから、香港と英国の歴史と関わりの深い企業であることがよく分かりますね。
なお、香港の子会社は「The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited(香港上海銀行)」の名前で今でも変わらず営業していますし、香港においては、スタンダード・チャータード銀行、中国銀行(香港)と並び、香港ドルの発券銀行の3つのうちのひとつとして確固たる地位を築いています。
HSBCの業績推移(売上・利益)
それではHSBCの財務情報を見ていきましょう。
まずは業績推移です。なお、ここからのグラフはHSBCのAnnual Reportを基に作成しています。
リーマンショック後は比較的業績が安定していますが、2016年に業績が落ち込んでいます。
これは欧州のプライベートバンキング部門で減損を計上したことと、ブラジル事業の売却によるものです。リストラクチャリングによる一時的な業績の落ち込みですね。
その後も売上はほぼ横ばいですが、利益はだいぶ持ち直してきており、2018年には売上高純利益率で20%近くまで回復してきています。
2019年は2018年と同等か、やや劣る成績になりそうですが、グローバルに低金利化が止まらないネガティブな環境のなかでもこの水準を維持してくれるのであれば、悪くないのではないでしょうか。
なお、上記グラフのとおり、HSBCは売上の半分近くをアジアで上げており、中長期的にはアジア諸国の人口増加と経済規模の拡大が追い風になるものと考えられます。
HSBCのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にHSBCのEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
業績が落ち込んだ2016年には、配当性向が700%を超えましたが、それでも減配せずに配当を維持したところは評価できますね。
2016年に引き続き、2017年も配当性向は100%を超えています(2017年: 106.3%)が、2018年には81%と巡航速度に近いところまで戻してきています。
個人的には配当性向80%超だとカツカツ感があって安心できないので、業績を伸ばすことで現在の配当額を維持しながら2014年頃の70%くらいまで戻してもらえればと思っています。
HSBCのキャッシュフロー(営業CF・投資CF・フリーCF)
次はHSBCのキャッシュフローです。
お世辞に安定感があるとは言えないキャッシュフローですね。
とはいうものの銀行のキャッシュフローは事業の性質上、通常の事業会社とは大きく異なる特性があります。
例えば、営業CFには預かり金の増減も反映されていますし、その預かり金の運用手段である金融商品の購入や売却が投資CFに反映されてきます。
同業他社で言えば、イギリスのバークレイズは、過去3年間、営業CFも投資CFもプラスで潤沢なフリーCFを生み出している一方、アメリカのJPモルガンは、過去3年間、HSBCと同じような出入りの激しい状況です。
単純にフリーキャッシュフローだけを見て判断できないところが金融機関の難しいところですね。
HSBCの株価チャート
では、ここまでの情報を踏まえて、2019年12月24日時点でのHSBCの株価チャートを見てみましょう。
リーマンショック前はどの金融機関もイケイケでしたし、HSBCも例外ではなく、株価は100ドル近くまで騰がっていました。
リーマンショック後は2009年に23ドル台まで下落して底値をつけて以降、およそ30~60ドルのレンジで動いていますね。現在の株価はおよそ38ドルで業績を無視して株価だけを見れば悪くない水準といえます。
上表は過去5年間の配当金と配当利回りの推移です。
配当利回りを見ると、過去5年間の平均は6.10%ですが、現在は6.59%となっています。
決して業績が伸びているわけではありませんので、ここで勇気をもって買いに入るか、更なる株価低迷もしくは減配を見越して買い控えるか、判断の分かれるところですね。
なお、HSBCは配当金を米ドルで発表し、投資家が米ドル、香港ドル、英ポンドのどれで受け取るか(もしくは組み合わせて受け取るか)を選べるという面白い方式をとっています。
個人的にはなるべくキャッシュフローを米ドルに寄せたいと考えているので、米ドル建てで配当してくれるHSBCは有難いです。
他のADR銘柄では、ポンド安等の影響で現地通貨ベースでは増配していても、米ドル建てでは減配になってしまっているものもありますので、為替リスクを実質的に排除できる点はナイスです。
結論:HSBCは配当に為替リスクがなく、既存ポートフォリオとの補完性も高いナイスな銘柄
配当性向がやや高く、業績的にも伸びているわけではないところは気がかりですが、個人的には下記を考慮し、HSBCはポートフォリオに加える価値があるナイスな銘柄と判断しています。
- ドル建て配当による為替リスクの軽減
- 2016年と2017年に減配しなかったように株主のために頑張れる会社である
- 先進国株へのアロケーションが低いポートフォリオに加えることによる分散効果
- 債券投資のヘッジとしての役割(金利上昇による業績向上)
基本的に業績がよく、将来性も見込まれているような超優良銘柄がこんな高配当になることはありませんので、高配当株を買う以上は、ある程度のリスクを飲み込む必要があります。
私のなかでは上記のメリットも考慮すると、HSBCへの投資は許容範囲と判断し、およそ9,000ドルほど投資しています。
以上、私のお気に入りの高配当株ADR・HSBCについての考察でした。
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