2020年10月頃から買いたいと思ったETFや個別銘柄がSBI証券で買えないことが多く、SBI証券からインタラクティブ・ブローカーズ証券(IB証券)への移行を検討していました。
その後、2020年12月初旬にSBI証券からIB証券へ移行し、ポートフォリオを再構築するに至っております。
本日はそもそもIB証券って何?という点や、IB証券を利用するメリット・デメリットをまとめてみました。
※最善を尽くして調べてはいますが、実際にIB証券を活用する際は各自で(特に税務面等)のご確認をお願い致します。
そもそもIB証券とは?

IB証券は米国の大手ネット証券です。
下記のとおり、Barron’sが選ぶベストオンラインブローカーに10年連続で選出されています(Barron’s元記事)。

ちなみにSBI証券は米国株の取次をIB証券に依頼しています。
つまり、我々とIB証券の間にSBI証券が入って、手数料などを上乗せしている状態なのです。

他の米国証券会社と比べたIB証券の強みとしては、
①手数料が安い
②国際取引(米国以外の市場へのアクセス)
という2点が主に挙げられているようです。
ここからは日本居住者の私がIB証券を使うことのメリット・デメリットを列挙していきたいと思います。
メリット①:世界中の金融商品への自由な投資が可能
最大のメリットはまず間違いなくこれです。
SBI証券でも米国市場の主要銘柄はだいたい抑えられるのですが、実際には取り扱いのない(もしくはできない)銘柄もかなりあります。
IB証券は米国の証券会社ですので、当然のことながら米国の上場銘柄はすべて投資できますし、米国以外でも世界の主要市場は全てアクセスできます。
株式以外も先物・債券・FX・オプション・CFD・コモディティなどいろいろあるのですが、とりあえず投資可能な株式市場だけでも下記のとおりで、普通の人が投資したい市場は全て押さえていると言えるかと思います。


個人的にはSBI証券では米国REIT ETFや中国株ETFの取り扱いが非常に限られる点や、製薬分野で世界トップクラスのロシュやノバルティス(ともにスイス企業)が購入できない点にこれまで不便を感じてきました。
それに加え、毎月配当を出す銘柄(Realty Income/Ticker: Oなど)がSBI証券ではほとんど取り扱いがないことを確認しまして、IB証券に口座を持てばこのような問題が解消できると考えるに至っています。
メリット②:売買手数料が大幅に削減可能
SBI証券と比べてIB証券は手数料が格段に安いです。
変動型と固定型の2つのプランがあるのですが、分かりやすい固定型を見てみると、1株0.005ドル(最低手数料は1ドル)となっています。
例えば25ドル×100株=2,500ドルを投資した場合の手数料をSBI証券と比べてみると以下のとおりです。
SBI証券:2,500ドル×0.495%(税込)=12.375ドル
IB証券:100株×0.005ドル=0.5ドル<1ドル(最低手数料)
上記取引の場合、たった1回の取引(しかも片道)で11ドル以上の差が出ることになります。
私の場合、今後も継続的に資金を投下していきますし、多くの銘柄に投資するつもりでいますので、手数料だけで考えても、今後数年のうちに数万円単位でコスト削減ができると試算しています。
メリット③:金額ベースでの端株取引が可能
IB証券では投資対象の株価に関係なく金額ベースでの投資が可能です。
例えば本来3,000ドル以上ないと投資できないAmazon株でも、100ドル分だけ購入するといったことが可能で、ポートフォリオ内の各銘柄への投資金額の調整が容易になります。
株価を見ずにA/B/Cにそれぞれ100ドルずつ投資するというやり方ができるわけです。
個人的にはこれまでは各銘柄の株価変動を見ながら、発注株数を調整したりしていましたので、この点は非常に楽だなと感じます。
また、端株取引は次に紹介するメリット・DRIPとの組み合わせでより力を発揮してくれます。
メリット④:DRIP(自動配当再投資)が利用可能
DRIP (Dividend Reinvestment Plan)は日本では馴染みがありませんが、ナイスな制度で、簡単に言えば受け取った配当金を自動で同じ銘柄に再投資してくれる制度です。
DRIPによって配当時点での課税を避けられたとしても、受取配当金(もしくは株式)は年末の確定申告で所得として申告しないといけないので、税的メリットは最長1年程度課税を先延ばしできる程度です。
なので、節税効果はあまりないのですが、手間と購入手数料が省ける点は大きなメリットですし、上述の端株取引と組み合わせて配当金額を全て再投資に回せば複利効果を最大化することが可能です。
メリット⑤:株式利回り向上プログラムによる副収入
IB証券では株式利回り向上プログラム(Stock Yield Enhancement Program/SYEP)というものがあり、マージン口座もしくは、キャッシュ口座で資産残高が約500万円以上の人はこの制度を利用することで副収入を得ることができます。


端的に言えば自分が保有している株式をIB証券が勝手に貸株に出してくれて、その対価として払われる借株料をIB証券と折半する制度です。
当然、貸し出された株式は空売りに利用されるわけですから、当該株式の売り圧力に間接的に加担することにはなりますが、それ以外ではIB証券がきちんとプログラムを運用してくれている限りはデメリットは特になかろうかと思います。
貸し出されている銘柄についても、売買は自由に行えますし、配当も支払われます。
私の場合、銘柄によっては、年利5%以上の借株料を取れているものもあり、このプログラムを活用しない手はないと思います。
メリット⑥:海外居住者になっても問題なく使える
SBI証券など日本の金融機関は利用者が日本居住者であることを前提にサービスを提供しています。

したがって、非居住者になる場合、上記のように様々な制約や不利益が生じる可能性があります。
この点、IB証券は元々様々な国の利用者に向けてサービスを提供していますので、仮に海外赴任・留学・移住等により、日本非居住者となった場合でも問題なく利用を継続することが可能です。
デメリット①:入金が外国送金扱いとなり、手間とコストがかかる
日本の主要証券会社だと手数料無料の即時入金サービスが提供されており、銀行口座から証券口座に資金を移すにはコストも時間もかかりません。
しかしながら、IB証券の場合には証券口座への入金が外国送金(正確には国内非居住者円建送金)となり、SMBCと三菱UFJの場合、800円の送金手数料がかかります(また、着金にも1~2日程度要するようです)。
私が調べた限り、この2つのメガバンク以外だと通常の外国送金と同じ扱いになり、数千円から1万円程度の手数料がかかります。
なお、三菱UFJの場合、国内非居住者円建送金を行うには毎回来店して手続きをする必要があるので、IB証券に口座を持つならオンラインで手続きできるSMBCの口座開設はマストと言えそうです。
ただ、SMBCなら手間はだいぶ省けるものの、手数料の800円は避けることはできないため、IB証券を使うなら手数料負けしないためにある程度現金を貯めてからまとめて送金するやり方がよさそうです。
デメリット②:口座維持手数料がかかる場合がある
IB証券では口座内残高が10万ドル(約1,000万円)未満の場合、月額10ドルの口座維持手数料がかかります。
売買手数料との相殺(例えば当月に売買手数料が2ドル発生していれば、口座維持手数料は8ドルで済む)があるので、純コストとしては10ドル以下で収まりますが、年間で0.12%以上のコスト(=120ドル/10万ドル)が発生することになるので無視できません。
したがって、IB証券は運用額が10万ドル以上の人でないとちょっと使いづらいかなと思います。
私の場合には運用残高は10万ドルを超えていますので、この部分は気にする必要はありませんでした。
デメリット③:特定口座に非対応
これは外国証券会社なのでしょうがないのですが、特定口座に対応していません。
したがって、すべての売買・配当の記録を為替レート込みで自分で作成し、毎年確定申告を行う必要があります。
私の場合、売買・配当の記録はすでに全てつけており、確定申告もしているのですが、これまでは特定口座を活用していたことから自力での円換算はしてこなかったので、これが追加の作業として今後発生することになります。
デメリット④:3年間の損失繰越や配当と売却損の相殺ができない
個人的にはこれが最大のデメリットだと考えています。
税制の部分なのでどうしようもないのですが、外国証券口座の場合、国内口座だと可能な売却損と配当金の相殺ができません。
つまり、売却損が出ても同年度内の売却益としか相殺できないということです。
具体的には、国内口座の場合、売却損50万円・受取配当50万円という年については配当に係る税金は還付されますが、海外口座の場合、売却損50万円を配当とぶつけることはできず、受取配当50万円にかかる税金(=20.315%)はそのまま取られてしまうことになります。
さらに国内口座だと確定申告すれば可能な3年間の損失繰越もできません。
よって、当該年度の売買による確定損益がマイナスだった場合、それはただ単なる損失となり、翌年以降の利益と相殺して税還付を受けることができないのです。
デメリット⑤:国内口座との株式移管(入出庫)ができない
すでに米国株を持っている場合、売却による手数料と税金を避けるために株式移管(株式を売却しないでそのまま他の証券口座に移すこと))をしたいわけですが、SBI証券では海外口座への株式移管はできません。
したがって、SBI証券からIB証券への株式移管は出来ませんので、
①ゼロからIB証券でポートフォリオを作っていく
②SBI証券の銘柄を売却&円転してIB証券に入金する
のいずれかの方法を取る必要があります。
個人的にはこれもちょっと痛い点ではあるのですが、まだ資産形成の初期にいることもあり、ここらで幾ばくかの手数料と税金を納める形で利確して、今後はIB証券で効率的に資産形成を進める方が長い目で見たらメリットが大きいかなと思っています。
これまでのところIB証券への移行には大満足
上記のメリット・デメリットを検討したうえで、IB証券を使った方がより有利な条件で資産形成ができるだろうという結論に達し、2020年12月よりNISA枠以外はすべてIB証券に移行しました。
多少の手間とコストはかかりましたが、今回紹介したメリットに加え、Portfolio Analystという優秀なサービスもIB証券では無料で提供されており、これまでのところ、IB証券に移行したことに対する後悔は全くありません。
※Portfolio Analystについてはこちらを参照ください。
税務面のデメリットは避けられませんが、それ以外の点においては、金融先進国・アメリカの良質なサービスを低コストで受けることができ、大変満足しています。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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