【レイダリオに学ぶ】新型コロナウイルスがマーケットに与える影響について

投資戦略・方針

2020年1月30日付で本家ダリオことレイ・ダリオ氏の最新記事として、コロナウイルスがマーケットに与える影響について考察した記事がLinkedinに投稿されています。

コロナウイルスについては、まだ拡大途上であり、その全貌は見えていませんが、過去の類似事例との比較から、現時点でのレイダリオ氏の考えがまとめられています。

元記事: https://www.linkedin.com/pulse/our-early-thinking-coronavirus-pandemics-ray-dalio?trk=portfolio_article-card_title

未知の状況から身を守るには適切な分散投資が必要

What we don’t know is much greater than what we do know.  When you don’t know, the best investment strategy is to be smartly diversified across geographic locations, across asset classes, and across currencies.

Ray Dalio

コロナウイルスに限らず、世の中では既知の事柄よりも、未知の事柄の方が遥かに多く、これらの不確定要素から身を守るには地域・資産クラス・通貨・投資戦略について適切に分散を効かせた投資が必要になります。

このこと自体は、レイダリオ氏は事あるごとに繰り返していますが、コロナウイルスのような未知のリスクファクターは、特にこの分散投資の重要性を際立たせると同氏は述べています。

過去の類似事例のデータ(流行期間、罹患者数、致死率など)

出典:Our Early Thinking on the Coronavirus and Pandemics, Ray Dalio

20世紀以降の類似事例として、最もよく比較されるものは2003~2004年のSARSですが、世界に最も大きな影響を与えた事例は1918~1919年のスペイン風邪です。

いずれの事例も罹患者の致死率は約10%と非常に高く、大きな脅威となりましたが、これら以外の過去の事例を見ても、パンデミックの期間はおよそ1年~1年半ほどであることが分かります。

ケーススタディ①:SARS(2003~2004年)

SARSは2002年11月16日に最初の患者が中国・広東省で報告され、最終的には世界26か国で約8,000人が罹患し、約800人が死亡しました。

SARSの拡大は非常に早く、2003年2月に香港で最初のSARS感染者が報告されると、2003年3月中旬にはWHOが非常事態宣言をするに至っています。

同期間中の新規患者数の報告値と、香港及び先進国の株式市場指数の推移は以下のとおりです。

香港株はSARSの拡大に伴い、2003年1月~5月にかけてピークから約15%の下落を見せていますが、 収束の兆しが見えた2003年5月以降、急激に持ち直し、夏場までには株価は回復しています。

出典:Our Early Thinking on the Coronavirus and Pandemics, Ray Dalio

先進国株も同程度の下落を同時期に記録しており、この時期はグローバルに株式から債券と金への資金移動に代表されるリスクオフの動きが確認されています。

ケーススタディ②:スペイン風邪(1918~1919年)

スペイン風邪では最初の患者は1918年3月4日に米国・カンザスの軍キャンプで働いていた料理人とされています。

この料理人が風邪のような症状を訴えてから、その日の正午までには同キャンプ内で107名が罹患しています。

その2日後に患者数は522名まで増え、1週間後には全米のすべての州で患者が確認されるなど、爆発的な勢いで感染は広がっていきました。

翌年の半ばには全世界での超大規模パンデミックになっており、最終的な死者数は5,000万人とも言われていますが、如何せんパンデミックの時期が第一次世界大戦と被っていることや、十分な資料が残っていないことから、正確な数字については諸説あります。

出典:Our Early Thinking on the Coronavirus and Pandemics, Ray Dalio

終戦に伴う株式市場の上昇がスペイン風邪によって抑えられているようにも見えますが、上述の理由からスペイン風邪自体が単体でどの程度市場に影響を与えたかを正確に分析することは残念ながら困難です。

コロナウイルスのこれまでの状況

ロイター通信によると、2020年1月30日時点で新型コロナウイルスについて分かっていることは以下のとおりです(引用元:https://jp.reuters.com/article/china-health-virus-31-idJPKBN1ZU0EF)。

*中国の衛生当局によると、30日時点で、死者数は213人。うち発生地である湖北省での死者が204人。感染者数は9692人となった。

*中国本土以外では、米国、日本、オーストラリア、フランス、ドイツ、香港、タイなど22カ国・地域、計129人の感染が確認されている。

*中国本土以外では死亡は報告されていない。

*WHOは30日に緊急会合を開催。テドロス事務局長は会合後、国際的な緊急事態に相当すると発表した。

*米国で人から人への感染例が初めて確認。人から人への感染はすでにドイツ、日本、ベトナム、韓国でも確認されている。

*米国務省は30日、中国への渡航警戒レベルを引き上げ。「中国の武漢市で発生した新型コロナウイルスのため」として、国民に中国に渡航しないよう勧告。

*中国国内の一部の都市は市民に対して厳しい移動制限を発動している。

*世界中の航空会社が相次いで中国の主要都市への直行便を運休したり、便数を削減している。

*オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インドネシア、イタリア、日本、シンガポール、韓国や米国などが武漢市から自国民を退避させる措置を実施。

*これまで知られていなかったこの新型ウイルスは、昨年末に武漢市の海鮮市場で違法に取引されていた野生動物から発生したと推測されている。

*専門家の間では、新型コロナウイルスは2002─2003年に感染が拡大して800人近くが死亡した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、2012年以降に700人以上が死亡した中東呼吸器症候群(MERS)ほど毒性は強くないとの見方もある。

出典:Our Early Thinking on the Coronavirus and Pandemics, Ray Dalio

すでに市場はこの新型コロナウイルスの拡大に対して、株価・人民元の下落と金・債券の上昇という形で反応しています。

感染拡大はまだ初期段階のため今後も注視していく必要あり

もちろん感染はまだ拡大している最中で、患者数と死者数が増えていくことは確実ですので、新型コロナウイルスを取り巻く状況については、今後も注視していく必要があります。

Generally speaking these once-in-a-lifetime big bad things initially are under-worried about and continue to progress until they become over-worried about, until the fundamentals for the reversal happen (e.g., the virus switches from accelerating to diminishing).

Ray Dalio

レイダリオ氏は、大抵の場合、最悪な状況は過小評価から始まり、その後事態が悪化していくにつれてマーケットは過剰な悲観が占めるようになり、この総悲観は実際に事態が収束し始めるまでは継続されるものだと述べています。

個人的には、SARSほど致死率が高くなさそうなことと、SARSの時よりも中国政府とWHOの対応が早く、しっかりしていることから、さほど先行きを悲観していません。

しかしながら、上記のレイダリオ氏の言葉を胸に、警戒心をもって動向を見守っていきたいと思っています。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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