本日は主に米ドル建の新興国国債を投資対象とする債券ETF「VWOB」について、分析・考察したいと思います。
主に米ドル建ての新興国国債を投資対象とする債券ETF
VWOBは、主に新興国がドル建てで発行する国債を投資対象とする債券ETFで、直近12か月の分配金利回りは4.61%です。
新興国国債ですが、ドル建てというところがミソですね。
新興国債券の最大のリスクは為替リスクです。
下記、トルコリラの過去10年間の推移を見れば明らかなように、一般に新興国通貨は高金利なため、低金利の先進国通貨と比較し、長期的には価値が目減りしていきます。
トルコリラはなかでもひどい方の例ですが、たった6年ほどで対ドルで30%程度まで価値が落ちています。
これではいくら現地通貨建ての債券が高利回りでも為替で負けてしまい、パフォーマンスが安定しません。
ドル建て新興国国債は、為替リスクがない分、現地通貨建てよりも表面利回りは落ちますが、発行国と米国の信用力の差がプレミアムとして、利回りに反映されてくるので、米国債よりは当然利回りは高くなります。
ポートフォリオの概要(格付、利回り、経費率など)
上述のとおり、直近12か月の分配金利回りは4.61%で、経費率は0.30%です。
経費率の0.30%は、高利回り債ETFのJNK(0.40%)や優先株ETFのPFF(0.46%)などに比べると幾分お安くなっています。
とはいうものの、コアな株式ETFの経費率は、0.03~0.12%が一般的ですから、これらと比べるとだいぶ高い水準であることが分かります。
発行体は、Governmentが89.08%となっており、新興国国債がメインになっていることが分かります。
のちほど出てきますが、残り10%ほどを占めるCorporateも一般的な民間企業ではなく、政府が所有するSOE(State-Owned Enterprise)が前提となっており、実質的に国の信用力をバックにした債券です。
気になる点は、投資不適格とされる格付がBBより下の債券が全体の41.23%を占めているところです。
しかもBBやBではなく、それより下のCCC以下というところがなかなか刺激的です。。。
VWOBを購入する際には、投資適格債だけでなく、ジャンキーな債券が半分弱入っていることを頭に入れておいた方がよさそうです。
参考までに格付の定義は以下のとおりとなっています。
発行体の国別構成比は以下のとおりです。
メキシコ、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、カタール、ブラジル、ロシア、コロンビア、UAEと10位のオランダに至るまでは、一抹の不安を覚えるような国ばかり並んでいますが、新興国債券とはこういうものなのでしょうがないですね。
最後に銘柄数と上位銘柄についてです。
組み入れ債券の数は689、上位10銘柄が全体に占める割合は6%程度と、頑張って分散を効かせてくれていることが分かります。
前述のとおり、SEOであるPetroleos Mexicanos(PEMEX)が上位に名を連ねており、発行体が国以外の債券も組み込まれています。
過去のパフォーマンスと米国債券市場との相関性
VWOBの過去のパフォーマンスは以下のとおりです。
2013年の設定来のパフォーマンスを年率4.9%程度とそこそこのリターンを出しており、インデックスとのラグがほとんどない点も好印象です。
設定来の株価推移ですが、72.50~82.50ドルのレンジから出たことがありません。
現在は上限である82.50ドルを再度試す展開になっています。
分配金の推移を見ても安定していることが分かります。
昨今のグローバルな低金利化を受け、債券ETFは分配金が減っていっているものが一般的ですが、VWOBの場合には、今までのところ、分配金に減少傾向はみられていません。
上記のDistribution by effective maturityを見ると、残存期間にもかなりばらつきがあることが分かります。
残存期間10年以下の債券が62%を占めていますが、20年以上の長期債も27.5%組み込まれています。
マーケット、格付、残存期間とそれぞれ特定のタイプによらず、分散させていることが分かります。
最後に私が保有している他の債券ETFとの相関をPortfolio Visualizerを使って調べてみました(対象期間:2013年7月1日~2019年12月末)。
高利回り債のJNKとは0.67と比較的高めの相関性が見られますが、米国総合債券型のBNDや優先株のPFFとは0.50と0.53とそこそこの分散効果が期待できそうです。
結論:債券ポートフォリオ内での分散効果を期待して組み入れる
私の債券ポートフォリオは、上述のとおり、米国債券(国債・社債・優先株)が100%を占めています。
VWOBは、初の米国外債券ETFとして、ポートフォリオの既存銘柄ともそれなりの分散効果が期待できることもあり、全体の5%程度を目途に組み入れようと思っています。
資産額が増してくると、様々なアセットを組み合わせることが出来るようになり、より高い分散効果(=パフォーマンスの安定)が期待できるようになります。
これからもレイダリオ氏が投資で最も大事だと言っている「Well Diversified Portfolio」を構築しながら、長期投資に勤しむことで投資目標を達成していきたいと思います。
本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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