本日はPortfolio Visualizerというサイトの使い方について、触れてみたいと思います。
Portfolio Visualizerは英語サイトなのですが、米国市場を活用したグローバル投資を行うにあたって、マストといえる存在です。
しかも、事前登録などは一切必要なく、完全無料で即座に使えるうえに、素人では使いきれないほど豊富な機能があります。
この過去最高に使えるサイトといっても過言ではない「Portfolio Visualizer」につき、本日は語ってみたいと思います。
以前、別記事にてバックテストのやり方を解説しましたので、本日はモンテカルロ・シミュレーションを紹介します。
バックテストのダブルチェックにも使えるモンテカルロ・シミュレーション
Portfolio Visualizerでは、主な機能として下記の6項目があり、それぞれの項目にさらに複数の機能が紐づいているという形になっています。
- Backtest Portfolio
- Factor Analysis
- Asset Analytics
- Monte Carlo Simulation
- Portfolio Optimization
- Timing Models
繰り返しになりますが、本日はこのなかで「Monte Carlo Simulation」について見ていきたいと思います。
モンテカルロ・シミュレーションとは、乱数を用いて数千回、数万回の計算を繰り返し、統計的に答えを出す手法のことです。
要はこの機能を使えば、検証対象のポートフォリオが将来生み出すパフォーマンスの幅を統計的な確率とともに確認することが可能です。
これを実際に自分で行おうとすると、とんでもない手間がかかりますが、Portfolio Visualizerではボタンをポチポチするだけで自動で計算してくれます。すごいことです。
それでは実際にPortfolio Visualizerのバックテスト機能を活用するとどのようなことができるのか、見ていきましょう。
Monte Carlo Simulationでは、バックテストと異なり、活用できる過去のデータ量に制約を受けずに結果を得られる
モンテカルロ・シミュレーションを行うには、下記赤丸の「Mote Carlo Simulation」をクリックしましょう。
こちらでは、バックテスト同様、資産クラスベースでも、実在する個別銘柄やETFベースでも、シミュレーションを行うことができます。
下記にて説明しますが、この機能を活用することによって、各アセットクラスや個別銘柄の過去のデータを基に、将来のパフォーマンスを5,000通りシミュレーションしてくれ、その結果のブレ幅を確率とともに見ることができるというわけです。
ここで魅力的な点は、期間が限定的になりがちなバックテストと異なり、過去のデータが多少なりともあれば、モンテカルロ・シミュレーションではどの銘柄を組み入れてもきちんとした結果を得られるところにあります。
もちろん活用できる過去のデータの対象期間が短ければ、統計的なデータの有意性は落ちてしまいますが、それによってシミュレーション結果を得られなくなることはありません。
あまり文字ばかりで説明しても分かりづらいですので、ここからは実際の画面を見ながら解説していきたいと思います。
Monte Carlo Simulationによって、将来のパフォーマンスのブレ幅を予測できる
さきほどのページで「Monte Carlo Simulation」をクリックすると、この画面が出てきます。
それでは入力項目をひとつずつ説明していきたいと思います。
- Portfolio Type…資産クラスベースでシミュレーションするか、具体の個別銘柄(ETF含む)でシミュレーションを行うかを選びます。資産クラスなら「Asset Classes」、個別銘柄なら「Tickers」を選択します。今回はAsset Classesを選択しています。
- Initial Amount…初期投資額の設定です。上記では100万ドルになっています。
- Cashflows…期間中に追加の資金投下を行うか、または定期的な取り崩しを行うか等の投資期間中の元本の取り扱いを下記の選択肢から選びます。上記ではNo contributions or withdrawalsとなっていますので、期中に追加投資や取り崩しは行わない(=初期投資後の資金の出し入れはなし)、という設定になっています。
- Simulation Period in Years…検証する投資期間を年数で設定します。期間は5年刻みで、最短5年から最長75年までを選ぶことができます。上記では30年で設定されています。
- Simulation Model…各アセットや銘柄が将来生み出すであろう想定リターンを設定します。基本的には、過去の実際のパフォーマンスを活用する「Historical Returns」か、過去のパフォーマンスから統計的に期待できるリターンを活用する「Statistical Returns」のどちらかを選べばよいと思います。もし各アセットの期待リターンを自分で設定したい場合には、「Forecasted Returns」を選んでそれぞれ自分で設定することもできます。上記ではHistorical Returnsが選択されています。
- Use Full History…活用できる過去のデータをすべて活用するか、もしくは一定期間のデータを対象とするかを選びます。異常なインフレが発生していた1970年代をデータの対象期間から外すなどの選択ができるということです。上記ではYes(過去データをフル活用する)が選択されています。
- Sequence of Returns Risk…シミュレーション結果における最悪の年がいつ訪れるかを調整できます。シーゲル教授の著書「株式投資の未来」で述べられているとおり、利回りの順序は全体のパフォーマンスに大変大きな影響を及ぼします。保守的にパフォーマンスを見積りたい場合には、「Worst 1 Year First」を選べば、最悪の年を最初にもってくることができます。上記ではNo Adjustmentsなので、特に調整は行っていません。
- Inflation Model…インフレを設定します。過去のインフレ率に基づく、Historical Inflationを選んでおけばいいと思います。上記でもそうなっています。
- Intervals…検証結果として表示するパフォーマンスの基準を選びます。下記ではCustomとしてありますが、記入されている数字はDefaultのものです。Defaultでは、表示する結果として5つ(上位10%, 25% 50%, 75%, 90%)が設定されていますが、これもCustomを選べば、自分で設定することができます(例えば保守的に下記5%の結果を表示するなど)。
- Portfolio Assets…ここで自由に対象となるアセットや銘柄を選ぶわけですが、実はここで既存で設定されているモデルポートフォリオから選ぶこともできます。下記のとおり、かなりの選択肢がありますが、今回はこのなかから本家ダリオ(Ray Dalio)のAll Weatherを選択してみました。
さて、ここまで設定したうえで、モンテカルロ・シミュレーションを実行すると下記のような画面が設定欄の下に表示されます。
本家ダリオの「オール・シーズンズ戦略」で期待されるリスク・リターンの水準がそれぞれ出てきましたね。簡単に結果を見てみましょう。
下位10%では名目の年率リターンが5.12%で、当初の100万ドルは、30年後には447万ドルに増えています。Maximum Drawdown(期中の最大下落幅)は-20.03%です。
過去のデータを基にしたシミュレーションによると、90%の確率でこれ以上の結果が得られるであろう、ということです。
想定される中央値(50th Percentile)では、名目年率リターンが6.76%で、当初の100万ドルは、30年後には710万ドルに増えています。期間が長いので、金額的なブレ幅も大きくなりますね。Max Drawdownは-16.54%とこちらもマイルドな結果になっています。
なお、上位10%(90th Percentile)の水準が達成されるとすると、当初の100万ドルは、30年後には1,112万ドルと、およそ11倍に増加しています。
以上の結果から、30年かけてオール・シーズンズ戦略で運用すれば、80%程度の確率で、資産は約4.5倍から11倍程度増加する、ということが分かります。
これに加えて、期中の想定される下落幅(Max Drawdown)を押さえておけば、事前にどの程度自分の資産が上下するかのイメージを掴むことができるので、運用期間中の精神的な動揺を抑えることができ、感情的になって非合理的な投資行動に走る可能性を下げることができるのではないでしょうか。
資産額の推移については、下記のような見やすいグラフも自動で出力されます。
視覚的に資産額推移のブレ幅を理解できるので、非常によいですね。
やはり期間が長くなるほど、最終的な結果に大きな差が生じてきます。
バックテスト同様、ログをとることも、インフレ調整をかけて実質リターンで見ることもできます。
モンテカルロ・シミュレーションは、バックテストのダブルチェックと、既存ポートフォリオの確認に活用すべし
バックテストはあくまで過去の実際の数字に基づくものなので、それがそのまま将来に当てはまるとは限りません。
そこで同じポートフォリオをモンテカルロ・シミュレーションを活用して確認することで、幅をもって将来の結果を予測することができるため、自分のなかで合理的な期待値を持つことができます。
バックテストでよい結果を出したポートフォリオは基本的にはモンテカルロ・シミュレーションでもよい結果を得られるはずですが、この再確認作業は有益だと思います。
また、ターゲットと合わせて、現在の保有しているポートフォリオをモンテカルロ・シミュレーションを活用してチェックすることも非常に意味があると考えています。
なぜなら、ターゲットポートフォリオに比べて、現状のポートフォリオから得られる結果に大きな乖離がある場合には、なるべく早くターゲットとしている資産配分や銘柄構成に近づけるべきだからです。
また、もしシミュレーション結果がその逆で、あまり差がないようであれば、時間的に余裕をもってポートフォリオの構築を進めることができるからです。
この場合、追加的に組み入れたい銘柄の値動きを見極め、安くなるタイミングまで待つこともできるかもしれません。
いずれにせよ、バックテスト同様、各アセットや銘柄の組み合わせによって、安定的なポートフォリオを作りたい投資家にとって、Portfolio Visualizerは非常に強力なツールです。
Portfolio Visualizerには、まだ役に立つ機能がたくさんありますので、それらも追って紹介していきたいと思います。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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