適正株価の考え方と配当金の重要性について

高配当株

今日は株式投資における適正株価の考え方と、そのなかで配当金が果たす役割の重要性について、考察してみたいと思います。

株式の価値を決めるのは将来のCF

株式の価値については様々な考え方がありますが、理論的には株式価値は将来の期待CFを現在価値に割り引くことで求めることができます。

将来のことは誰にも分りませんので、将来の期待CFについては、各投資家によって当然異なる数字を想定していますし、将来CFを現在価値に割り引くにあって適用する割引率も投資家によって異なってきます。

だからこそ、投資家ごとに同じ銘柄に対して想定する適正価値が異なる結果となり、市場における売買が成立するわけです。

もし市場参加者全員が全く同じ想定に基づいて、ある銘柄を評価するのであれば、期待される株価が同一価格に集約されますので、株価の変動はほとんどなくなってしまいます。

上記の想定に基づく場合でも、投資家側で多少割安に売却してもよいから今すぐキャッシュが必要等の事情が働くことにより多少の売買は成立するものと考えれますが、実際の株式市場のようなダイナミックな値動きが実現されることは期待できません。

将来CFのベースとなるのは配当金

上記に基づき、特定の銘柄について価値を測定しようとすると、将来CFはふたつの要素に集約されます。

  • 将来の株価(売却価格)
  • 保有期間中の配当金

したがって、適正株価は以下の数式で求められます。

  • 適正株価=将来株価の現在価値+保有期間中に受け取る配当金の現在価値

もし現在価値の考え方が分からない方は、この部分は一旦無視していただき、将来において実現されると期待される株価と、将来受け取れるであろう配当金から、理論上は適正株価を求めることができるという点のみ、ご理解いただければと思います。

① 将来の株価(売却価格)

結論から言えば、これは誰にも分かりませんし、もしバイ・アンド・ホールド戦略によって、永遠に株式を売却しないのであれば、この値は実質的には意味を持ちません。

とはいうものの、ファイナンス理論的には、ざっくりといえば、基本的には将来の株価は以下の方法に基づいて計算することができます。

まず、当該企業が将来達成するであろう業績の伸びを予測・計算します。

この予測をベースに将来のEPS(Earnings per share/一株当たり利益)やBPS(Book value per shar/一株当たり純資産)等の収益性や資産性を表す指標を計算し、これらに対して将来適用されるであろう PER(Price earnings ratio/株価収益率)やPBR(Price book value ratio/株価純資産倍率)等の バリュエーション指標を掛け合わせることで、おおよその期待株価のレンジを求めることができます。

しかしながら、これで正確に将来の株価が分かるなら、誰も苦労しません。

まず、そもそもの計算のベースとなる将来の企業業績を正確に予測することほど難しいことはありません。

マーケット環境や個別商品の収益性等、緻密な分析に基づいて苦労した計算した結果がおおよそ正しいものだったとしても、仮に不祥事や不正が発生してしまえば、本業とは異なる要素で業績が押し下げられ、その苦労が水の泡になってしまいます。

さらに、株価の計算は足し算や引き算ではなく、掛け算や割り算(ie. EPS*PER=株価)の世界ですので、上記の困難な予測に基づいて計算した一株益や市場の評価(PER)が少しずれるだけで、期待株価も同時に大きくぶれてしまいます。

だからこそ、株式投資では他の資産クラスと比べ、ダイナミックな値動きが実現され、大きな利益を上げることもできれば、逆に手痛い損失を被ることも起きるわけですが…。

いろいろと書き散らかしてしまいましたが、要は将来の株価を予測し、それに基づいて投資を行うことは不確実性が高すぎるため、これをベースとして投資対象を選定することは困難だということです。

もし、これができるのであれば、そもそもその人はすでに億万長者になっているはずです。

② 保有期間中の配当金

一方、将来CFに占める配当金については、予見可能性の高さでいえば、株価そのものとは比較にならなりほど、予測がしやすいです。

アメリカでは連続増配25年以上の銘柄を指す「配当貴族」という言葉があります。

コカ・コーラやP&Gなどがこれに該当するわけですが、もしあなたが投資対象とする銘柄がこれらの配当貴族である場合、これらの企業たちが今後もたらすであろう配当金は、ざっくりと以下が想定されます。

  • 将来受け取る配当金=(現状の配当金×保有期間中)+α

保守的に期待株価やリターンを計算するのであれば、上記のαをゼロにすればいいだけで、将来CFの構成要素のうちの片方は計算できてしまいます。

つまり、我々投資家は、必要であれば、この数字をベースに株価のボトムを想定し、そこまでのリスクを想定したうえで、安心して株式投資に臨むことができるというわけです。

もちろん配当貴族銘柄が将来にわたって現状と同じかそれ以上の配当金を出し続けてくれる保証はありません。

しかしながら、現実的にはきちんと銘柄選定を行ったうえで、少なくとも20銘柄程度に分散投資を行うことで、将来の配当金が現状を下回るリスクを極めて低く抑えることができると考えられます。

これは仮に将来ポートフォリオのうち1, 2社が減配することになったとしても、残りの企業たちがそれまでの期間増配を続けてくれていれば、結果としてポートフォリオ全体が生み出す配当金が現状を上回る規模を維持できると考えられるからです。

まとめ:配当の重要性

ファイナンス理論的に、配当は適正株価を算定する際の2つの要素(株価と配当)のうちの1つですが、将来の配当は将来の株価に比べ、遥かに予測が容易です。

したがって、ファイナンス理論的には配当金をベースに株価を評価することで、ダウンサイドリスクを想定することができます。

また、上記の金融理論とは別の視点として、実際の株式市場において、安定配当銘柄はリーマンショックのような下落相場において、一般的なマーケットインデックスよりも下落幅が小さくなることが確認されています。

したがって、リスクを限定しつつ、上昇相場や業績好調期にはアップサイドを狙っていくといったスタイルの投資を志向する投資家にとっては、安定的に配当金を出している銘柄が有力な投資先の候補となってきます。

当ブログでは、 これらの配当金の重要性に着目した高配当株投資を主な投資戦略のひとつとして、実行していきます。

この高配当株投資の詳細については、別の機会にまとめたいと思います。

本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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