【金鉱株】ニューモント(NEM)は世界最大の金鉱会社

オール・シーズンズ戦略

本日は金の代替として検討に値する金鉱株として、世界最大の金鉱会社ニューモント(Ticker: NEM)を記事にまとめてみました。

※2021年2月18日に2020年第4四半期の決算が発表されましたので、その内容を反映しました。

※業界二位のGOLD(バリックゴールド)の記事も別途まとめていますので、興味がある方はこちらもご覧ください。

NEMは金鉱株で唯一S&P 500に採用されている世界最大手

NEMは1916年にColonel William Boyce Thompsonが創業したNewmont Companyを起源とする長い歴史を持つ会社です。

Newmontという社名の由来は、創業者であるThompsonさんが「Montanaで育ち、New Yorkで財を成した」ことからNew YorkとMontanaを掛け合わせて作ったことによります。

NY証券取引所には1940年から上場していますので、現存する企業のなかで上場年数では上の方に入るかと思います。

元々、業界のなかでも大手として事業を展開していましたが、2019年に当時世界5位だったカナダのGoldcorpを100億ドル(約1.1兆円)で買収したことで、それまで首位の座を占めていたBarrick Gold(Ticker: GOLD)を抜いて、業界最大手となりました。

また、金鉱銘柄としては、唯一S&P 500に採用されており、米国の金鉱株のなかでは頭一つ抜けた存在と言えます。

2019年7月時点ですので、少し古い情報ですが、上表のとおり、時価総額においては、NEMとGOLDが金鉱株のなかでは群を抜いていることが分かります。

NEMは2025年まで徐々に産金量を増やしていくことを計画しており、最終的には年間6.5~7.0百万オンスを生産する計画となっています。

一方、競合のGOLDは今後5年間の生産量を全くの横ばいで想定していますので、この点ではNEMに競争優位性がありそうな感じですね。

なお、NEMの産金量は世界一位です。

鉱山会社における損益分岐点といえるAISC(All-in Sustaining Cost)は、2020年の実績は1オンス966ドルでしたが、2024年までに800~900ドルまで落とす計画になっています。

現状の金価格が1オンス1850ドル前後で推移していますので、この状況が続けば利幅は十分に確保できます。

ちなみに2030年までの長期での生産量の見立ては以下のとおりになっています。

現状では2026年以降、若干生産量が逓減傾向に入ることが予測されています。

今後数年間、金価格が高値で推移すれば、潤沢なキャッシュが得られるはずですので、その資金をうまく事業投資に充てることができるかが、中長期で現在の地位を保ち続けられるかの分かれ目になりそうですね。

上記のスライドのとおり、NEMの保有する鉱山はアメリカ大陸に集中しています。

群を抜いて規模が大きいNevadaのJV事業(世界最大の生産量を誇る金鉱でNEMの持ち分は38.5%)を含め、アメリカ大陸とオーストラリアでポートフォリオ全体の埋蔵量の90%以上を占めています。

NEMの業績推移(売上・利益)

それではNEMの財務情報を見ていきましょう。

まずは業績推移です。ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成しています。

2013年に金価格は1981年以降で最大となる28%もの下落を記録しました。

したがって、この年NEMは大赤字の決算となっていますし、GOLDも同年に多額の減損処理を余儀なくされ、最悪の決算を出しています。

その後も低空飛行が続いていましたが、2019年のGoldcorp買収とその後の金価格上昇を受け、現在では潮目が完全に変わっています。

上記のとおり、直近の2020年の結果をみると、前年から著しく上向いてきていることが分かります。

主な項目を下にまとめておきます。

通年比
(2019年 vs 2020年)
売上高+18%
調整後利益+121%
営業CF+70%
フリーCF+173%
配当+250%

売上高の伸びに対して利益やCFの伸びが著しく、金鉱株投資に際して期待されるレバレッジ効果がこの上昇局面で存分に発揮されていることが分かります。

今後5年間の計画を見ても、コストを維持しつつ、産金量が増加することが予想されることから、計画が順調に進み、かつ金価格が高止まりすればですが、今後の更なる成長も期待できるのではないかと思います。

NEMのEPS(1株当たり利益)と配当の推移

 次にNEMのEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。

安定感にはかけますが、毎年配当は出し続けており、後述のとおり、今後も継続的かつ安定的に配当を出していく方針が示されています。

2015~2019年は決算利益(EPS)にはだいぶムラがあるものの、1株当たりフリーCFが常に配当を遥かに上回っており、この点では余裕が感じられます。

2020年は業績が大きく上向いたため、フリーCFはより一層の余裕が感じられる水準まで到達しています。

EPSの観点からも、やはり2019年と2020年の業績の急伸っぷりが目を引きますね。

上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向の推移を示しています。

配当については現在は1%台後半ですが、今後の金価格と株価次第では2%を超えてくる可能性もあると考えています。

ただ、個人的には自社株買いと合わせて、今後しばらく2~3%台の株主還元を継続してくれれば十分とは思っています。

今後の配当については、直近の決算資料のなかで上記の方針が示されています。

  • 1ドル/株をベース配当として維持する
  • 金価格1,200ドル/オンスを超えた部分から生じたCFの40~60%を追加配当として還元
  • 上記のフレームワークを通じて配当の安定性と予見可能性を高める

具体的な金価格に対する予想配当額も明示されています。

金価格配当額
1,500ドル/オンス$1.60-1.90/株
1,800ドル/オンス$2.20-2.80/株
2,100ドル/オンス$2.80-3.70/株

直近の2020年第4四半期の配当を年換算すると2.20ドルになります。

直近の金価格は1,800ドル/オンス前後で推移していますので、このままいけば2021年は2.20ドル前後の配当が期待できそうです。

NEMのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)

 次はNEMのキャッシュフローです。

ブレ幅が大きいですが、2015年以降は安心できる水準で推移しています。

なお、2020年第3四半期のフリーCFは過去最高の13億ドル(約1,300億円)となっており、2019年に1年かけて稼いだCFとほぼ同額をたった3カ月で稼いでいます。

2020年通年で見ても、2019年からフリーCFが著しく改善されており、業績は絶好調と言って差し支えないかと思います。

ちなみに金価格がフリーCFに与える影響は上記のとおり、金価格が100ドル/オンス上昇するごとに、5年間の累計CFが$400m(約400億円)ほど増えると試算されています。

NEMの株価チャート

1972年6月2日から2021年1月22日までのNEMの株価チャートです。

1987年頃から現在に至るまで概ね15~60ドルのレンジで動いていましたが、目先では上場来高値を試す展開となっています。

業界2位のGOLDはいまだに上場来高値から半値くらいのところにいて、あまり調子がよくないのですが、NEMの方は突き抜けてくれそうな雰囲気を出してくれているので、どこまで価格が上昇するか、楽しみにしています。

結論:NEMは単体で見れば平凡な銘柄だが、金の代替としての魅力はある

NEMを単体で評価した場合には、世の中にはもっといい銘柄がたくさんあると思いますので、特段購入すべき理由は思い当たりませんが、個人的には業界2位のGOLDと比べた場合、NEMの方が保有したいと思える要素が多いです。

レイダリオ氏が推奨するオール・シーズンズ戦略を実践するにあたり、金のエクスポージャーを確保したいわけですので、1%台ではあるものの、安定的に配当を出してくれるNEMのような金鉱株を金の代替としてポートフォリオに組み入れる価値はあると思っています。

元々はNEMとGOLDを合わせて全体の2.5%程度保有していましたが、直近の決算やガイダンスを見るなかでGOLDは売却し、その分の資金をNEMに集約することにしました。

今後もポートフォリオレベルで見た時の分散効果を期待し、NEMは金ETFのGLDMと合わせて、全体の7.5%程度の配分を維持したいと考えています。

以上、金鉱株・最大手のNEMについての考察でした。

本日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。

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