ゼネラル・ダイナミクス(Ticker: GD/General Dynamics Corporation)は米国を代表する軍需企業のひとつです。
ゼネラル・ダイナミクスは米国の軍事用重機メーカー。中・大型軍用機や商用ジェット機の設計、開発、製造に従事。装甲車、戦車、重機関銃、迫撃砲の兵器のほか、潜水艦、水上艦、商船を扱う。また、戦術通信システム、無線・衛星通信システム、諜報・監視システム、システム統合なども提供。本社はバージニア州。
Yahoo!ファイナンス (https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/detail/GD)
ジェット機のGulfstream(ガルフストリーム)を製造・販売している会社と言えばピンとくる方もいるのではないでしょうか。
GDは軍事大国・アメリカのなかでもトップランクに位置する軍需企業で上述のジェット機のほか、戦車や原子力潜水艦なども取り扱っています。
GDは1952年創業の米国を代表する軍需企業
GDは1952年創業の米国を代表する軍需企業です。
創業から1990年代初頭までは戦車、ロケット、ミサイル、潜水艦、戦艦、戦闘機など、防衛産業全般を対象に手広く事業を行っていました。
ところが冷戦終結後、軍事費の大幅な削減が進んだこともあり、世界的な軍需産業の大幅な再編が進むことになります。
こういった流れのなか、GDも90年代前半には戦車と潜水艦以外の事業を全て売却し、再編を余儀なくされますが、90年代半ばからは再び事業拡大に乗り出し、1999年には上述のガルフストリーム・エアロスペース社を傘下に収めています。
同時期にはそれ以外にも戦車関連のシステムやIT関連などに手を広げ、現在の事業基盤が作られています。
GDのウェブサイトでは同社の事業として、下記5部門が紹介されています。
- Aerospace(航空機関連)
- Combat Systems(戦車や関連システム)
- Marine Systems(潜水艦や関連システム)
- Information Technology(IT・サイバーセキュリティ関連)
- Mission Systems(軍事システム等)
直近3年(2017~2019年)の売上高等は以下のとおりです。
- 売上高(2019年):393.5億ドル(約4.1兆円)
- 営業益(2019年): 46.5億ドル(約0.5兆円)
- 受注残(2019年):869.5億ドル(約9.1兆円)
上場している軍事関連企業では売上高で4~6位くらいにランクインする規模感です。
受注残高が9兆円も残っており、しばらくは売上高の落ち込みは心配する必要がないことが分かります。
GDの業績推移(売上・利益)
ここからはGDの経営状況について、簡単に見てみたいと思います。
まずは近年の業績推移です。※ここからのグラフはMorningstarの情報を基に作成
2019年の売上高は395億ドル(約4.1兆円)、営業利益・純利益はそれぞれ46.5億ドル・34.8億ドル(約4,800億円・約3,600億円)となっています。
直近の3年ほどで大きく売上高が伸びており、受注残から見ても今後もしばらくはこの傾向が続くものと思われます。
ここからは直近の20年第3四半期の決算と今後の業績予測について簡単に触れたいと思います。
ポイントを簡単にまとめると以下のような感じでしょうか。
- 第2四半期から売上高は2%増
- 第2四半期から営業利益は18%増
- フリーCFは903百万ドル(約950億円)で純利益108%
- ガルフストリーム・IT・軍事システムの受注が増加
- 継続的な業績改善を達成
2020年の業績(通年)については下記のとおり、見通しが発表されています。
EPSの予測値は11.00~11.10ドルと発表されています。
現在の株価が130ドル前後ですので、予測PERは11.8前後となります。
GDのEPS(1株当たり利益)と配当の推移
次にEPS(1株当たり利益)と配当の推移を見てみましょう。
2012年に赤字を出して以来、順調にEPSが成長しているように見えます。
また、すべての年でフリーCF(濃緑)が1株配当(水色)を上回っており、配当に安定感も感じられます。
上表は配当と自社株買いを合わせた総還元性向(Total Yield %)の推移を示しています。
毎年かなりの規模の自社株買いを行っており、2014年以降の総還元性向は4.3~8.9%となっており、年度によってはかなりの高水準になっていることが分かります。
過去10年間(2010~2019年)の配当実績は以下のとおりです。
平均配当性向:34.5%
年平均増配率:10.4%
累計増配率:2.43倍(2010年: 1.64ドル/株→2019年: 3.99ドル/株)
配当性向は34.5%ということからも、まだまだ増配余力を残していることが分かります。
GDのキャッシュフロー(営業CF・資本的支出・フリーCF)
売上高に占めるフリーCFの比率(%)が右軸にありますが、年度ごとのばらつきがだいぶ大きいですね。
過去の傾向からはざっくり年間20~30億ドル(約2,100~3,150億円)前後のフリーCFは稼ぐ地力はあると言えるのではないでしょうか。
GDの株価チャート
2005年1月1日から2020年10月30日までの株価チャートです。
2014年にそれまでの最高値である94ドル台を突破して以降、株価は大幅に上昇し、2018年に最高値の230ドルをつけました。
2020年10月30日現在は131.33ドルと最高値からは40%以上下落しています。
仮にバイデンが大統領の座についた場合、軍事費が大きく削減されるという話はありますが、基本的に目先の受注残をこなすだけで今後数年は安定した業績が見込めるはずですので、個人的には今の水準でも十分に魅力的だと感じています。
所感:時の政権による部分はあるものの魅力を感じる銘柄
受注残高が直近の売上で言うと、2年分以上積み上がっており、今後もしばらくは業績が低迷することはないはずです。
軍需産業は米国では半分くらいは公共事業的な感じだと思いますので、どうしても時の政権の意向(軍備増強か軍事費圧縮か)を受けてしまいますが、それでも近年の株主還元の水準を考えると私には魅力的な銘柄に見えます。
このところの株価低迷によって、配当利回りも3%台半ばを伺う水準まで高まってきており、今後の増配や自社株買いを考えると、中長期的にも結構いいリターンが期待できるのではないかと思っています。
私は軍事関連には疎いですが、ESG投資の観点からタバコや軍需産業は機関投資家の資金が流入しづらいこともあり、株価が割安に放置されやすい側面もあります。
ですので、最後は自分の判断でリスクを取り、どこかの段階で業界最大手のLMT(ロッキードマーティン)とともにポートフォリオに組み入れたいと思います。
本日は以上です。最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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